[市況]
28日のNYDowとNASDAQは下落しました。29日の日経平均先物は、前日比70円安で寄り付き、午前中は90円安から10円安の値幅の動きでした。午後は中盤から急に戻す動きとなり、最終的に70円高で取引を終わりました。日経平均は19円安で引け、出来高は29.2億株と高水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、130万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅が縮小しました。個別銘柄に関してはやや「買い」が有利な状況です。
28日の米国市場では、朝方発表の2月の個人消費支出が前月比で0.7%増加となり、市場予想をやや上回ったことで、個人消費の回復基調を好感し、NYDowの上昇幅は一時50ドルまで拡大しました。しかし、不安定な状況が続く北アフリカ・中東情勢など先行きが不透明な要因も多く、取引終了にかけて目先の利益確定売りが優勢となり株価指数はマイナスで終了しました。
29の日本市場では、朝方は、福島原発の敷地内からプルトニウムが検出されたことなどが嫌気されて売りが先行する展開になりました。ただ、売り一巡後は、押し目狙いで下げ渋り、後場入り後は、先物に断続的な買いが入ったことで一気に切り返す展開となりました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線の下に在りますが、9日線の上に在ります。短期トレンドは黄信号が点灯しています。総合乖離率は-17.3%とマイナス幅は変わりませんでした。200日線との乖離率は-3.7%とマイナス幅が拡がりました。日経平均は一目均衡表の雲の下に在ります。3つの要素がマイナスですので、中期的トレンドは赤信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線の上に在りますが、25日線、200日線の下に在ります。
NYDowは、200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表では雲の上に在ります。
NASDAQは、200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表では雲の中に在ります。米国市場の短期トレンドは青信号が点灯しています。中期トレンドは黄信号が点灯しています。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が13.5ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は 0.4ポイント縮まりました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差と予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 1.2ポイント割安となっています。
市場は現在、「東日本巨大地震災害」、「中東/北アフリカ情勢と原油価格」、「米国の景気と雇用状況と住宅市況」、「欧州の財政赤字による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を実行中です。米国の10-12月期のGDPは年率で3.1%でした。10-12月期の主要企業の決算発表内容は概ね好調です。経済指標では、2月の個人消費支出、3月のフィラデルフィア連銀景気指数、3月のNY連銀製造業景気指数、2月のISM非製造業景況感指数、2月の既存店売上高、2月のISM製造業景況感指数、などは市場予想を上回りましたが、2月の耐久財受注、1月の小売売上高は予想以下となりました。2月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が192000人増と市場予想より小幅な伸びでしたが、失業率は9.0%から8.9%と前月から改善しました。一方、住宅関連では、2月の新築住宅販売件数が過去最低を更新し、2月の中古住宅販売件数は、前月比9.6%減と予想以下となり、2月の住宅着工件数が2ヶ月連続で大幅に減少し、市場予測も下回わりました。12月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で-2.38%と予想内であったもののマイナスでした。9月以降の景気関連の経済指標は改善傾向で、雇用もゆるやかに改善傾向ながら、住宅関連の回復は鈍く金融緩和解除の足かせとなっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを初めとする欧州各国の財政赤字拡大が金融システム不安再燃の懸念を生んでいます。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、FRBの低金利政策と大幅なドル供給策は継続され、相場の支援材料となっていますが、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。引き続き、金融機関間の金利、株価の推移や企業業績の推移に留意することが肝要です。
ちなみに、金融不安の指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は03月24日 0.3085% → 03月25日 0.3075% → 03月28日 0.3070%となり低水準で横ばい傾向です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%は下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
シティグループの株価は28日、下落しました。(一昨年1月高値7.59ドル・一昨年3月安値1.02ドルに対し、現在4.43ドル)。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが14.4、PBRが1.12、ROEが7.8%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの下落にも関わらず実質的に上昇しました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-5.4%となり、日経平均は540円の割安で、割安幅が縮まりました。プレミアム値は、ここ一週間、-750円 ~ -430円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて弱い動きが続いています。今日は弱い動きが縮小しました。
米国市場は、中期揉み合いで、短期は上昇トレンドです。一方、日経平均は中期下降トレンドで、短期は揉み合いです。
日経平均を中長期的に見ると、テクニカルには米国市場に比べて割安で、ファンダメンタルにも割安です。
LIBORのドル3ヶ月物金利は低水準で、欧州財政問題が金融不安に発展する気配とは言えない水準です。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は2.22%とやや拡がったものの、為替はやや円高方向となっています。一方、米国市場は利食い売りで下落しました。今夜の米国市場は、1月のS&Pケース・シラー住宅価格指数、3月のコンファレンスボード消費者信頼感指数などの経済指標が注目されそうです。
ここからは、原発問題の影響や米市場をにらみながら、為替と外人投資家の動向が鍵となりそうです。日本市場は原発の安定冷却と放射能汚染の拡大懸念と電力供給問題に一喜一憂しています。一方、為替は膠着した動きに戻りました。米国市場の動きは改善しつつありますが、日経平均はいずれ、震災の企業業績に与える影響やGDP低下懸念も問題となり、二番底を探る動きとなりそうです。その場合、9000円近辺が次の目安となりそうです。ただ、震災復興関連銘柄の循環物色が下支えとなることも考えられますので目先は、9300円と9550円の間で揉み合う展開が続きそうです。ただ、9300円を割ると9000円に向かいそうです。
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