[市況]
9月30日、NYDowとNASDAQは下落しました。10月3日の日経平均先物は、前日比160円安で寄付くと、午前中は400円安から130円高と上昇に転じ、午後は0円高から240円高と上昇幅を拡げて、結局、220円高で取引を終了しました。日経平均の終値は278円高の26215円で、出来高は12.69億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。
また、空売り比率は、5日平均を3日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、やや低下したものの、かなり強い状態です。
9月30日の米国市場では、8月の個人消費支出の物価指数で、コア指数の伸びが前月比で加速したことから、インフレの高止まりが警戒され、売りが優勢となりました。また、金融引き締めが景気を冷やし企業収益を圧迫するとの見方も引き続き重石となりました。NYDowとNASDAQは続落しました。
10月3日の日本市場では、前週末の米株安を受けて売りが先行しましたが、売り一巡後は短期的な売られ過ぎを意識した買い優勢となりました。ただ、新たな材料は乏しく、午後は上値の重い展開となりました。円相場の不安定な動きも警戒されました。日経平均は反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-13.1%と前週末よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-4.1%と前週末よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには赤信号が点灯しています。中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+13.0ポイントと前週末よりプラス幅を拡げ、日経平均が3410円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は、+9.2ポイントと前週末よりプラス幅を拡げ、日経平均が2410円ほど割高であることを示しています。
日経VIは26.28とやや低下し、VIXも31.62とやや低下しました。日経VIは、不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っています。また、VIXは、不安心理が極めて高いとされる30を上回っています。日米市場のボラティリティーの差は縮小しましたが、NYDowと比較して、日経平均の強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-8.1、米国-2.4と日本が5.7ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.36ポイント(日経平均換算で29210円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率0.6%減で、改定値の0.6%減と変わりませんでした。また、4~6月期の米企業の決算は、下方修正が目立ちました。
経済指標を見てみます。
9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、8月の耐久財受注、8月の小売売上高、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数、8月の消費者物価指数、8月のISM非製造業景況指数、8月のISM製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の鉱工業生産指数、7月の製造業受注は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の8月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比31.5万人増で、市場予想の30万人増をやや上回りました。また、失業率は3.7%で、先月の3.5%から悪化しました。雇用は、景気面ではやや弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の新築住宅販売件数数、8月の中古住宅販売件数、8月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、8月の中古住宅販売仮契約指数、9月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+16.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.5%利上げし、マイナス金利と量的緩和策を終了しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、9月28日 3.6741% → 9月29日 3.7428% → 9月30日 3.7547%と、ここ5年の最高値を連日で更新しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年9月30日に記録した3.7547%がここ5年間の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.08、PBRが1.10となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+4.6%で、こちらは3か月前より4.4ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.5%となり、日経平均は200円の割安から410円の割高に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-320円から+410円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.54ポイントから3.54ポイントと横ばいでした。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に下降トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
10月3日の米国市場では、ノーベル医学生理学賞の発表や、9月のISM製造業景況指数などが注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを200円ほど下回り、下値は想定ラインを420円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ(現在26720円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ(現在25950円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を3日連続で下回りましたが、売り圧力はかなり強い状態です。また、日経VIは、前週より低下したものの、不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っています。日経平均はリバウンドしました。強い陽線となったので、リバウンドの継続が期待できそうです。
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