[市況]
14日のNYDowとNASDAQは下落しました。15日の日経平均先物は、前日比10円安で寄り付き、午前中は10円安から60円高の範囲での動きでした。午後は小動きで推移し、最終的に40円高で取引を終わりました。日経平均は38円安で引け、出来高は14.73億株と低水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、40万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅が縮小しました。個別銘柄に関しては「買い」が有利な状況です。
14日の米国市場では、朝方は、週間の新規失業保険申請件数が市場予想以上に減ったことなどを好感して買いが先行しましたが、バーナンキ議長が同日の議会証言で、追加金融緩和の早期実施に慎重な考えを示唆たことで、前日に強まった金融緩和への期待がしぼみ、目先の利益確定売りが広がりました。
15日の日本市場では、取引開始前にS&Pが米国債の格付け見通しを引き下げたことで、円が急伸し、78円台となったことで売りが先行したものの、グーグルが発表した4-6月期決算が市場予想を上回ったことなどで、今晩の米国市場に対する期待感を誘い、薄商いの中、日経平均は比較的堅調に推移しました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線の上に在りますが、9日線の下に在ります。短期トレンドは黄信号が点灯しています。総合乖離率は+6.2%とプラス幅が拡がりました。200日線との乖離率は+0.7%とプラス幅が拡がりました。日経平均は一目均衡表の雲の上に在ります。3つの要素がプラスですので、青信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線、25日線、9日線の上に在ります。
NYDowは、200日線、25日線の上に在りますが、9日線の下に在ります。一目均衡表では雲の上に在ります。
NASDAQは、200日線、25日線の上に在りますが、9日線の下に在ります。一目均衡表では雲の上に在ります。米国市場の短期トレンドは黄信号が点灯しています。中期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が1.8ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は1.6ポイント縮まりました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、改定されたOECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差と予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 2.25ポイント割高となっています。
市場は現在、「震災の日本経済への影響」、「世界の景気と原油価格」、「米国の景気・雇用状況と住宅市況」、「欧州の財政赤字による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を実行中ですが、終了後も緩和的な政策は続きそうです。米国の1-3月期のGDPは年率で1.8%に減少しました。4-6月期の主要企業の決算発表は、今のところ好調です。経済指標では、6月の小売売上高、6月のISM製造業景況感指数、6月のシカゴ購買部協会景気指数、5月の耐久財受注額などは市場予想を上回りましたが、6月のNY連銀製造業景気指数は改善を見込んでいた市場予想に反して大幅に悪化し、6月のISM非製造業指数、6月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、6月のフィラデルフィア連銀景気指数、5月の鉱工業生産指数、5月の既存店売上高は予想以下となりました。6月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が1万8千人増と10万人以上を見込んでいた市場予想以下となりました。失業率も9.1%から9.2%と前月から悪化しました。一方、住宅関連では、5月の住宅着工件数、は予想以上でしたが、5月の新築住宅販売件数は予想以上ながら前月比2.1%減少、5月の中古住宅販売件数は市場予想並みながら6ヶ月ぶりの低水準に減少し、6月の住宅市場指数、4月の仮契約住宅指数は予想以下となりました。4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年比で7月連続下落となりましたが、-3.96%と下落率は市場予想並みで、前月比は+0.7%でした。昨年9月以降の景気関連の経済指標は改善傾向でしたが、今年4月以降、景気と雇用指標に陰りがでてきました。また、住宅関連の回復は鈍く金融緩和解除の足かせとなっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペインなど欧州各国の財政赤字拡大が金融システム不安再燃の懸念を残しています。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、6月末で大幅なドル供給策は終了するものの、金利は据え置かれ、緩和的な政策は継続されるとのFRBによる方向が示されました。一方、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は7月12日 0.2490% → 07月13日 0.2492% → 07月14日 0.2497%となり低水準ながら上昇傾向です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが15.1、PBRが1.10、ROEが7.3%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの下落にも関わらず上げました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+2.5%となり、日経平均は230円の割高で、割高幅が縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-10円 ~ +260円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて強い動きが続いていますが、今日は強い動きが拡大しました。
米国市場は、中期上昇トレンドで、短期はもみ合いです。一方、日経平均は中期上昇トレンドで、短期はもみ合いです。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルには割高です。
LIBORのドル3ヶ月物金利は低水準で、欧州財政問題が金融不安に発展する気配とは言えない水準ですが、上昇に転じたようで要注意です。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は1.87%と拡大し、為替はやや円安方向でした。ただ、日米金利差は縮小傾向に変化してきたようです。一方、米国市場はバーナンキ議長発言を嫌気し続落しました。今夜の米国市場では6月の消費者物価、7月のNY連銀製造業景気指数、6月の鉱工業生産が注目されそうです。
日経平均は、ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。テクニカルには、200日線近辺で一旦戻している状態です。ファンダメンタル面では、欧州財政問題が欧州の銀行の経営に影響するか否か、米中の景気後退が米国の主要企業の業績に影響するか否かが今後のテーマとなりそうですが、欧州財政問題は市場のかく乱要因として残っているようで、市場の関心は米国企業の四半期決算と両睨みとなりそうです。日経平均は、200日線(現在9902円)を下回ったことで、押し目買いが入りリバウンドしたものの、NYDowが中期上昇トレンド維持の為の微妙な位置にさしかかっており、日米共に正念場が続いています。欧州財政問題が落ち着くか否か当面の鍵となりそうです。日経平均が上昇トレンドを維持する為には、目先、7月12日の窓埋となる10058円を超えることが前提条件と思われますが、そこまでのエネルギーは無く、暫くはもみ合いが続きそうです。
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