[市況]
6月5、NYDowとNASDAQは上昇しました。6月6日の日経平均先物は、前日比460円高で寄り付くと、午前中は550円高から230円高と上昇幅を縮め、午後は340円高から180円高の間でもみあって、結局、240円高で取引を終えました。日経平均の終値は213高の38703円で、出来高は16.53億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態となりました。
空売り比率は、5日平均を2日連続で上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、やや弱まりました。
6月5日の米国市場では、5月のISM非製造業景況指数が米経済の好調さを示す内容だったことから、長期金利が低下し、株買いを誘いました。また、AI需要拡大への期待から、足元で重石となっていたハイテクセクターに見直し買いが入り、相場の押し上げ要因となりました。NYDowは続伸し、NASDAQも3日続伸しました。NASDAQとS&P500は過去最高値を更新しました。
6月6日の日本市場では、前日の米株式市場でハイテク株が買われた流れが引き継がれ、値がさの半導体関連株などに買いが向かいました。日銀の高官が金融政策正常化に慎重な発言をし、外国為替市場で円高ドル安が一服したことも追い風となりました。ただ、日経平均が節目の3万9000円にいったん到達すると利益確定の売りも出て、相場の上値を抑えました。結局、日経平均は3日ぶりに反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から青信号に変わりました。
総合乖離率は+8.8%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+9.3%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中にあります。3つの要素のうちプラスは2つであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の上にあります。
NYDowは、25日線の下にありますが、200日線の上にあり、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に出ました。NASDAQは、25日線と200日線の上にあり、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドは黄信号から青信号に変りました。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-5.0ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が1940円ほど割安であることを示しています。一方、NYDowとの差は、+4.2ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均が1630円ほど割高であることを示しています。
日経VIは17.72と前日より低下し、VIXも12.63と前日より低下しました。両指数ともに、変動率の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態であり、前日比で強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-5.1、米国-0.4と日本が4.7ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.4、米国が+3.9)は0.5ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.26ポイント(日経平均換算で90420円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP改定値は前期比年率1.3%増で、速報値の1.6%増を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
5月のISM非製造業景況指数、4月の製造業受注、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、4月の耐久財受注、5月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、5月のISM製造業景況指数、5月のシカゴ購買部協会景気指数、4月の鉱工業生産指数、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の小売売上高、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数、4月の消費者物価指数は市場予想を下回りました。経済指標は5勝7負で、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の4月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比17.5万人増で、市場予想の24.0万人増を下回りました。また、失業率は3.9%で、前月の3.8%から悪化しました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
4月の中古住宅販売仮契約指数、4月の新築住宅販売件数、4月の中古住宅販売件数、4月の住宅着工件数、5月の住宅市場指数は予想を下回りました。一方、3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+7.4%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は1勝5負で、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
市場は、FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性は高いと予想していますが、利下げ開始時期は不透明です。ECBは、政策金利の据え置きを続けていますが、金融緩和を検討し始めているとは示唆していません。一方、日銀は、2%のインフレ目標を維持しつつも、3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除と、ETFの買い入れ終了、YCC(長期金利の誘導)の終了を決定しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、5月31日 5.6044% → 6月3日 5.6015% → 6月4日 5.6001%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇していますが、直近ピークアウトしています。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが16.45、PBRが1.47となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+0.9%で、こちらは3か月前より10.8ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.3%となり、日経平均の割高幅は400円から490円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、+400円から+690円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.34ポイントから3.34ポイントと横ばいでした。ドル円相場では、円高ドル安が一服しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
6月6日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数、4月貿易の収支、ECB理事会およびラガルド総裁の会見などのほか、ドキュサインなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを110円ほど上回り、下値は想定ラインを740円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ-100円(現在39120円近辺)が上値の目安に、25日線-300円(現在38290円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは、変動率の高まりを示す20を下回っています。また、信用の売り圧力は、やや弱まりました。日経平均は反発しましたが、個別銘柄は売りが優勢であり、買いは半導体関連株に偏っています。週末に控えている米雇用統計の発表までは、大きく動きづらい状態が続きそうです。
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