[市況]
29日のNYDowとNASDAQは下落しました。30日の日経平均先物は、前日比50円安で寄り付きました。前場は、一時10円安まで下げ幅を縮める場面もありましたが、後場は一段安となり、最終的に170円安で終わりました。日経平均は188円安で引け、出来高は21.8億株と低水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、10万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅が縮小しました。個別銘柄に関しては「買い」が有利な状態です。
29日の米国市場では、EUとIMFがアイルランドへの支援を決めましたが、欧州市場は総じて下落し、スペインやイタリアなどの国債利回りが急上昇しました。アイルランド支援策は欧州の不安拡大を防ぐには力不足との見方から、売りが先行しました。また、ドルがユーロに対して上昇したことで、素材・エネルギー株が売られ、NYDowは心理的な節目である11000ドルを下回る場面がありました。
30日の日本市場では、欧州の金融・財政不安を背景とした欧米市場安が重荷となったほか、後場は中国の金融引き締めを警戒した上海株式相場の大幅安が嫌気され、中国関連銘柄を中心に売られました。さらに、大引けにかけては米MSCI指数などの株価指数の銘柄構成比率の見直しに伴う売りも出たようです。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の上に在りますが、9日線を下回りました。短期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。総合乖離率は+7.8%とプラス幅が縮まりました。200日線との乖離率は+0.7%とプラス幅が縮まりました。日経平均は一目均衡表の雲の上に在ります。3つの要素がプラスですので、中期的トレンドは青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線、25日線の上に在りますが、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。
NYDowは、200日線の上に在りますが、9日線、25日線の下に在ります。一目均衡表では雲の上に在ります。
NASDAQは、200日線、9日線の上に在りますが、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。米国市場の短期トレンドは黄信号が点灯しています。中期トレンドは青信号が点灯しています。
テクニカルな指標である、日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が7.7ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は1.4ポイント拡がりました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、5月に改訂されたOECDの2010年予想実質GDP伸び率の日米差と7-9月期の決算を考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ1.3ポイント割安となっています。
市場は現在、「米国の景気と雇用状況と金融規制の影響」、「欧州の財政赤字と景気後退の行方」や「中国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を決めました。米国の7-9月期のGDPは年率で2.0%増加し、市場予想に一致しました。7-9月期の主要企業の決算発表内容は概ね好調です。経済指標では、10月の個人消費支出、11月の消費者態度指数、11月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数、10月の小売売上高、10月のISM非製造業景況感指数、10月のISM製造業景況感指数、9月の製造業購買担当者景気指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、などは市場予想を上回りましたが、10月の耐久財受注、10月の消費者態度指数、9月の鉱工業生産指数、などは予想以下となりました。10月の雇用統計で失業率は9.6%と変化は無かったものの、雇用者数が前月比で15.1万人増となり市場予想の6万人増以上に増加しました。一方、住宅関連では、9月の新築住宅販売件数は2か月連続のプラスとなり、10月の住宅市場指数が5ヶ月ぶりに前月比で上昇し、9月の中古住宅販売件数は予想以上でしたが、10月の住宅着工件数は予想以下でした。また、8月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で1.7%上昇したものの伸びが鈍化しました。8月の景気指標と住宅関連指標は弱い内容でしたが、9月、10月、11月は改善傾向です。
ギリシャを初めとする欧州各国の財政赤字拡大が債務不履行懸念を生んでいましたが、ストレステスト通過により、欧州銀行の金融不安は落ち着いたようです。しかし、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが出てきたように、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、FRBの低金利政策は継続されていますが、中国の利上げが悪材料視されています。引き続き、金融機関間の金利、株価の推移や企業業績の推移に留意することが肝要です。
ちなみに、LIBORドル3ヶ月物金利の推移は11月25日 0.2919% → 11月26日 0.2944% → 11月29日 0.2959%と上昇傾向です。ちなみに、急落前の05月03日の0.346%を下回っています。MAXは6月17日の0.5392%でした。
シティグループの株価は29日、上昇しました。(昨年1月高値7.59ドル・昨年3月安値1.02ドルに対し、現在4.15ドル)。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが15.2、PBRが1.14、ROEが7.5%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの下落率以上に下げました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.4%となり、日経平均は140円の割高で、割高幅は縮まりました。プレミアム値は、ここ一週間、+120円 ~ +440の間で推移しています。日本市場は、米国市場と比べて強い動きが続いていますが、今日は大幅に縮小しました。米国市場は、短期は横ばいトレンドですが、中期はまだ上昇トレンドの中にあります。一方、日経平均は中期上昇トレンドですが、短期トレンドは横ばいとなりました。日経平均の上昇の為には、今後も円安への動きや米国市場の一段高などの支援材料が必要ですが、今夜の米国市場では、9月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数、11月のシカゴ購買部協会景気指数や年末商戦の状況が注目されそうです。日経平均は中長期的にはテクニカルにもファンダメンタルにも米国市場に比べて割安ですので、この修正が続いています。円高方向に戻るまでは、この傾向は続きそうです。日経平均の今後を占う上で、日米金利差の推移が引き続き重要です。現在長期金利差は1.64%と縮小傾向ですので、目先は円高ぎみに動きそうです。引き続き、朝鮮半島情勢、欧州財政問題、中国の利上げや米年末商戦の状況に左右される相場となりそうです。日経平均は上海市場の急落の影響を受けましたが、テクニカルな高値警戒感は後退しました。欧州財政問題が落ち着けば、米国市場が戻り歩調となる可能性も有り、そうなれば、日本市場にも上昇余地が出てきそうです。ただ、LIBORのドル3ヶ月物金利が上昇してきた点は要注意です。この状態が続けば再び金融不安となる可能性もあり、欧州財政問題が落ち着く方向とは言えそうもありません。
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