[ファンダメンタル視点]
5月の雇用統計が労働市場の底堅さを示し、雇用悪化を巡る過度な懸念が後退して、株価指数は週間では、上昇しました。
週間変動率 NYダウ:+1.17%,
NASDAQ:+2.18%, S&P500:+1.50%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、米政権の関税政策、金利上昇による金融不安と世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、2025年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が3.86ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが22.5対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの15.5との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
日米市場が均衡するためには、次の条件が必要です。
現在の日経平均の価格に対して、2025年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに3.86ポイント拡大する。(日本が下方修正又は米国が上方修正される)。又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが38.6程度になる。又は、日経平均が93,880円程度となる。
結果的に、中長期的に日本市場は56,140円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、56,140円ほど魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは、やや拡大しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2025年GDP予測値(現在+3.3%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、NYダウが200日線の上を維持できるか否かに注目。
② 決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は+9.1%となりました。3ヶ月前に比べて-0.1%ポイント悪化しています。利益伸び率は-4.0%となりました。3ヶ月前に比べて-10.5%ポイント悪化しています。
③ 米国の長期金利は低下したものの、日米間の金利差は2.92から2.95と拡大して、ドル円は142円台から145円台の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で-0.24%低下しました。
④ OECDの日米の2025年の名目GDP伸び率は、日本が+3.3%で、米国は+4.4%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.1ポイント劣ります。
⑤ 5月第5週は買い越しで、6月第1週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①と③が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に5.6ポイント(日経平均に勘算すると2110円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に1.0ポイント(日経平均に勘算すると380円程度)割安です。
日本市場はNYダウとNASDAQに対して弱い状態です。米国市場のボラティリティーを示す指標である VIX は、週間で
16.8 と低下しました。 日経 VI は 週間で 23.4と低下しました。米国市場はやや楽観的で、日本市場は”疑心暗鬼”状態です。
日経平均は、9日線の下にありますが、25日線の上にあります。短期トレンドには"黄信号”が点灯しています。
日経平均は一目均衡表の雲の上にあります。総合乖離率は+3.1%となり、200日移動平均線乖離率は-0.4%となりました。2つの要因がプラスですので、中期トレンドにも"黄信号“が点灯しています。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。
米国市場は、短期的には"青信号”で、中期的にも"青信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると目先、景気後退懸念は増幅しています。また、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇、EU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東の地政学的リスク拡大などもリスク要因として存在します。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期は上昇トレンドです。
日本市場は中期もみあいで、短期は上昇トレンドです。
為替市場を分析すると、2025年1月につけた156円をトップに円高方向に転換しています。今週は143円台から146円台が想定されます。
今週の米国市場では、米国の関税交渉をめぐる不透明な状況が続くことに加え、トランプ大統領とイーロン・マスク氏との間に広がる溝がどのように展開するのか、投資家は注視することになりそうです。経済指標で注目されるのはCPIとPPI、そしてミシガン大学の消費者信頼感指数です。世界的には、中国の消費者物価と生産者物価、貿易統計、ドイツの生産者物価、英国の雇用統計、鉱工業生産などが注目されます。
先週の日経平均は想定範囲内で推移しました。上値は660円下回り、下値は80円上回りました。
今週の日経平均の想定範囲は、上値がボリンジャーバンド+2σ (現在38420円近辺)で、下値が25日線(現在37510円近辺)の間での動きが想定されます。
今週も日経平均が、5月13日の高値(38494円)を上回るか、5月22日の安値(36856円)を下回るかが関心事となります。
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