[市況]
10月10日、NYDowとNASDAQは下落しました。10月11日の日経平均先物は、前週末比400円安で寄付くと、午前中は380円安から670円安と下落幅を拡げ、午後は620円安から740円安の間でもみあって、結局、670円安で取引を終了しました。日経平均の終値は714円安の26401円で、出来高は12.96億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を8日ぶりに上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり強まりました。
10月10日の米国市場では、前週末の下落の反動で、短期的な戻りを期待した買いが優勢となる場面もありましたが、金融引き締めへの警戒感は根強く、結局は売りが勝りました。景気が減速し企業収益が悪化するとの懸念も投資家心理の重石となりました。9月の消費者物価指数(CPI)など重要な経済指標や主要企業の決算発表を間近に控え、様子見ムードも広がりやすい環境でした。NYDowは4日続落しました。NASDAQも4日続落し、年初来安値を更新しました。
10月11日の日本市場では、米金融引き締めが世界景気を冷やすとの見方から、売りが優勢となりました。米政権による中国への半導体輸出の規制強化を受け、半導体関連株が目立って売られました。アジア株安も投資家心理の重石となりました。経済再開の恩恵を受けやすい銘柄は買われましたが、インバウンド需要の回復は不透明であり、上値では利益確定の売りに押されました。日経平均は大幅に続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にあり、9日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。
総合乖離率は-10.3%と前週末よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-3.3%と前週末よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには赤信号が点灯しています。中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+13.1ポイントと前週末よりプラス幅を拡げ、日経平均が3460円ほど割高であることを示しています。一方、NYDowとの差は、+8.1ポイントと前週末よりプラス幅を縮め、日経平均が2140円ほど割高であることを示しています。
日経VIは25.97と上昇し、VIXも32.45と上昇しました。日経VIは、不安心理がかなり高まっているとされる25を上回りました。日米市場のボラティリティーの差は縮小し、NYDowと比較して、日経平均の強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-8.0、米国-2.1と日本が5.9ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.47ポイント(日経平均換算で31700円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率0.6%減で、改定値の0.6%減から変化しませんでした。また、4~6月期の米企業の決算は、下方修正が目立ちました。
経済指標を見てみます。
9月のISM非製造業景況指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、8月の耐久財受注、8月の小売売上高、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数、8月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。また、8月の製造業受注は市場予想と一致しました。一方、9月のISM製造業景況指数、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の鉱工業生産指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比26.3万人増で、市場予想の27万人増をやや下回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.7%から改善されました。雇用は、景気面ではやや強気材料ですが、利上げペースが早まるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の新築住宅販売件数数、8月の中古住宅販売件数、8月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、8月の中古住宅販売仮契約指数、9月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+16.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、9月に0.75%と大幅利上げし、量的引き締めの検討を開始しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、10月5日 3.7840% → 10月6日 3.8257% → 10月7日 3.9087%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年10月7日に記録した3.9087%がここ5年間の最高金利です。ただ、市場金利と比べ、今のところ、金融不安を示唆するほど上昇しているとは言えません。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.20、PBRが1.12となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.2ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+4.5%で、こちらは3か月前より3.8ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.2%となり、日経平均の割高幅は210円から60円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+0円から+210円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.60ポイントから3.75ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に下降トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
10月11日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを720円ほど下回り、下値は想定ラインを380円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ+300円(現在26850円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ+300円(現在26120円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を8日ぶりに上回りました。また、日経VIは、不安心理がかなり高いとされる25を上回りました。きょうの日経平均は大幅に続落しました。米PPIや米CPIなど、週内に発表される重要な経済指標次第ですが、当面は二番底を探る展開となりそうです。
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