[市況]
10月13日、NYDowとNASDAQは下落しました。10月14日の日経平均先物は、前日比600円高で寄付くと、午前中は500円高から840円高と上昇幅を拡げ、午後は960円高から830円高の間でもみあって、結局、830円高で取引を終了しました。日経平均の終値は853円高の27090円で、出来高は13.19億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態となりました。
また、空売り比率は、5日平均を下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は弱まりました。
10月13日の米国市場では、9月の消費者物価指数(CPI)のコア指数が市場予想を上回ったことを受けて売りが先行しましたが、大幅利上げ観測で上昇した長期金利が水準を切り下げると、買い戻しや値ごろ感を意識した買いが優勢となりました。主要企業の決算への期待感や、英政府が減税政策の見直しを議論しているとの報道も追い風となりました。結局、主要3指数はそろって大幅に上昇しました。
10月14日の日本市場では、9月の米CPIの発表を通過し、前日の米株式市場が大幅に上昇した流れが引き継がれ、短期筋の買い戻しが膨らみました。外国為替市場で円安ドル高が進んだことや、香港などアジア株が大幅に上昇したことも支援材料となりました。日経平均は5営業日ぶりに大幅に反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にありますが、9日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。
総合乖離率は-2.2%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-0.6%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドには赤信号が点灯しています。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、25日線と200日線の下にありますが、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。中期トレンドには赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+14.5ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が3930円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は、+7.9ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が2140円ほど割高であることを示しています。
日経VIは24.69と低下し、VIXも31.94と低下しました。日経VIは、不安心理がかなり高まっているとされる25を下回りました。日米市場のボラティリティーの差は拡大し、NYDowと比較して、日経平均の強さも拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.7、米国-2.2と日本が5.5ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.16ポイント(日経平均換算で29780円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率0.6%減で、改定値の0.6%減から変化しませんでした。また、4~6月期の米企業の決算は、下方修正が目立ちました。
経済指標を見てみます。
9月の消費者物価指数、9月のISM非製造業景況指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、8月の耐久財受注、8月の小売売上高、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。また、8月の製造業受注は市場予想と一致しました。一方、9月のISM製造業景況指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の鉱工業生産指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比26.3万人増で、市場予想の27万人増をやや下回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.7%から改善されました。雇用は、景気面ではやや強気材料ですが、利上げペースが早まるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の新築住宅販売件数数、8月の中古住宅販売件数、8月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、8月の中古住宅販売仮契約指数、9月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+16.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、9月に0.75%と大幅利上げし、量的引き締めの検討を開始しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、10月10日 3.9191% → 10月11日 3.9407% → 10月12日 4.0108%と、ここ5年の最高値を連日で更新しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年10月12日に記録した4.0108%がここ5年間の最高金利です。ただ、市場金利と比べ、今のところ、金融不安を示唆するほど上昇しているとは言えません。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.59、PBRが1.16となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.2ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+5.0%で、こちらは3か月前より4.6ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.4%となり、日経平均の割安幅は360円から380円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-380円から+60円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.67ポイントから3.69ポイントに拡大し、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には下降トレンドです。日経平均も、短期的にはもみあいで、中期的には下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
10月14日の米国市場では、9月の小売売上高や、10月のミシガン大学消費者信頼感指数のほか、ウェルズ・ファーゴ、モルガン・スタンレー、シティグループ、ユナイテッドヘルス・グループなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを590円ほど上回り、下値は想定ラインを560円ほど上回りました。目先は、25日線+300円(現在27450円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+400円(現在26790円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を下回り、信用の売り圧力は弱まりました。また、日経VIは、不安心理がかなり高いとされる25を下回りました。日経平均は、昨日が二番底だったようです。10月6日の高値(27399円)を上回るかどうかが、次の注目点です。
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