[市況]
10日のNYDowとNASDAQは大幅下落しました。11日の日経平均先物は、前日比160円安で寄り付き、午前中は徐々に安値を切り下げる動きとなりました。午後は戻り歩調でしたが、引けにかけて急落し、最終的に270円安で取引を終わりました。日経平均は179円安で引け、出来高は31.5億株と高水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、770万株の売り越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅が拡大しました。個別銘柄に関しては「売り」が有利な状況です。
10日の米国市では、中国の貿易収支が輸出の鈍化により赤字になったことで、景気が減速するとの懸念のほか、欧州の財政への警戒感が改めて強まったことや、雇用関連の指標の悪化も響き、NYDowは節目の12000ドルを割り込みました。
11日の日本市場では、米国市場の大幅安で、朝方から大幅に下げて推移しました。午後2時半過ぎに東北地方で大型の地震が発生し、リスクを回避するために株式は売りの対象になりました。先物には売りが出て、日経平均も連れ安し引けにかけて下げ幅を拡大しました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線、9日線の下に在ります。短期トレンドは赤信号が点灯しています。総合乖離率は-0.7%とマイナス転換しました200日線との乖離率は+4.2%とプラス幅は縮まりました。日経平均は一目均衡表の雲の中に在ります。1つの要素がプラスですので、中期的トレンドは青信号から黄信号に変わりました。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。
NYDowは、200日線の上に在りますが、25日線、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。
NASDAQは、200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表では雲の中に在ります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。
テクニカルな指標である、日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が5.5ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は 0.3ポイント縮まりました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差と予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 1.3ポイント割高となっています。
市場は現在、「中東/北アフリカ情勢と原油価格」、「米国の景気と雇用状況と住宅市況」、「欧州の財政赤字による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を実行中です。米国の10-12月期のGDPは年率で3.2%増加しましたが、市場予想以下でした。10-12月期の主要企業の決算発表内容は概ね好調です。経済指標では、2月のISM非製造業景況感指数、2月の既存店売上高、2月のISM製造業景況感指数、2月のフィラデルフィア連銀指数、2月のミシガン大学消費者態度指数、などは市場予想を上回りましたが、1月の小売売上高、12月の耐久財受注は予想以下となりました。2月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が192000人増と市場予想より小幅な伸びでしたが、失業率は9.0%から8.9%と前月から改善しました。一方、住宅関連では、1月の中古住宅販売件数は市場予想に反して増加し、1月の住宅着工件数が前月から大幅増となりましたが、1月の新築一戸建て住宅販売件数は前月比12.6%減り、市場予測も下回わりました。12月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で-2.38%と予想内であったもののマイナスでした。9月以降の景気関連の経済指標は改善傾向で、雇用もゆるやかに改善傾向ながら、住宅関連の回復は鈍く金融緩和解除の足かせとなっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを初めとする欧州各国の財政赤字拡大が金融システム不安再燃の懸念を生んでいます。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、FRBの低金利政策と大幅なドル供給策は継続され、相場の支援材料となっていますが、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。引き続き、金融機関間の金利、株価の推移や企業業績の推移に留意することが肝要です。
ちなみに、金融不安の指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は03月08日 0.3095% → 03月09日 0.3095% → 03月10日 0.3095%となり低水準で横ばい傾向です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%は下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
シティグループの株価は10日、下落しました。(一昨年1月高値7.59ドル・一昨年3月安値1.02ドルに対し、現在4.54ドル)。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが15.6、PBRが1.21、ROEが7.7%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの下落率以上に下げました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.7%となり、日経平均は290円の割安で、割安幅が拡がりました。プレミアム値は、ここ一週間、-300円 ~ +40円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて弱い動きですが、今日は弱い動きが加速しました。
米国市場は、中期上昇トレンドで、短期は下降トレンドです。一方、日経平均は中期横ばい傾向で、短期は下降トレンドです。
日経平均を中長期的に見ると、テクニカルには米国市場に比べて割安で、ファンダメンタルには割高です。短期的には、地震による被害、中東・北アフリカ情勢、為替の変化、欧州財政問題、米経済指標、上海市場の動きに左右される相場が続きそうです。日経平均の上昇の為には、今後も円安方向への動きや米国市場の一段高などの支援材料が前提条件として必要と思われます。
LIBORのドル3ヶ月物金利は低水準で、欧州財政問題が金融不安に発展する気配とは言えない水準です。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は2.09%と縮まったものの、為替は一時的に円安に振れました。一方、米国市場では、中国の輸出の減少と貿易赤字が悪材料となり、リビア情勢に伴い原油高が足かせとなっています。今夜の米国市場は、2月の小売売上高、3月のミシガン大学消費者信頼感指数などの経済指標や、原油相場が注目されそうです。
ここからは、地震による被害、中東・北アフリカ情勢や米市場をにらみながら、為替と外人投資家の動向が鍵となりそうです。日本市場は2月1日の窓埋めとなる10300円前後で推移していましたが、地震の発生に反応して一段下げとなりました。目先は、地震による被害の影響が大きそうですので、売り圧力が強そうですが、次の注目点は一目均衡表の雲の下に抜けるか否かです。
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