[市況]
10月19日、NYDowとNASDAQは下落しました。10月20日の日経平均先物は、前日比290円安で寄付くと、午前中は210円安から360円安の間でもみあい、午後は370円安から140円安の間で上下して、結局、230円安で取引を終了しました。日経平均の終値は250円安の27006円で、出来高は10.45億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を5日ぶりに上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、強まりました。
10月19日の米国市場では、長期金利の上昇を受けて株式の割高感が意識され、売りが優勢となりました。英国の9月の消費者物価指数(CPI)が高い伸びとなったことから、欧米の中銀が積極的な金融引き締を続けるとの観測が強まりました。一方で、市場予想を上回る決算を発表した銘柄には買いが入り、相場を下支えしました。NYDowとNASDAQは3日ぶりに反落しました。
10月20日の日本市場では、長期金利の上昇を背景に前日の米株式市場が下落した流れが引き継がれ、売りが優勢となりました。主要なアジアの株価指数や米株価指数先物が下落したことも重石となりました。一方で、「中国が感染症対策の緩和を検討している」との報道は支援材料となりました。日経平均は3日ぶりに反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は-2.5%とマイナスに転換し、200日線との乖離率も-0.9%とマイナスに転換しました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスとなり、中期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。
NYDowは、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドには赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+13.3ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が3590円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差も、+6.1ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が1650円ほど割高であることを示しています。
日経VIは23.98と上昇し、VIXも30.76と上昇しました。VIXは、不安心理が極めて高まっているとされる30を上回っています。日米市場のボラティリティーの差は縮小し、NYDowと比較して、日経平均の強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.8、米国-2.0と日本が5.8ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.49ポイント(日経平均換算で34070円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率0.6%減で、改定値の0.6%減から変化しませんでした。また、4~6月期の米企業の決算は、下方修正が目立ちました。
経済指標を見てみます。
9月の鉱工業生産指数、10月のミシガン大学消費者信頼感指数、9月の消費者物価指数、9月のISM非製造業景況指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、8月の耐久財受注は市場予想を上回りました。また、8月の製造業受注は市場予想と一致しました。一方、10月のニューヨーク連銀製造業景況指数、9月の小売売上高、9月のISM製造業景況指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比26.3万人増で、市場予想の27万人増をやや下回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.7%から改善されました。雇用は、景気面ではやや強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の新築住宅販売件数数、8月の中古住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、9月の住宅着工件数、10月の住宅市場指数、8月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を下回りました。7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+16.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、9月に0.75%と大幅利上げし、量的引き締めの検討を開始しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、10月14日 4.1937% → 10月17日 4.2265% → 10月18日 4.2425%と、ここ5年の最高値を連日で更新しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年10月18日に記録した4. 2425%がここ5年間の最高金利です。ただ、市場金利と比べ、今のところ、金融不安を示唆するほど上昇しているとは言えません。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.42、PBRが1.14となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.2ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+4.5%で、こちらは3か月前より3.9ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-4.0%となり、日経平均の割安幅は920円から1120円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1120円から-380円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.79ポイントから3.89ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には下降トレンドです。日経平均は、短期的には上昇トレンドで、中期的には下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
10月20日の米国市場では、週間の失業保険申請件数や9月の中古住宅販売件数のほか、ユニオン・パシフィックやフィリップ・モリス・インターナショナルなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、ほぼ想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを420円ほど下回り、下値は想定ラインを10円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ-200円(現在27410円近辺)が上値の目安に、25日線-200円(現在26790円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を5日ぶりに上回りました。日経VIは、不安心理がかなり高いとされる25を下回っています。日経平均は、200日移動平均線で跳ね返される形となりました。三角持ち合いを上下どちらにブレークするか、正念場となっています。
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