[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、10月の米消費者物価指数の伸びが市場予想を下回ったことで、インフレのピークアウトが意識され、FRBが利上げを緩めるとの見方が広がり、株価指数は週間では上昇しました。
週間変動率 NYダウ:+4.15% NASAQ:+8.10% S&P500:+5.90%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、サプライチェーン混乱の長期化による世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、改定された2023年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が4.38ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが17.7に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの12.9との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに4.65ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが29.4程度になるか、又は、日経平均が64620円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は36360円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、36360円分魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは縮小しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+3.5%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。今週は、NASDAQが200日線を上回れるかか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.2%となりました。3ヶ月前に比べて0.1ポイント改善しています。また、利益伸び率は+6.9%で3ヶ月前に比べて2.4%ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利は低下し、日米間の金利差は3.92から3.58と縮小して、ドル円は147円から138円の範囲で円高方向に動きました。ドル・インデックスは週間で-3.95%下落しました。
④ OECDの日米の2023年の名目GDP伸び率は、日本が+3.54%で、米国は+4.88%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.34ポイント劣ります。
⑤ 11月1週は買い越しでした。11月2週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①と⑤が強気材料で、③が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に11.0ポイント(日経平均に勘算すると3110円程度)割高です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に0.2ポイント(日経平均に勘算する60円程度)割高です。
週間では米国市場に対する日本市場の強さは減少しました。米国市場のボラティリティーを示す、VIXは低下し、22.5と投資家の不安心理示す25を下回っています。日経VIは20.3に低下。
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには"青信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。総合乖離率は-0.5%となり先週と比較しマイナス幅が縮小しました。 200日移動平均線との乖離率は+10.2%で、プラス幅が拡大しました。3つの要素がプラスですので、中期トレンドには、"青信号"が点灯しています。
米国市場では、NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQは、9日線・25日線の上にありますが、200日線の下にあります。一目均衡表の雲の中に在ります。
短期的には”青信号”で、中期的には”黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念は後退しているものの、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇とEU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き金融不安再燃に注意が必要です。
一方、好材料としては日銀による金融緩和政策の維持が挙げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期は上昇トレンドです。日本市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。
為替市場を分析すると、2021年初頭から円安トレンドが続いていましたが、11月より円高方向へ転換しました。今週は137円台から140円台が想定されます。
今週、米国では、小売売上高、生産者物価、住宅データなどが最も重要な経済指標として発表される予定です。投資家は、大手小売企業の業績報告や、大手取引所であるFTXが破産を申請した後の暗号市場の状況にも注目することになります。その他、日本、英国、カナダのインフレ率、英国の予算案も注目されます。また、ドイツの景況感、日本の第3四半期GDP成長率、中国の鉱工業生産、小売売上高に関するデータも発表されます。
先週の米国のボラティリティーは週間で低下して、株価指数は大幅に上昇しました。今週の日経平均は上昇中のボリンジャーバンド+2σを挟んだ動となりそうです。
ブログランキング・アップに、ご協力をお願いします。