[ファンダメンタル視点]
先週の米国市場では、米中貿易の対立と地銀信用不安が警戒されて下落する場面もあったものの、トランプ大統領の発言内容や底堅い米地銀の決算を受け、警戒感がひとまず後退して、株価指数は週間では上昇しました。
週間変動率 NYダウ:+1.56%,
NASDAQ:+2.14%, S&P500:+1.70%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、米政権の関税政策、金利上昇による金融不安と世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、2026年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.76ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが23.3に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの18.3との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
日米市場が均衡するためには、次の条件が必要です。
現在の日経平均の価格に対して、2026年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.76ポイント拡大する。(日本が下方修正又は米国が上方修正される)。又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが27.0程度になる。又は、日経平均が70,230円程度となる。
結果的に、中長期的に日本市場は22,650円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、22,650円ほど魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは、拡大しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2025年GDP予測値(現在+3.3%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、NYダウが25日線の上に戻れるか否かに注目。
② 決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は+8.9%となりました。3ヶ月前に比べて-0.2%ポイント悪化しています。利益伸び率は-6.9%となりました。3ヶ月前に比べて-3.6%ポイント悪化しています。
③ 米国の長期金利は低下したものの、日米間の金利差は2. 36から2. 39と拡大し、ドル円は152円台から149円台の範囲で円高方向に動きました。ドル・インデックスは週間で-0.32%下落しました。
④ OECDの日米の2026年の名目GDP伸び率は、日本が+2.5%で、米国は+4.3%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.8ポイント劣ります。
⑤ 10月第2週は買い越しで、10月第3週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、⑤が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に5.5ポイント(日経平均に勘算すると2620円程度)割高です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に13.9ポイント(日経平均に勘算すると6610円程度)割高です。
日本市場はNYダウとNASDAQより強い状態です。米国市場のボラティリティーを示す指標である VIX は、週間で
20.8と低下しました。 日経 VI は 週間で 35.5と上昇しました。米国市場は”疑心暗鬼”状態で日本市場は”高所恐怖”状態です。
日経平均は、9日線の下にあり、25日線の上にあります。短期トレンドには"黄信号”が点灯しています。
日経平均は一目均衡表の雲の上にあります。総合乖離率は+34.2%となり、200日移動平均線乖離率は+20.1%となりました。3つの要因がプラスですので、中期トレンドには"青信号“が点灯しています。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、200日線と25日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。
米国市場は、短期的には"黄信号”で、中期的には"青信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると目先、景気後退懸念は残っています。また、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇、EU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東の地政学的リスク拡大などもリスク要因として存在します。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期はもみあいです。
日本市場は中期上昇トレンドで、短期はもみあいです。
為替市場を分析すると、2025年4月につけた139円をボトムに円安方向に転換しています。今週は149円台から152円台が想定されます。
今週の米国市場では、投資家は米中貿易摩擦の動向を引き続き注視するでしょう。米国企業の決算シーズンも本格化し、テスラ、P&G、GE、コカ・コーラ、ネットフリックス、IBM、AT&T、ベライゾン、インテルなどの主要企業が業績を発表予定です。米連邦政府の閉鎖は4週目に突入する見通しだが、トレーダーは消費者物価指数(CPI)、S&PグローバルPMI、住宅販売件数にも注目するでしょう。世界的には、中国の第3四半期GDP、小売売上高、鉱工業生産、ユーロ圏、ドイツ、英国のPMI、日本のPMI、貿易統計、物価統計などが発表されます。
先週の日経平均は想定範囲を大きく上振れしました。上値は950円上回り、下値は4040円上回りました。
今週の日経平均の想定範囲は、上値がボリンジャーバンド+2σ(現在48930円近辺)で、下値が25日線(現在46050円近辺)の間での動きが想定されます。
今週の日経平均は、国内の材料よりも、米中貿易摩擦や米政府閉鎖、地銀信用不安など米国市場の動きに影響される展開が予想されます。不透明感が無くなるまでは上昇の勢いは削がれそうです。
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