[市況]
11月8日、NYDowとNASDAQは上昇しました。11月9日の日経平均先物は、前日比50円高で寄付くと、午前中は60円高から120円安と下落に転じ、午後は100円安から240円安と下落幅を拡げて、結局、240円安で取引を終了しました。日経平均の終値は155円安の27716円で、出来高は12.82億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は5日平均を3日ぶりに上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、やや強まりました。
11月8日の米国市場では、中間選挙で政権と議会の多数派の政党が違う「ねじれ」が生じれば、企業業績の逆風になる政策が成立しにくくなるとの見方から、先回り的な買いが優勢となりました。ただ、10日に発表される10月の消費者物価指数を見極めたいとの向きも強く、指数は伸び悩む場面もありました。NYDowとNASDAQは3日続伸しました。
11月9日の日本市場では、前日の米株高を受けて買いが先行しましたが、その後は利益確定の売りや戻り待ちの売りが出て相場の重石となりました。国内企業の決算発表が佳境を迎える中、決算内容を材料視した売りも目立ちました。日経平均は3日ぶりに反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+4.4%と前日よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+2.1%と前日よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+15.2ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が4210円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は、+0.1ポイントと前日よりプラス幅を縮め、両指数がほぼ均衡していることを示しています。
日経VIは20.87と前日より上昇し、VIXも25.54と前日より上昇しました。日米市場のボラティリティーの差は拡大しましたが、NYDowと比較して、日経平均の強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.7、米国-1.8と日本が5.9ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.56ポイント(日経平均換算で37740円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP速報値は前期比年率2.6%増で、市場予想の2.4%増を上回りました。また、7~9月期の米企業の決算は、ハイテク株の下方修正が目立ちます。
経済指標を見てみます。
10月のISM製造業景況指数、9月の鉱工業生産指数、10月のミシガン大学消費者信頼感指数、9月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。また、9月の製造業受注、9月の耐久財受注は市場予想と一致しました。一方、10月のISM非製造業景況指数、10月のシカゴ購買部協会景気指数、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、10月のニューヨーク連銀製造業景況指数、9月の小売売上高は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面で中立材料です。
米国の10月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比26.1万人増で、市場予想の20.5万人増を上回りました。一方、失業率は3.7%で、先月の3.5%から悪化しました。雇用は、景気面ではやや強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
9月の新築住宅販売件数数、9月の中古住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、9月の中古住宅販売仮契約指数、9月の住宅着工件数、10月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+13.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、9月に0.75%の大幅利上げを実施し、量的引き締めの検討を開始しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、11月3日 4.5315% → 11月4日 4.5502% → 11月7日 4.5572%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年11月7日に記録した4.5572%がここ5年間の最高金利です。市場金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.64、PBRが1.16となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+6.2%で、こちらは3か月前より2.2ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-3.7%となり、日経平均の割安幅は740円から990円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1220円から-740円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.98ポイントから3.90ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBは量的緩和政策を終了し、量的引き締めの検討を開始しています。
11月9日の米国市場では、中間選挙の結果が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを250円ほど下回り、下値は想定ラインを120円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ+100円(現在28080円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-200円(現在27370円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を3日ぶりに上回りました。また、日経VIとVIXは上昇に転じました。10日に発表される米CPI次第ではありますが、日経平均は、昨日が目先のピークだった可能性が高そうです。
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