[市況]
11月3日、NYDowとNASDAQは下落しました。11月4日の日経平均先物は、前日比90円安で寄付くと、午前中は20円安から330円安と下落幅を拡げ、午後は270円安から140円安と下落幅を縮めて、結局、150円安で取引を終了しました。日経平均の終値は463円安の27199円で、出来高は16.39億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態となりました。
また、空売り比率は5日平均を4営業日ぶりに上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は強い状態です。
11月3日の米国市場では、金融引き締め長期化への警戒感が高まり、売りが優勢となりました。パウエル議長がFOMC後の会見でタカ派的な姿勢を示したことや、イングランド銀行が0.75%の利上げを決めたことなどが影響しました。一方で、10月の雇用統計を見極めたいとのムードも強く、午後にかけては下げ渋る展開となりました。NYDowとNASDAQは4日続落しました。
11月4日の日本市場では、2~3日の米株式市場が下落した流れが引き継がれ、運用リスクを回避する目的の売りが優勢となりました。一方で、香港株の急伸は投資家心理の支えとなりました。もっとも、10月の米雇用統計の発表を前に様子見ムードが強く、積極的な売買は控えられる傾向でした。日経平均は続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の上にありますが、9日線を下回りました。短期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。
総合乖離率は-0.5%とマイナスに転換し、200日線との乖離率は+0.1%と前営業日よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素のうち2つがマイナスであり、中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線の上にありますが、20
日線の下にあり、9日線を下回りました。
NYDowは、25日線の上にありますが、200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+15.8ポイントと前営業日よりプラス幅を拡げ、日経平均が4300円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差も、+1.7ポイントと前営業日よりプラス幅を拡げ、日経平均が460円ほど割高であることを示しています。
日経VIは21.57と前日より低下し、VIXも25.30と前日より低下しました。日米市場のボラティリティーの差は縮小しましたが、NYDowと比較して、日経平均の強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.7、米国-1.7と日本が6.0ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.67ポイント(日経平均換算で38360円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP速報値は前期比年率2.6%増で、市場予想の2.4%増を上回りました。また、7~9月期の米企業の決算は、ハイテク株の下方修正が目立ちます。
経済指標を見てみます。
10月のISM製造業景況指数、9月の鉱工業生産指数、10月のミシガン大学消費者信頼感指数、9月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。また、9月の製造業受注、9月の耐久財受注は市場予想と一致しました。一方、10月のISM非製造業景況指数、10月のシカゴ購買部協会景気指数、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、10月のニューヨーク連銀製造業景況指数、9月の小売売上高は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面で中立材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比26.3万人増で、市場予想の27万人増をやや下回りました。一方、失業率は3.5%で、先月の3.7%から改善されました。雇用は、景気面ではやや強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
9月の新築住宅販売件数数、9月の中古住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、9月の中古住宅販売仮契約指数、9月の住宅着工件数、10月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。8月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+13.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、9月に0.75%の大幅利上げを実施し、量的引き締めの検討を開始しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、10月31日 4.4602% → 11月1日 4.4597% → 11月2日 4.5084%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年11月2日に記録した4.5084%がここ5年間の最高金利です。市場金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.53、PBRが1.15となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+5.2%で、こちらは3か月前より2.0ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-4.2%となり、日経平均の割安幅は1340円から1160円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1890円から-1160円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.81ポイントから3.90ポイントに拡大しました。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均も、短期的・中期的にもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBは量的緩和政策を終了し、量的引き締めの検討を開始しています。
11月4日の米国市場では、10月の雇用統計が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを520円ほど下回り、下値は想定ラインを210円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+100円(現在27540円近辺)が上値の目安に、25日線-200円(現在26780円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を4営業日ぶりに上回りました。一方、日経VIとVIXは低下傾向にあり、不安心理は緩和されつつあります。FOMCを通過しましたが、日経平均は予想ほど下ぶれしませんでした。米雇用統計やCPI次第ではありますが、ここからは、上向きの25日線を挟んだ動きが期待できそうです。
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