[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、雇用環境に対する好・悪材料の発表で、もみ合う展開でした。一方、中長期的には、先進国の緊縮財政による消費や雇用の改善の遅れ、欧州の財政問題からの金融不安再燃による信用収縮懸念、資源高騰に伴う新興国の利上げによる景気後退懸念や中東の地政学的リスクが、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性が残されています。
2011年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差はOECDの予測値の改定により、日本市場は2.39ポイント割高となりました。その要因はS&P500のPERが14.0で、東証1部平均のPERの15.6との差と日米金利差によるものです。これは、今の日経平均の価格には、震災の影響で日本の2011年のGDP予想値が1.5%程度(OECD予想値より2.4ポイント高い)になることが織り込まれているとも解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2011年GDP予測値(現在+1.7%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。今週は、四半期決算、バーナンキFRB議長議会証言や7月のNY連銀製造業景気指数の発表などが株式相場に影響しそうですが、弱含みで、一服となりそうです。
② 日経225採用銘柄の今期予想増益率は+16%ですが、今期ROE予想値は7.9%から7.3%へやや悪化しています。
③ 日米とも長期金利は下降傾向で、日米の金利差は2.05%から1.86%へ縮小傾向で、為替は80円から81円台でもみ合う中、最終的に円高方向でした。今週も81円台から79円台でもみ合う動きが予想されます。
④ OECDによる日米の2011年の実質GDP伸び率は改定され日本が-0.9%で、米国は+2.6%と予想されていますので、この面では日本市場にとって3.5ポイント分の弱気材料です。
⑤ 7月1週は買い越しで7月2週も買い越しだった可能性が高く、今週も買い越しが予想されます。
5つのポイントのうち①③⑤が強気材料でした。今週は、①③⑤と地震災害復旧による②④が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、3.9ポイント割安となり、先週比1.3ポイント割安幅(弱い動き)が縮まりました。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。200日移動平均線乖離率は+2.5%となり先週と比較してプラス幅が拡がりました。総合乖離率は+12.8%となりプラス幅が拡がりました。3つがプラスですので中期トレンドは、”青信号"が点灯しています。日経平均は9日線、25日線の上に在りますので、短期的トレンドには"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは、200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には青信号"で中期的には"青信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場は、アフリカ・中東政情不安、資源高、欧州財政問題、景気指標などのリスクはやや後退しているものの、新興国の利上、不動産市場の低迷、雇用指標の停滞が悪材料となっています。ただ、好材料としては、FRBによる金融緩和が継続する見通しの中、企業決算は概ね好調である点が挙げられます。テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドとなっています。日本市場は中期上昇トレンドで短期も上昇トレンドです。
目先の状況を分析すると、EUの財政問題についてはLIBORのドル3ヶ月物金利は低水準もみ合いで、まだギリシャ・ショック以前の水準です。今のところ欧州の金融不安には繋がっていません。一方、先週の日米金利差は予想以下の雇用統計の影響で週末に縮小し、為替はも円安傾向から週末に円高に振れました。
今週の日経平均も、米国市場や為替の動き、などを睨んだ動きとなりそうです。今週から四半期決算発表が始まりますが、企業業績の下方修正が有るか無いか今後の焦点となりそうですが、米国市場で目先、調整しそうです。一方、日本市場では、このところ米国市場より強い動きが続いていましたが、直近は弱い動きに転換しています。テクニカルな視点での日経平均は、短期・中期とも上昇トレンドですが、今週は先週末の雇用統計の発表による米国市場の下げが影響しそうです。7月8日の日足が、アイランド・リバーサルとなれば、買われ水を示すテクニカル指標も多いことから、目先は調整局面入りとなりそうです。ただ、その際の下値の目処は200日線(現在9890円)近辺と思われます。
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