[市況]
8月9日、NYDowとNASDAQは下落しました。8月10日の日経平均先物は、前日比80円安で寄り付くと、午前中は210円安から150円高と上昇に転じ、午後は100円高から340円高と上昇幅を拡げて、結局、340円高で取引を終了しました。日経平均の終値は269円高の32473円で、出来高は16.54億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態となりました。
空売り比率は5日平均を3日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。
8月9日の米国市場では、中国経済の弱さを受けて当局による追加の景気刺激策への思惑が浮上し、資源関連株の一部に買いが入りました。ただ、7月の消費者物価指数(CPI)の発表を前に、買い手控えムードも強く、結局は主力のハイテク株を中心に売りが優勢となりました。NYDowとNASDAQは続落しました。
8月10日の日本市場では、前日の米株式市場がハイテク株を中心に下落した流れを受け、値がさの半導体関連株を中心に売りが先行しました。しかし、日銀の金融緩和姿勢や堅調な企業業績などを背景に日本株の先高観は強く、次第に買いが優勢となりました。外国為替市場の円安ドル高進行や、中国政府が日本行きの団体旅行を解禁する方針だと伝わったことなども追い風となりました。日経平均は反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は+13.9%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+11.7%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中にあります。3つの要素のうちプラスは2つであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。
NYDowは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドには青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-1.7ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が550円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+7.3ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均が2370円ほど割高であることを示しています。
日経VIは19.27と低下し、VIXは15.96と上昇しました。日経VIは、不安心理の高まりを示す20を下回りました。NYDowと比べて、日経平均は強い状態であり、前日比で強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-6.0、米国0.8と日本が5.2ポイント割安ですが、OECDの2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.0、米国が+3.4)は0.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.79ポイント(日経平均換算で85950円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率2.4%増で、予想値の1.8%増を上回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、おおむね好調です。
経済指標を見てみます。
6月の製造業受注、6月の耐久財受注、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、7月のISM非製造業景況指数、7月のISM製造業景況指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数、7月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の小売売上高、6月の鉱工業生産指数、6月の消費者物価指数は市場予想を下回りました。経済指標は4勝8負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です。
米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比18.7万人増で、市場予想の20.0万人増を下回りました。一方、失業率は3.5%で、前月の3.6%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。また、7月の住宅市場指数は市場予想と一致しました。一方、6月の新築住宅販売件数数、6月の中古住宅販売件数、6月の住宅着工件数は予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比-1.7%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2023年内にあと2回の利上げをすると市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、長期金利の許容変動幅は、0.5%に据え置きつつも、1%までは柔軟に対応するという政策に変更されました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、8月4日 5.6321% → 8月7日 5.6290% → 8月8日 5.6268%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年7月28日に記録した5.6335%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが15.16、PBRが1.31となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.6%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+2.5%で、こちらは3か月前より7.4ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.3%となり、日経平均の割安幅は1130円から780円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1320円から-720円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.43ポイントから3.45ポイントに拡大しました。円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
8月10日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、7月の消費者物価指数(CPI)などが注目されるでしょう。引き続き、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを20円ほど下回り、下値は想定ラインを130円ほど上回りました。目先は、25日線+300円(現在32830円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在32190円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは20を下回り、不安心理は緩和されました。また、信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。米CPIとPPI次第ですが、日本市場の環境はかなり改善されてきており、週初の日経平均は、上昇が期待できそうです。
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