[市況]
7月31日、NYDowとNASDAQは上昇しました。8月1日の日経平均先物は、前日比500円安で寄り付くと、午前中は470円安から1500円安と下落幅を拡げ、午後は1060円安から1350円安の間でもみあって、結局、1280円安で取引を終えました。日経平均の終値は975円安の38126円で、出来高は25.72億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。
空売り比率は、5日平均を上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は強まりました。
7月31日の米国市場では、パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で「利下げに転じる時期が近づいている」との見解を示したことから、9月利下げ開始の可能性が高まり、主力株を中心に買いが入りました。半導体株が買われたことも支えとなりました。ただ、NYDowが17日につけた最高値を上回ると、高値警戒感が強まり、その後は上昇幅を縮める展開となりました。NYDowは続伸し、NASDAQは大幅に反発しました。
8月1日の日本市場では、日銀の利上げ決定を背景に外国為替市場で急激に円高ドル安が進行したことから、輸出関連株に売りが膨らみました。円高に歩調を合わせた海外短期筋の株価指数先物への売りも重石となりました。日経平均は4営業日ぶりに大幅に反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にあり、9日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。
総合乖離率は-3.4%とマイナスに転換し、200日線との乖離率は+3.5%とプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下に抜けました。3つの要素のうち2つがマイナスとなり、中期トレンドは青信号から黄信号に変りました。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線と200日線の上にありますが、25日線を下回りました。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上あります。NASDAQは、25日線の下にありますが、200日線の上にあり、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に出ました。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-7.2ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が2750円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、-3.9ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が1490円ほど割安であることを示しています。
日経VIは21.82と前日より上昇し、VIXは16.19と前日より低下しました。日経VIは、変動率の高まりを示す20を上回っています。NYDowと比べて、日経平均は弱い状態であり、前日比で弱さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-5.2、米国-0.5と日本が4.7ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.9、米国が+3.9)は1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.73ポイント(日経平均換算で56830円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率2.8%増で、市場予想の2.1%増を上回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
7月のシカゴ購買部協会景気指数、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の鉱工業生産指数、6月の小売売上高は市場予想を上回りました。一方、6月の耐久財受注、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数、6月の消費者物価指数、6月のISM非製造業景況指数、5月の製造業受注、6月のISM製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面で中立です。
米国の6月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比20.6万人増で、市場予想の20.0万人増をやや上回りました。一方、失業率は4.1%で、前月の4.0%から悪化しました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の中古住宅販売仮契約指数、6月の住宅着工件数、5月の中古住宅販売件数は予想を上回りました。一方、6月の新築住宅販売件数、7月の住宅市場指数は予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+6.8%で、市場予想と一致しました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利下げ次期が遅れるという面では弱気材料です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
市場は、FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性を意識しており、9月利下げ開始への期待を高めています。ECBは、利下げを開始しましたが、追加の利下げには慎重な姿勢を示しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を達成できる見通しがついたとして、利上げに踏み切りました。また、ETFの買い入れ終了、YCC(長期金利の誘導)の終了、国債買い入れの減額を決定しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、7月26日 5.5169% → 7月29日 5.5137% → 7月30日 5.5092%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇していますが、直近ピークアウトしています。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが16.03、PBRが1.43となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+1.6%で、こちらは3か月前より7.6ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず大幅に下落しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.3%となり、日経平均の割安幅は340円から890円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1360円から-340円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.09ポイントから3.02ポイントに縮小しました。ドル円相場は急激に円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、景気が減速ぎみに推移しており、FRBが利下げに転換する時期を探る動きとなっています。対ドルで円安が進みにくい状況です。尚、ECBは利下げに踏み出しています。
8月1日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数、や7月のISM製造業景況指数のほか、アップル、アマゾン・ドットコム、インテル、ブッキング・ホールディングス、バイオジェン、モデルナ、シグナなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを690円ほど下回り、下値は想定ラインを900円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ-100円(現在38640円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ+400円(現在37900円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは、変動率の高まりを示す20を上回っています。また、信用の売り圧力は強まりました。日経平均は円高ドル安進行を受けて大幅に反落しました。7月26日の安値(37611円)を下回るかどうかが、次の注目点です。
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