日経平均の予想: August 2023

Thursday, August 31, 2023

[2023/08/31]今後の日経平均の見通し

[市況]

830日、NYDowNASDAQは上昇しました。831日の日経平均先物は、前日比80円高で寄り付くと、午前中は70円高から290円高と上昇幅を拡げ、午後は190円高から420円高と上昇幅を拡げて、結局、330円高で取引を終了しました。日経平均の終値は285円高の32619円で、出来高は16.64億株と高水準でした。

高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態ですが、買われ過ぎの水準です。

空売り比率は5日平均を4日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、やや弱い状態です。

 

830日の米国市場では、8月のADP全米雇用リポートで非農業部門の雇用者数が市場予想を下回ったことから、労働市場の過熱感は緩和されつつあるとの見方が強まり、長期金利の低下も手伝って、ハイテク株を中心に買いが優勢となりました。ただ、買い一巡後は、持ち高調整の売りや利益確定の売りが相場を押し下げました。NYDowNASDAQ4日続伸しました。

831日の日本市場では、米長期金利の低下を背景に、前日の米株式市場で主要3指数がそろって上昇した流れが引き継がれ、グロース(成長)株を中心とした幅広い銘柄に買いが向かいました。中国の8月のPMIが市場予想を上回ったことも投資家心理を上向かせました。日経平均は4日続伸しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。

総合乖離率は+13.1%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+11.0%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上に出ました。3つの要素すべてがプラスとなり、中期トレンドも黄信号から青信号に変りました。

ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線と200日線の上にあり、25日線を上回りました。

 

NYDowは、9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-2.9ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が950円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+7.7ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均が2510円ほど割高であることを示しています

 

日経VI16.92と低下し、VIX13.88と低下しました。両指数ともに、不安心理の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態であり、前日比で強さは拡大しました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-5.9、米国0.9と日本が5.0ポイント割安ですが、OECD2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.0、米国が+3.4)0.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.54ポイント(日経平均換算で75150円)割安となっています。

 

市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の46月期のGDP値は前期比年率2.1%増で、速報値の2.4%増を下回りました。また、46月期の米企業の決算は、おおむね好調です。

 

経済指標を見てみます。

8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の鉱工業生産指数、7月の小売売上高、6月の製造業受注は市場予想を上回りました。一方、8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、8月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月の耐久財受注、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数、7月の消費者物価指数、7月のISM非製造業景況指数、7月のISM製造業景況指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は48負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です

 

米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比18.7万人増で、市場予想の20.0万人増を下回りました。一方、失業率は3.5%で、前月の3.6%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

7月の中古住宅販売仮契約指数、7月の新築住宅販売件数数、7月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、7月の中古住宅販売件数、8月の住宅市場指数は予想を下回りました。6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比-1.2%で、市場予想を上回る大幅低下となりました。住宅関連の指標は33負で、景気・金利の両面で中立です

 

新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRB2023年内にまだ利上げをする可能性があると市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、長期金利の許容変動幅は、0.5%に据え置きつつも、1%までは柔軟に対応するという政策に変更されました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、824 5.6495% 825 5.6655% 829 5.6640%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、202199日の0.1141%が直近の最低金利で、2023825日に記録した5.6655%が、ここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER15.34PBR1.31となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE8.5%となり、これは3か月前より0.4ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+2.6%で、こちらは3か月前より0.8ポイント改善されています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.3%となり、日経平均は320円の割安から80円の割高に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-340円から+80円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、3.51ポイントから3.47ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています

 

831日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、7月の個人所得・個人消費支出・PCE価格指数、8月のシカゴ購買部協会景気指数のほか、ダラー・ゼネラルやブロードコムなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを50円ほど上回り、下値は想定ラインを480円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+200円(現在32940円近辺)が上値の目安に、25日線(現在32260円近辺)が下値の目安になりそうです。

 

日経VIは低下し、不安心理は緩和されつつあります。また、信用の売り圧力は、やや弱い状態です。日経平均は4日続伸しました。33000円近辺の上値抵抗線を越えられるかどうかが、次の注目点です。



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Wednesday, August 30, 2023

[2023/08/30]今後の日経平均の見通し

[市況]

829日、NYDowNASDAQは上昇しました。830日の日経平均先物は、前日比210円高で寄り付くと、午前中は130円高から360円高と上昇幅を拡げ、午後は320円高から70円高と上昇幅を縮めて、結局、70円高で取引を終了しました。日経平均の終値は106円高の32333円で、出来高は13.50億株と高水準でした。

高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態ですが、買われ過ぎの水準です。

空売り比率は5日平均を3日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。

 

829日の米国市場では、ハイテク株を中心とした幅広い銘柄に買いが向かいました。8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数や7月のJOLTS求人件数が市場予想を下回ったことから、インフレや労働需給の引き締まりは和らぎつつあるとの見方が強まり、FRBによる追加利上げ観測が後退しました。長期金利の低下も追い風となりました。NYDowNASDAQ3日続伸しました。

830日の日本市場では、前日の米株式市場で主要な株価指数がそろって上昇した流れを受け、機械や電気機器など幅広い銘柄に買いが入りました。上海や香港の株式市場が上昇したことも投資家心理を上向かせました。ただ、午後に入ると、8月のADP全米雇用リポートの発表を前に投資家の慎重姿勢が強まり、利益確定の売りや戻り待ちの売りが出て相場の上値を抑えました。日経平均は3日続伸しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線の上にあり、25日線を上回りました。短期トレンドは黄信号から青信号に変りました。

総合乖離率は+10.6%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+10.1%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中にあります。3つの要素のうちプラスは2つであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。

ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線の下にありますが、9日線と200日線の上にあります。

 

NYDowは、25日線の下にありますが、9日線と200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上に出ました。NASDAQは、9日線と200日線の上にあり、25日線を上回りました。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-3.3ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が1070円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+6.9ポイントとプラス幅を縮め、日経平均が2230円ほど割高であることを示しています

 

日経VI17.72と低下し、VIX14.45と低下しました。両指数ともに、不安心理の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態ですが、前日比で強さは縮小しました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-5.9、米国0.9と日本が5.0ポイント割安ですが、OECD2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.0、米国が+3.4)0.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.65ポイント(日経平均換算で77810円)割安となっています。

 

市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の46月期のGDP速報値は前期比年率2.4%増で、予想値の1.8%増を上回りました。また、46月期の米企業の決算は、おおむね好調です。

 

経済指標を見てみます。

8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の鉱工業生産指数、7月の小売売上高、6月の製造業受注は市場予想を上回りました。一方、8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、8月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月の耐久財受注、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数、7月の消費者物価指数、7月のISM非製造業景況指数、7月のISM製造業景況指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は48負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です

 

米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比18.7万人増で、市場予想の20.0万人増を下回りました。一方、失業率は3.5%で、前月の3.6%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

7月の新築住宅販売件数数、7月の住宅着工件数、6月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、7月の中古住宅販売件数、8月の住宅市場指数は予想を下回りました。6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比-1.2%で、市場予想を上回る大幅低下となりました。住宅関連の指標は33負で、景気・金利の両面で中立です

 

新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRB2023年内にまだ利上げをする可能性があると市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、長期金利の許容変動幅は、0.5%に据え置きつつも、1%までは柔軟に対応するという政策に変更されました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、823 5.6526% 824 5.6495% 825 5.6655%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、202199日の0.1141%が直近の最低金利で、2023825日に記録した5.6655%が、ここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER15.19PBR1.30となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE8.6%となり、これは3か月前より0.4ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+2.4%で、こちらは3か月前より0.5ポイント改善されています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.0%となり、日経平均の割安幅は200円から320円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-340円から+60円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、3.53ポイントから3.51ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています

 

830日の米国市場では、8月のADP全米雇用リポートや、46月期のGDP改定値、7月の中古住宅販売仮契約指数のほか、セールスフォース・ドットコムなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインとほぼ一致し、下値は想定ラインを420円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ-100円(現在32650円近辺)が上値の目安に、25日線-200円(現在32060円近辺)が下値の目安になりそうです。

 

日経VIは低下し、不安心理は緩和されつつあります。また、信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。日経平均は3日続伸し、25日線を上回ったので、目先は上昇基調が期待できそうです。



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Tuesday, August 29, 2023

[2023/08/29]今後の日経平均の見通し

[市況]

828日、NYDowNASDAQは上昇しました。829日の日経平均先物は、前日比120円高で寄り付くと、午前中は200円高から10円安の間で上下し、午後は110円高から10円高の間でもみあって、結局、40円高で取引を終了しました。日経平均の終値は56円高の32226円で、出来高は11.95億株と高水準でした。

高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態ですが、買われ過ぎの水準です。

空売り比率は5日平均を2日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、弱い状態です。

 

828日の米国市場では、ジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長の講演がおおむね想定内だったとの受け止めから、追加利上げへの過度な警戒感が和らぎ、買いが優勢となりました。長期金利の上昇に一服感が出たことや、中国当局が株式取引の印紙税引き下げなど資本市場活性化策を発表したことも投資家心理の支えとなりました。NYDowNASDAQは続伸しました。

829日の日本市場では、前日の米株式市場で主要な株価指数がそろって上昇した流れを受け、運用リスクをとる動きが優勢となりました。ただ、週内に8月の米雇用統計など重要な経済指標の発表が相次ぐことから、結果を見極めたいとの雰囲気が強く、上値追いの勢いは限定的でした。日経平均は続伸しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、9日線の上にありますが、25日線の下にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。

総合乖離率は+9.7%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+9.8%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中にあります。3つの要素のうちプラスは2つであり、中期トレンドにも黄信号が点灯しています。

ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。

 

NYDowは、25日線の下にありますが、200日線の上にあり、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の中にあります。NASDAQは、25日線の下にありますが、9日線と200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-1.8ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が580円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+7.4ポイントとプラス幅を縮め、日経平均が2380円ほど割高であることを示しています

 

日経VI18.00と低下し、VIX15.08と低下しました。両指数ともに、不安心理の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態ですが、前日比で強さは縮小しました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-6.0、米国0.8と日本が5.2ポイント割安ですが、OECD2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.0、米国が+3.4)0.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.69ポイント(日経平均換算で78950円)割安となっています。

 

市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の46月期のGDP速報値は前期比年率2.4%増で、予想値の1.8%増を上回りました。また、46月期の米企業の決算は、おおむね好調です。

 

経済指標を見てみます。

8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の鉱工業生産指数、7月の小売売上高、6月の製造業受注、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、8月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月の耐久財受注、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数、7月の消費者物価指数、7月のISM非製造業景況指数、7月のISM製造業景況指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は57負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です

 

米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比18.7万人増で、市場予想の20.0万人増を下回りました。一方、失業率は3.5%で、前月の3.6%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

7月の新築住宅販売件数数、7月の住宅着工件数、6月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、7月の中古住宅販売件数、8月の住宅市場指数は予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比-1.7%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は42負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です

 

新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRB2023年内にまだ利上げをする可能性があると市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、長期金利の許容変動幅は、0.5%に据え置きつつも、1%までは柔軟に対応するという政策に変更されました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、823 5.6526% 824 5.6495% 825 5.6655%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、202199日の0.1141%が直近の最低金利で、2023825日に記録した5.6655%が、ここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER15.16PBR1.30となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE8.6%となり、これは3か月前より0.4ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+2.4%で、こちらは3か月前より0.2ポイント改善されています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.6%となり、日経平均の割安幅は90円から200円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-340円から+60円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、3.57ポイントから3.53ポイントに縮小しました。ドル円相場は円安水準でもみあいました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均も、短期的・中期的にもみあいです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています

 

829日の米国市場では、6月のS&Pコアロジック/ケース・シラー住宅価格指数や、8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のJOLTS求人件数のほか、ベスト・バイやヒューレット・パッカードなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを90円ほど下回り、下値は想定ラインを300円ほど上回りました。目先は、25日線+300円(現在32580円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+100円(現在31890円近辺)が下値の目安になりそうです。

 

日経VIは低下し、不安心理は緩和されつつあります。また、信用の売り圧力は、弱い状態です。日経平均は続伸しました。引き続き、25日線を上回れるかどうか、要注目です。



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Monday, August 28, 2023

[2023/08/28]今後の日経平均の見通し

[市況]

825日、NYDowNASDAQは上昇しました。828日の日経平均先物は、前日比300円高で寄り付くと、午前中は230円高から550円高と上昇幅を拡げ、午後は470円高から570円高の間でもみあって、結局、540円高で取引を終了しました。日経平均の終値は545円高の32169円で、出来高は10.98億株と高水準でした。

高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。

空売り比率は5日平均を下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱まりました。

 

825日の米国市場では、ジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長の発言がタカ派的と受け止められ、講演後は長期金利の上昇を受けて株式は売りが優勢となりました。しかし、売りが一巡すると、現在すでに利上げサイクルの終盤に差し掛かっているとの見方が投資家心理を上向かせ、次第に買い戻しが優勢となりました。結局、NYDowNASDAQは反発しました。

828日の日本市場では、前週末の米株式相場の上昇を受け、値がさ株を中心に運用リスクをとる動きが優勢となりました。中国当局の株安対策を背景に香港や上海の株価指数が上昇したことも追い風となりました。一方、福島第1原発の処理水放出をめぐる日中関係悪化懸念が重石となり、インバウンド関連銘柄には売りが広がりました。日経平均は反発しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、25日線の下にありますが、9日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。

総合乖離率は+9.3%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+9.7%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中にあります。3つの要素のうちプラスは2つであり、中期トレンドにも黄信号が点灯しています。

ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線の下にありますが、200日線の上にあり、9日線を上回りました。

 

NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線下にあります。一目均衡表では雲の中にあります。NASDAQは、25日線の下にありますが、200日線の上にあり、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-1.1ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が350円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+7.9ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均が2540円ほど割高であることを示しています

 

日経VI18.39と低下し、VIX15.68と低下しました。両指数ともに、不安心理の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態であり、前日比で強さは拡大しました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-6.0、米国0.8と日本が5.2ポイント割安ですが、OECD2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.0、米国が+3.4)0.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.73ポイント(日経平均換算で81250円)割安となっています。

 

市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の46月期のGDP速報値は前期比年率2.4%増で、予想値の1.8%増を上回りました。また、46月期の米企業の決算は、おおむね好調です。

 

経済指標を見てみます。

8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の鉱工業生産指数、7月の小売売上高、6月の製造業受注、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、8月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月の耐久財受注、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数、7月の消費者物価指数、7月のISM非製造業景況指数、7月のISM製造業景況指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は57負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です

 

米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比18.7万人増で、市場予想の20.0万人増を下回りました。一方、失業率は3.5%で、前月の3.6%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

7月の新築住宅販売件数数、7月の住宅着工件数、6月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、7月の中古住宅販売件数、8月の住宅市場指数は予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比-1.7%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は42負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です

 

新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRB2023年内にまだ利上げをする可能性があると市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、長期金利の許容変動幅は、0.5%に据え置きつつも、1%までは柔軟に対応するという政策に変更されました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、823 5.6526% 824 5.6495% 825 5.6655%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、202199日の0.1141%が直近の最低金利で、2023825日に記録した5.6655%が、ここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER15.15PBR1.30となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE8.6%となり、これは3か月前より0.4ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+2.8%で、こちらは3か月前より0.7ポイント改善されています。


[今後の見通し]

日経平均は、前週末のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.3%となり、日経平均の割安幅は340円から90円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-550円から+60円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、3.61ポイントから3.57ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均も、短期的・中期的にもみあいです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています

 

828日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを210円ほど上回り、下値は想定ラインを480円ほど上回りました。目先は、25日線+200円(現在32500円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+100円(現在31900円近辺)が下値の目安になりそうです。

 

日経VIは低下し、不安心理は緩和されつつあります。また、信用の売り圧力は、かなり弱まりました。日経平均は反発しました。ここまで何度か跳ね返されてきた25日線を上回れるかどうか、要注目です。



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