[市況]
8月2日、NYDowとNASDAQは大幅下落しました。8月5日の日経平均先物は、前日比1670円安で寄り付くと、午前中は1580円安から2680円安と下落幅を拡げ、午後は1730円安から5550円安と下落幅を拡げて、結局、4540円安で取引を終えました。日経平均の終値は4451円安の31458円で、出来高は40.90億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。
空売り比率は、5日平均を下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱まりました。
8月2日の米国市場では、7月の雇用統計で雇用者数が市場予想を下回り、失業率も前月より悪化したことから、米経済の減速は想定以上であるとの懸念が強まり、主力株を中心に運用リスク回避の動きが広がりました。決算で業績や見通しがさえなかった銘柄にも売りが広がりました。NYDowとNASAQは続落しました。
8月5日の日本市場では、米景気が後退局面に入ったとの懸念が広がるなか、外国為替市場で急激に円高ドル安が進行し、幅広い銘柄にリスク回避の売りが膨らみました。海外短期筋による株価指数先物への売りも、引き続き重石となりました。午後も売りが売りを呼ぶ展開となり、結局、日経平均は大幅に3日続落しました。下げ幅は過去最大となりました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-54.1%とマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-14.6%とマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線の下にあり、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の上あります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-19.9ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が6260円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、-18.9ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が5950円ほど割安であることを示しています。
日経VIは70.69と急上昇し、恐怖心の高まりを示しています。また、VIXも23.39と前日より上昇しました。NYDowと比べて、日経平均は弱い状態であり、前日比で弱さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-6.9、米国-0.8と日本が6.1ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.9、米国が+3.9)は1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より5.10ポイント(日経平均換算で62660円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率2.8%増で、市場予想の2.1%増を上回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
7月のシカゴ購買部協会景気指数、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の鉱工業生産指数、6月の小売売上高は市場予想を上回りました。一方、6月の製造業受注、7月のISM製造業景況指数、6月の耐久財受注、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数、6月の消費者物価指数、6月のISM非製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面で中立です。
米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比11.4万人増で、市場予想の17.5万人増を下回りました。一方、失業率は4.3%で、前月の4.1%から悪化しました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の中古住宅販売仮契約指数、6月の住宅着工件数、5月の中古住宅販売件数は予想を上回りました。一方、6月の新築住宅販売件数、7月の住宅市場指数は予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+6.8%で、市場予想と一致しました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利下げ次期が遅れるという面では弱気材料です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
市場は、FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性を意識しており、9月利下げ開始への期待を高めています。ECBは、利下げを開始しましたが、追加の利下げには慎重な姿勢を示しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を達成できる見通しがついたとして、利上げに踏み切りました。また、ETFの買い入れ終了、YCC(長期金利の誘導)の終了、国債買い入れの減額を決定しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では7月31日 5.5027% → 8月1日 5.5037% → 8月2日 5.4893%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇していますが、直近ピークアウトしています。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.05、PBRが1.16となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+1.3%で、こちらは3か月前より10.7ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの下落率以上に下げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-12.1%となり、日経平均の割安幅は2150円から4350円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-4350円から-340円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.01ポイントから2.95ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にも下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、景気が減速ぎみに推移しており、FRBが利下げに転換する時期を探る動きとなっています。対ドルで円安が進みにくい状況です。尚、ECBは利下げに踏み出しています。
8月5日の米国市場では、7月のISM非製造業景況指数のほか、タイソン・フーズなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上下に逸脱しました。上値は想定ラインを200円ほど上回り、下値は想定ラインを1250円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-2σ(現在35100円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-3σ(現在32900円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは70.69と急上昇し、恐怖心が最高潮に達していることを示しています。一方、信用の売り圧力は、かなり弱まりました。日経平均は暴落しました。テクニカルには明らかに売られ過ぎの水準ですが、反転には何かきっかけとなる材料が必要でしょう。
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