[市況]
8月5日、NYDowとNASDAQは大幅下落しました。8月6日の日経平均先物は、前日比2520円高で寄り付くと、午前中は1790円高から3530円高と上昇幅を拡げ、午後は3480円高から2120円高の間で上下して、結局、2860円高で取引を終えました。日経平均の終値は3217円高の34675円で、出来高は34.81億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
空売り比率は、5日平均を3日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。
8月5日の米国市場では、米景気の先行きに対する不安が強まるなか、世界的な株安が追い打ちをかける形となり、これまで相場上昇を牽引してきたハイテク株を中心に、リスク回避の売りが優勢となりました。NYDowとNASDAQは大幅に3日続落しました。
8月6日の日本市場では、前日の大暴落の反動で、自律反発狙いの買いが膨らみました。米長期金利が下げ止まり、外国為替市場で円相場が下落したことも追い風となりました。また、アジア株が軒並み上昇したことや、米株価指数先物が上昇したことも支えとなりました。日経平均は大幅に反発し、上昇幅は過去最大を記録しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-28.4%とマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-5.9%とマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下に出ました。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下に出ました。米国市場の短期トレンドには赤信号が点灯しています。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-7.4ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が2570円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差も、-7.4ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が2570円ほど割安であることを示しています。
日経VIは50.61と前日より大幅に低下しましたが、依然として高い状態です。また、VIXも38.57と急上昇しました。NYDowと比べて、日経平均は弱い状態ですが、前日比で弱さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-6.1、米国-0.7と日本が5.4ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.9、米国が+3.9)は1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.42ポイント(日経平均換算で60130円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率2.8%増で、市場予想の2.1%増を上回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
7月のISM非製造業景況指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の鉱工業生産指数、6月の小売売上高は市場予想を上回りました。一方、6月の製造業受注、7月のISM製造業景況指数、6月の耐久財受注、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数、6月の消費者物価指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利下げ次期が遅れるという面では弱気材料です。
米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比11.4万人増で、市場予想の17.5万人増を下回りました。また、失業率は4.3%で、前月の4.1%から悪化しました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の中古住宅販売仮契約指数、6月の住宅着工件数、5月の中古住宅販売件数は予想を上回りました。一方、6月の新築住宅販売件数、7月の住宅市場指数は予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+6.8%で、市場予想と一致しました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利下げ次期が遅れるという面では弱気材料です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
市場は、FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性を意識しており、9月利下げ開始への期待を高めています。ECBは、利下げを開始しましたが、追加の利下げには慎重な姿勢を示しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を達成できる見通しがついたとして、利上げに踏み切りました。また、ETFの買い入れ終了、YCC(長期金利の誘導)の終了、国債買い入れの減額を決定しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では7月31日 5.5027% → 8月1日 5.5037% → 8月2日 5.4893%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇していますが、直近ピークアウトしています。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが14.34、PBRが1.27となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.8%となり、これは3か月前より0.3ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+1.5%で、こちらは3か月前より0.5ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
前日のNYDowは下落しましたが、日経平均は買い戻しで上昇しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-3.5%となり、日経平均の割安幅は4350円から1310円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-4350円から-340円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.95ポイントから2.96ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にも下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、景気が減速ぎみに推移しており、FRBが利下げに転換する時期を探る動きとなっています。対ドルで円安が進みにくい状況です。尚、ECBは利下げに踏み出しています。
8月6日の米国市場では、6月の貿易収支のほか、キャタピラー、ウーバー・テクノロジーズ、アムジェンなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲をやや下ぶれしました。上値は想定ラインを400円ほど下回り、下値は想定ラインを40円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ-1000円(現在35910円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ(現在34520円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは大幅に低下しましたが、依然として高い状態です。一方、信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。日経平均は大幅に反発しました。NASDAQの200日移動平均線との乖離率が+1.5%なので、日経平均(現在-5.9%)も同程度までは戻す可能性がありそうです。
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