[ファンダメンタル視点]
先週の米国市場では、物価上昇圧力が根強く残る中、複数のFRB高官が利下げに慎重な姿勢を示したことで、週間で株価指数は下落しました。
週間変動率 NYダウ:-1.24%,
NASDAQ:-3.15%, S&P500:-2.08%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、金利上昇による金融不安と世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、2025年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が4.70ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが24.6対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの15.9との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
日米市場が均衡するためには、次の条件が必要です。
現在の日経平均の価格に対して、2025年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに4.70ポイント拡大する。(日本が下方修正又は米国が上方修正される)。又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが63.3程度になる。又は、日経平均が153,480円程度となる。
結果的に、中長期的に日本市場は114,840円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、114,840円ほど魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは拡大しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2025年GDP予測値(現在+3.0%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、NYダウが25日線の上を維持できるか否かに注目。
② 決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は+9.0%となりました。3ヶ月前に比べて0.2ポイント改善しています。また、利益伸び率は+1.8%となりました。3ヶ月前に比べて-1.6%ポイント悪化しています。
③ 米国の長期金利は上昇し、日米間の金利差は3.31から3.38と拡大して、ドル円は152円台から156円台の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で+1.64%上昇しました。
④ OECDの日米の2025年の名目GDP伸び率は、日本が+3.0%で、米国は+3.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が0.9ポイント劣ります。
⑤ 11月第1週は買い超しで、11月第2週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に8.4ポイント(日経平均に勘算すると3250円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に8.1ポイント(日経平均に勘算する3130円程度)割安です。
日本市場はNYダウとNASDAQに対しては弱い状態です。米国市場のボラティリティーを示す指標である VIX は、週間で
16.2 と上昇しました。 日経 VI は 週間で 24.2と低下しました。米国市場はやや楽観的で、日本市場はボラタイルです。
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには"赤信号”が点灯しています。
日経平均は一目均衡表の雲の上にあります。総合乖離率は+1.5%、200日移動平均線との乖離率は+0.3%。これら3つの要因がプラスであるため、中期トレンドには"青信号”が点灯しています。
米国市場では、NYダウは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。また、一目均衡表の雲の上に在ります。
NASDAQも、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。また、一目均衡表の雲の上に在ります。
短期的には"黄信号”で、中期的には"青信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると目先、景気後退懸念が意識されています。また、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇、EU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東の地政学的リスク拡大などがリスク要因として存在します。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期はもみあいです。
日本市場は中期上昇トレンドで、短期は下降トレンドです。
為替市場を分析すると、2024年6月につけた162円台をピークに円高方向に転換しています。今週は153円から156円が想定されます。
今週の米国市場では、製造業とサービス業のPMIデータ、住宅着工、中古住宅販売といった住宅市場の最新情報が注目されます。金融政策面では、FRB当局者やラガルドECB総裁の講演が注目されます。世界的には、英国や日本、ドイツのインフレ率、日本、インド、ユーロ圏、英国などのPMI速報値が発表されます。
先週の日経平均は、想定レンジを下振れしました。上値は想定を150円ほど下回り、下値は想定ラインを410円ほど下回りました。
今週の日経平均の想定範囲は、上値が25日線
(現在38920円近辺)で、下値がボリンジャーバンド-2σ(現在37850円近辺)の間での動きが想定されます。
今週の日経平均は、米国市場の利下げ観測と半導体株が復活しなければ、日本市場は低迷が続きそうです。
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