日経平均の予想: October 2020

Saturday, October 31, 2020

[2020/11/1]今週の日経平均の見通し

 [ファンダメンタルの現状認識]

先週の米国市場は、欧米で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、行動制限の強化による景気後退懸念から、株価指数は下落しました。一方、中長期的には、新型肺炎拡大長期化による景気後退、ハイ・イールド債のディフォルトなどによる銀行の信用力不足と信用収縮懸念があります。また世界的な自国中心の政治状況から中国などの景気減速、貿易戦争などによる世界経済の減速懸念もあります。さらに、中東、朝鮮半島やウクライナの地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。

日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2021年のOECDの実質GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.08ポイント割高となっています。割高の要因はS&P500PER25.1に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PER22.4との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。

これは、現在の日経平均の価格に対して、2021年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.08ポイント縮小するか(日本が上方修正又は米国が下方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PER18.0程度になるか、又は、日経平均が18500円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は4480円ほど割高です。

 [日経平均上昇の条件]

今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。

①米国市場の上昇、

②従来以上の今期の予想増益率のUP

③日米の金利差の拡大と一段の円安、

OECDによる日本の2021GDP予測値(現在-0.5%)の上方修正、

⑤外人の買い越し、

 最近の動きを見ると、

   先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。NYDowが一目均衡表の雲の上の戻れるか否かに注目したいと思います。

   四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は4.8%となりました。3ヶ月前に比べて1.0ポイント悪化しています。また、利益伸び率は-22.0%3ヶ月前に比べて16.4ポイント悪化しています。

   米国の長期金利は上昇し、日米の金利差は 0.81%から0.84%と拡大したものの、為替は105円台から104円台で小動きでした

   OECDの日米の2021年の実質GDP伸び率予測が発表されて、日本が-.0.5%で、米国は+1.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が2.4ポイント劣ります。

   103週は売り越しで、104週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。

 [テクニカル視点]

日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に6.4ポイント(日経平均に勘算すると1470円程度)割安となっています。先週と比べ割安幅は縮小しました。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に3.2ポイント(日経平均に勘算すると740円程度)割高となっています。

 日経平均は、一目均衡表の雲の中に在ります。総合乖離率は+1.9%となり先週と比較してプラス幅が縮小しました。200日移動平均線乖離率は+4.5でプラス幅が縮小しました。2つの要素がプラスですので、中期トレンドは、"黄信号"が点灯しています。

日経平均は、25日線と9日線の下にありますので、短期トレンドは、"赤信号"が点灯しています。

 米国市場ではNY Dowは、200日線の上にありますが、25日線と9日線の下にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。Nasdaqも、200日線の上にありますが、25日線と9日線の下にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。

短期的には赤信号"で、中期的には黄信号"が点灯しています。

 [今週の見通し]

米国市場をファンダメンタル面で見ると米国の利上げ、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、新型コロナウィルスによる肺炎の感染拡大、米国政治の不透明感世界的な長期金利低下傾向、原油相場の低迷、米企業業績の悪化、ハイ・イールド債市場の下落、信用収縮に伴う金融市場混乱、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、貿易戦争に伴う世界経済減速懸念、中東やウクライナの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。

また、直近のLIBOR金利は低下しつつありますが、3月は、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。

 一方、好材料としては米国のゼロ金利政策とジャンク債購入を含むFRBによる企業への直接的金融支援や3兆ドルの経済対策、トランプ大統領の政策期待。日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と無制限の国債・12兆円のETF購入などの金融緩和措置に加え、日本政府によるリーマンショック時を超える経済対策やEUによる92兆円のコロナ復興基金設立とECBによるマイナス金利の深堀と量的緩和の拡大表明などが揚げられます。

 テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期は下降トレンドです。日本市場は中期もみあいで、短期は下降トレンドです

 為替市場を分析すると、ここ半年は、ゆるやかに円高方向に動いています。今週は105円台から103円台が想定されます。こからは、テクニカル指標、米国市場動向、為替の動き、外国人投資家動向を注目する必要があります。

 今週は米国大統領選挙が中心となり、ジョー・バイデン氏が世論調査をリードし、コロナウイルス危機の中で事前投票が記録的なレベルに達しています。そのほか、米国、英国、オーストラリア、マレーシアの中央銀行が金融政策を決定する一方で、第3四半期の決算シーズンが続いています。主要な経済データには、米国の雇用統計、ISM製造業指数、貿易収支、ユーロ圏小売売上高、ドイツの鉱工業生産高と製造業受注、中国のPMIと貿易収支などがあります。

 先週の日経平均は、想定レンジを下回りました。上値は想定ラインを220円ほど下回り、下値は想定ラインを500円ほど下回りました。今週の日経平均の想定範囲は、上値が25日線(現在23450円近辺)で、下値がボリンジャーバンド- 3σ(現在22900円近辺)の間での動きが想定されます。


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Friday, October 30, 2020

[2020/10/30]今後の日経平均の見通し

[市況]

1029日、NYDowNASDAQは上昇しました。1030日の日経平均先物は、前日比90円安で寄り付くと、午前中は20円安から220円安と下げ幅を拡げ、午後は120円安から440円安と下げ幅を拡げて、結局440円安で取引を終えました。日経平均の終値は354円安の22977円で、出来高は13.14億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。


1029日の米国市場では、買いが優勢となりました。79月期の実質GDP速報値が前期比年率33.1%増と市場予想の32.0%増を上回ったことや、週間の新規失業保険申請件数が前週から減少し、市場予想を下回ったことなどが好感されました。アップルなど主力ハイテク株の一角が業績期待から買われたことも支えとなりました。NYDowNASDAQは反発しました。

1030日の日本市場では、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない欧州で行動制限の動きが広がっていることから、世界景気の先行きへの懸念が高まり、リスク回避の動きが優勢となりました。米大統領選の投票日を間近に控えて利益確定の売りが出たことや、米株価指数先物が軟調に推移したことも重石となりました。日経平均は5日続落し、節目の23000円を終値で下回りました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。

総合乖離率は+1.9%と前日よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+4.5%と前日よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の中に入りました。3つの要素のうちプラスは2つとなり、中期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。

また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にありますが、9日線の下にあり、25日線を下回りました。

 

NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上に出ました。米国市場の短期トレンドは赤信号が点灯しています。中期トレンドには黄信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より3.3ポイント拡大して-9.2となり、中長期的には日経平均がNASDAQより2110円ほど割安であることを示しています。一方、日経平均とNYDowとの比較は、日本市場が2.6ポイント(日経平均換算で600円)割高であることを示しています

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドの日米差(1.3ポイント)とOECD2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-2.4ポイント)を勘案すると、中長期的には日本市場は米国市場より1.07ポイント(日経平均換算で4440円)割高となっています。

 

市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の79月期のGDP速報値は前期比年率33.1%減で、市場予想の32.0%減を上回りました。また、79月期の米企業の決算は、大方の予想に反して堅調な内容です。

 

経済指標を見てみます。

9月の耐久財受注、9月の小売売上高、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、9月のISM非製造業景況指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月の鉱工業生産指数、10月のニューヨーク連銀製造業景況指数、8月の製造業受注、9月のISM製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は65負で、景気面ではやや強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面ではやや弱気材料です。

 

米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比661000人増で、市場予想の85万人増を下回りました。一方、失業率は7.9%で、先月の8.4%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しやすいという面では強気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

9月の中古住宅販売件数、9月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、9月の中古住宅販売仮契約指数、9月の新築住宅販売件数、9月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+5.2%で、市場予想の+4.2%を上回りました。住宅関連の指標は33負で、景気・金融緩和の両面で中立材料です。

 

先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「20216月までに13500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。

 

金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ5か月は低下しています。直近では、1026 0.2222 1027 0.2132 1028 0.2143と落ち着いており、金融不安の気配は見られません。これは、FRBがジャンク債買い取りを含む大規模な金融緩和を継続していることや、大規模な財政出動の効果と思われます。なお、20181220日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER22.4PBR1.07となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE4.8%となり、これは3か月前より1.0ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-22.2%で、こちらは3か月前より16.4ポイント悪化しています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+3.4%となり、日経平均の割高幅は1300円から780円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-80円から+1300円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は0.77ポイントから0.78ポイントに拡大しましたが、ドル円相場は円高方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均も、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格下落のニュースが散見されており、引き続き国有企業や地方政府の不良債権問題に注意が必要です。

米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドルで円高が進みやすい状況です。

欧州経済は悪化しています。ECBはマイナス金利政策を継続しており、また、新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、量的緩和を拡大しました。また、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。

 

1030日の米国市場では、ユーロ圏の79月期GDP9月の個人消費支出のほか、シェブロンやエクソン・モービルなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルスや米大統領選、米中対立などに関する報道も株式相場に影響を与えそうです。

 

30日の日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを230円ほど下回り、下値は想定ラインを140円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ(現在23270円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-3σ(現在22900円近辺)が下値の目安になりそうです。



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Thursday, October 29, 2020

[2020/10/29]今後の日経平均の見通し

[市況]

1028日、NYDowNASDAQは大幅下落しました。1029日の日経平均先物は、前日比320円安で寄り付くと、午前中は330円安から160円安と下げ幅を縮め、午後は200円安から60円安と下げ幅を縮めて、結局100円安で取引を終えました。日経平均の終値は86円安の23331円で、出来高は10.12億株と比較的低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。


1028日の米国市場では、欧州で新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、フランスやドイツで行動制限が再び強化されたことや、米国で過去1週間の新規感染者数が過去最多となったことなどを受け、景気の先行きに対する懸念が高まり、売りが優勢となりました。景気敏感株だけでなく、ハイテク株やディフェンシブ株にも売りが広がりました。NYDow4日続落し、NASDAQは反落しました。

1029日の日本市場では、欧米の株式市場の大幅な下落を受けて投資家のリスク回避姿勢が強まりました。ただ、国内の感染動向が比較的小さいこともあり、売り急ぐ動きは限定的でした。日銀によるETF買い観測や、米株価指数先物が堅調に推移したこと、上海総合指数が上昇したことなども支えとなりました。日経平均は4日続落しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。

総合乖離率は+6.5%と前日よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+6.1%と前日よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。

また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の上にありますが、9日線を下回りました。

 

NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下に抜けました。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線の下にあり、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の下に抜けました。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドには黄信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より4.1ポイント縮小して-5.9となり、中長期的には日経平均がNASDAQより1380円ほど割安であることを示しています。一方、日経平均とNYDowとの比較は、日本市場が4.8ポイント(日経平均換算で1120円)割高であることを示しています

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドの日米差(1.3ポイント)とOECD2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-2.4ポイント)を勘案すると、中長期的には日本市場は米国市場より1.18ポイント(日経平均換算で4960円)割高となっています。

 

市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の46月期のGDP確定値は前期比年率31.4%減で、改定値の31.7%減から上方修正されました。また、46月期の米企業の決算は、景気に敏感とされる企業の落ち込みは激しいものの、ハイテク株が好調で、全体としては市場の想定ほど悪化していません。

 

経済指標を見てみます。

9月の耐久財受注、9月の小売売上高、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、9月のISM非製造業景況指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月の鉱工業生産指数、10月のニューヨーク連銀製造業景況指数、8月の製造業受注、9月のISM製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は65負で、景気面ではやや強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面ではやや弱気材料です。

 

米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比661000人増で、市場予想の85万人増を下回りました。一方、失業率は7.9%で、先月の8.4%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しやすいという面では強気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

9月の中古住宅販売件数、8月の中古住宅販売仮契約指数、9月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、9月の新築住宅販売件数、9月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+5.2%で、市場予想の+4.2%を上回りました。住宅関連の指標は42負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。

 

先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「20216月までに13500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。

 

金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ5か月は低下しています。直近では、10230.2165 1026 0.2222 1027 0.2132と落ち着いており、金融不安の気配は見られません。これは、FRBがジャンク債買い取りを含む大規模な金融緩和を継続していることや、大規模な財政出動の効果と思われます。なお、20181220日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER22.8PBR1.09となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE4.8%となり、これは3か月前より1.0ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-22.7%で、こちらは3か月前より17.4ポイント悪化しています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+5.6%となり、日経平均の割高幅は670円から1300円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-80円から+1300円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は0.75ポイントから0.77ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的には上昇トレンドです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格下落のニュースが散見されており、引き続き国有企業や地方政府の不良債権問題に注意が必要です。

米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドルで円高が進みやすい状況です。

欧州経済は悪化しています。ECBはマイナス金利政策を継続しており、また、新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、量的緩和を拡大しました。また、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。

 

1029日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数、ECB定例理事会およびラガルド総裁の会見、79月期のGDP速報値、9月の中古住宅販売仮契約指数のほか、アップル、フェイスブック、アルファベット、アマゾン、ツイッター、デボン・エナジー、イルミナなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルスや米大統領選、米中対立などに関する報道も株式相場に影響を与えそうです。

 

29日の日経平均は、想定範囲をやや下ぶれしました。上値は想定ラインを250円ほど下回り、下値は想定ラインを10円ほど下回りました。目先は、25日線+100円(現在23550円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ(現在23110円近辺)が下値の目安になりそうです。



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