[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、欧州の財政懸念の後退とおおむね好調な4-6月期決算で上昇しました。一方、中長期的には、先進国の緊縮財政による消費や雇用の改善の遅れ、欧州の財政問題からの金融不安再燃による信用収縮懸念、資源高騰に伴う新興国の利上げによる景気後退懸念や中東の地政学的リスクが、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性が残されています。
2011年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差はOECDの予測値の改定により、日本市場は2.32ポイント割高となりました。その要因はS&P500のPERが14.0で、東証1部平均のPERの15.5との差と日米金利差によるものです。これは、今の日経平均の価格には、震災の影響で日本の2011年のGDP予想値が1.4%程度(OECD予想値より2.3ポイント高い)になることが織り込まれているとも解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2011年GDP予測値(現在+1.7%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。今週は、四半期決算、住宅関連指標や4-6月期GDPの発表などが株式相場に影響しそうですが、強含みで、もみ合いとなりそうです。
② 日経225採用銘柄の今期予想増益率は+16.5%ですが、今期ROE予想値は7.9%から7.3%へやや悪化しています。
③ 日米とも長期金利は下降傾向で、日米の金利差は1.83%から1.87%へ拡大傾向ながら、為替は79円から78円台で円高方向に動きました。今週は79円台から77円台で円高方向でもみ合う動きが予想されます。
④ OECDによる日米の2011年の実質GDP伸び率は改定され日本が-0.9%で、米国は+2.6%と予想されていますので、この面では日本市場にとって3.5ポイント分の弱気材料です。
⑤ 7月2週は売り越しで7月3週も売り越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。
5つのポイントのうち①が強気材料で③が弱気材料でした。今週も、①③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、3.4ポイント割安となり、先週比0.7ポイント割安幅(弱い動き)が拡がりました。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。200日移動平均線乖離率は+2.2%となり先週と比較してプラス幅が拡がりました。総合乖離率は+9.8%となりプラス幅が拡がりました。3つがプラスですので中期トレンドは、”青信号"が点灯しています。日経平均は25日線、9日線の上に在りますので、短期的トレンドには"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは、200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には青信号"で中期的には"青信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場は、アフリカ・中東政情不安、資源高、景気指標、欧州財政問題などのリスクはやや後退しているものの、新興国の利上、不動産市場の低迷、雇用指標の停滞が悪材料となっています。ただ、好材料としては、FRBによる金融緩和が継続する見通しの中、企業決算は概ね好調である点が挙げられます。テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドとなっています。日本市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドとなっています。
目先の状況を分析すると、EUの財政問題についてはLIBORのドル3ヶ月物金利は上昇ぎみながら低水準で、まだギリシャ・ショック以前の水準です。今のところ欧州の金融不安には繋がっていません。一方、先週の日米金利差は拡大傾向ながら、米国債の発行上限問題が決着せず、為替は円高傾向でした。
今週の日経平均も、米国市場や為替などを睨んだ動きとなりそうです。米企業の四半期決算は今のところ好調で支援材料となっています。一方、日本市場では、テクニカルな視点での日経平均は200日線で下げ止まり、中期上昇トレンドを維持しており、米国市場より強い動きが続いています。今週は連邦債務の上限引き上げを巡る政府と議会の対立の行方が大きく影響しそうです。決着すれば、米国企業の決算発表内容が好調ですので、円安への流れの変化も期待でき、日経平均の上昇が見込めますが、決着できない場合は米国債ディフォルト警戒感から、円高進行と株価指数の下落も有りそうです。
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