[市況]
11月14日、NYDowとNASDAQは下落しました。11月15日の日経平均先物は、前日比30円高で寄付くと、午前中は70円安から40円高の間で上下し、午後は10円高から80円高の間でもみあって、結局、70円高で取引を終了しました。日経平均の終値は26円高の27990円で、出来高は12.11億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、やや「買い」が有利の状態です。
一方、空売り比率は5日平均を2日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。
11月14日の米国市場では、直近の2営業日で大幅に上昇した反動で、目先の利益を確定する売りが優勢となりました。ブレイナードFRB副議長のハト派的な発言が株買いを誘う場面もありましたが、勢いは続きませんでした。決算発表を間近に控えた小売りのウォルマートやホームセンターのホーム・デポが大きく下げ、相場の重石となりました。NYDowとNASDAQは3営業日ぶりに反落しました。
11月15日の日本市場では、前日の米株式相場の下落を受けて売りが先行しました。ただ、米利上げペースが緩まるとの期待は根強く、相場は底堅く推移しました。中国当局が感染症対策を緩和するとの報道を受けて非鉄や鉄鋼など素材株が買われたほか、前日に決算を発表した大手金融株も買われ、相場を支えました。結局、日経平均は小幅に反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+7.0%と前日よりプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+3.1%と前日よりプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+11.0ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が3080円ほど割高であることを示しています。一方、NYDowとの差は、-0.2ポイントと前日よりマイナス幅を縮め、日経平均が60円ほど割安であることを示しています。
日経VIは18.87と前日より低下し、VIXは23.73と前日より上昇しました。日米市場のボラティリティーの差は拡大し、NYDowと比較して、日経平均の弱さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.8、米国-1.8と日本が6.0ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.66ポイント(日経平均換算で38980円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP速報値は前期比年率2.6%増で、市場予想の2.4%増を上回りました。また、7~9月期の米企業の決算は、ハイテク株の下方修正が目立ちます。
経済指標を見てみます。
10月のISM製造業景況指数、9月の鉱工業生産指数は市場予想を上回りました。また、9月の製造業受注、9月の耐久財受注は市場予想と一致しました。一方、11月のミシガン大学消費者信頼感指数、10月の消費者物価指数、10月のISM非製造業景況指数、10月のシカゴ購買部協会景気指数、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、10月のニューヨーク連銀製造業景況指数、9月の小売売上高は市場予想を下回りました。経済指標は4勝8負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
米国の10月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比26.1万人増で、市場予想の20.5万人増を上回りました。一方、失業率は3.7%で、先月の3.5%から悪化しました。雇用は、景気面ではやや強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
9月の新築住宅販売件数数、9月の中古住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、9月の中古住宅販売仮契約指数、9月の住宅着工件数、10月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+13.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、9月に0.75%の大幅利上げを実施し、量的引き締めの検討を開始しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では11月9日 4.6300% → 11月10日 4.6497% → 11月11日 4.6061%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年11月10日に記録した4.6497%がここ5年間の最高金利です。市場金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.50、PBRが1.14となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+8.1%で、こちらは3か月前より4.1ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.5%となり、日経平均の割高幅は250円から380円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-990円から+380円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.65ポイントから3.64ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBは量的緩和政策を終了し、量的引き締めの検討を開始しています。
11月15日の米国市場では、10月の生産者物価指数や11月のニューヨーク連銀製造業景況指数のほか、ホーム・デポやウォルマートなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを250円ほど下回り、下値は想定ラインを210円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ-100円(現在28190円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-100円(現在27690円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を2日連続で下回りました。また、日経VIは、不安心理が高まっているとされる20を下回っています。信用の売り圧力は引き続き低下傾向にあり、日経平均は、比較的しっかりした動きでした。目先、上昇トレンドはまだ続くと期待してよさそうです。
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