[市況]
27日のNYDowとNASDAQは大幅下落しました。28日の日経平均先物は、前日比110円安で寄り付き、午前中は130円安から90円安の範囲での動きでした。午後は190円安まで売られる場面がありましたが、最終的に140円安で取引を終わりました。日経平均は145円安で引け、出来高は17.95億株と低水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、110万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅が拡大しました。個別銘柄に関しては「売り」が有利な状況です。
27日の米国市場では、朝方発表の6月の耐久財受注額が市場予想に反して減少したうえ、FRBが発表したベージュブックは米経済活動が多くの地区で減速したと指摘したことで、米景気の先行きに懸念から投資家心理が悪化しました。また、債務上限引き上げ問題を巡る膠着感が一段と強まったことも悪材料となりました。
28日の日本市場では、世界的に株安傾向が強まるなか、円相場の高止まりが続いていることも嫌気され、自動車など輸出関連株をはじめ幅広い銘柄に売りが拡がりました。後場中ごろには先物の大口売りをきっかけに一段安となり、下げ幅を200円近くまで拡大する場面がありました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線、9日線を下回りました。短期トレンドは青信号から赤信号に変わりました。総合乖離率は+1.5%とプラス幅が縮まりました。200日線との乖離率は-0.2%とマイナス転換しました。日経平均は一目均衡表の雲の上に在ります。2つの要素がプラスですので、中期トレンドは黄信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線、25日線の上に在りますが、9日線を下回りました。
NYDowは、200日線線の上に在りますが、9日線の下に在り、25日を下回りました。一目均衡表では雲の中に在ります。
NASDAQは、200日線の上に在りますが、25日線、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が2.1ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は1.4ポイント縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、改定されたOECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差と予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 2.10ポイント割高となっています。
市場は現在、「震災復興の日本経済への影響」、「世界の景気と穀物・原油価格」、「米国の景気・雇用状況と住宅市況」、「欧米の債務問題による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を実行中ですが、終了後も緩和的な政策は続きそうです。米国の1-3月期のGDPは年率で1.8%に減少しました。4-6月期の主要企業の決算発表は、今のところ好調な企業が多いようです。経済指標では、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のフィラデルフィア連銀景況感指数、6月の小売売上高、6月のISM製造業景況感指数、6月のシカゴ購買部協会景気指数などは市場予想を上回りましたが、6月の耐久財受注、7月のNY連銀製造業景気指数、6月のISM非製造業指数、5月の鉱工業生産指数、5月の既存店売上高は予想以下となりました。6月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が1万8千人増と10万人以上を見込んでいた市場予想以下となりました。失業率も9.1%から9.2%と前月から悪化しました。一方、住宅関連では、5月の全米住宅価格指数、6月の住宅着工件数、は予想以上でしたが、6月の新築住宅販売件数、6月の中古住宅販売件数、6月の住宅市場指数は予想以下となりました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年比で-4.5%と下落率は市場予想並みながら先月から悪化し、8ヶ月連続下落となりました。今年4月以降、景気指標に陰りがでてきましたが7月に入り改善傾向です。一方、雇用と住宅関連の回復は鈍く金融緩和解除の足かせとなっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペインなど欧州各国の財政赤字拡大が金融システム不安再燃の懸念を残しています。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、6月末で大幅なドル供給策は終了するものの、金利は据え置かれ、緩和的な政策は継続されるとのFRBによる方向が示されました。一方、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は07月25日 0.2521% → 07月26日 0.2526% → 07月27日 0.2528%となり低水準ながら上昇傾向です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが14.9、PBRが1.09、ROEが7.4%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの下落に連動して下げました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+3.2%となり、日経平均は310円の割高で、割高幅が縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+130円 ~ +360円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて強い動きが続いていますが、今日は強い動きが縮小しました。
米国市場は、中期もみ合いで、短期は下降トレンドです。一方、日経平均は中期もみ合いで、短期は下降トレンドです。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルには割高です。
LIBORのドル3ヶ月物金利は低水準で、欧州財政問題が金融不安に発展する気配とは言えない水準です。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は1.92%と拡大したものの、為替は円高方向でした。日米金利差はこのところ縮小傾向です。一方、米国市場は連邦政府の債務上限引き上げについて、与野党合意の見通しが立たず続落しました。今夜の米国市場では新規失業保険申請件数、6月の中古住宅販売成約指数やエクソンモービル、スターバックスなどの決算が注目されそうです。
日経平均は、ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。テクニカルには、三角もち合いを下離れ、7月13日の下値を下回りましたので下降トレンドを確認した形となりました。ファンダメンタル面では、米・欧政府債務問題が欧米の銀行の経営に影響するか否か、米中の景気後退が米国の主要企業の業績に影響するか否かが今後のテーマとなりそうですが、欧州債務問題は一旦、落ち着きそうですが、米政府債務問題は市場のかく乱要因として残っているようですので、市場の関心は米国企業の四半期決算と両睨みとなりそうです。米政府債務問題が、為替がドル高にならないことに繋がっているようです。これが解消されないと本格的な上昇トレンド入りとはならないと思われます。目先の日経平均の予想レンジは上値が今日の窓埋めとなる10010円近辺で下値は6月28日の窓埋めとなる9710円近辺が想定されます。
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