[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、製造業関連、消費関連経済指標や雇用統計の改善などで、週間では上昇しました。一方、中長期的には、先進国の消費や雇用の改善の動きは弱く、欧州の財政問題や金融改革法案成立の影響による信用収縮傾向と、先進国の緊縮財政が景気後退懸念を生み、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性があります。
2010年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は日本市場が0.1ポイント割高となっています。日本市場は主要企業の収益力が回復してきたこととOECDのGDP予想値の改訂で割高感が薄まりましたが、民主党代表選挙開始以来、日本の長期金利が上昇ぎみとなり、割高になりつつあります。これが、円高の原因の一つとなっています。日経平均のPERは15.9とかなり改善しましたが、S&P500のPERの12.9と比べると、企業のファンダメンタルに、まだ差が有ります。長期金利差でこれを埋める形です。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2010年GDP予測値(現在+1.8%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①先週の米国市場は上昇しました。NYDowとNASDAQは一目均衡表の雲の上に抜けました。今週は8月高値を伺う動きが期待されます。
②日経225採用銘柄の今期予想増益率は75%となり、今期ROE予想値は4.3%から6.9%へ改善しています。
③米国の長期金利が低下し、日米の金利差は1.5%-1.6%で推移し、為替は83から85円台の動きでした。今週は、83から85円台が想定されます。
④今年5月に更新された、OECDによる日米の2010年の実質GDP伸び率は日本が+3.0%で、米国は+3.2%と予想されていますので、この面では日本市場にとって0.2ポイント分の弱気材料です。
⑤8月4週の外人は売り越しでした。9月1週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。
5つのポイントのうち①⑤が強気材料で③が弱気材料でした。今週も引き続き、①③⑤と米国経済指標発表が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、7.9ポイント割安となり、先週比2.1ポイント割安幅が拡大しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。200日移動平均線乖離率は-9.7%となり先週と比較してマイナス幅が縮まりました。総合乖離率は-15.2%となりマイナス幅は縮まりました。3つがマイナスですので中期上昇トレンドは、"赤信号"が点灯しています。日経平均は25日線の下に在りますが、9日線の上に在りますので、短期的には"黄信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線の下に在りますが、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは、200日線の下に在りますが、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には青信号"で中期的には"黄信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場は中期的なトレンドが上昇に転換しつつありますが、日本市場は、下降トレンドがまだ続いています。株価は半年以上先の景気後退を暗示している面がありますので、200日線を下回る動きが続いている間は、景気後退懸念から、株価低迷が続くと考えておくことが無難と思われますが、米国市場に脱却の兆しが見え始めました。また、LIBORのドル3ヶ月物金利は低下傾向で、ギリシャ・ショック以前に戻り、金融不安は無くなりつつあります。しかし、先進国の緊縮財政志向による需要不足から景気後退懸念を生んでおり、8月は米国の景気指標の悪化も重なって、市場の悪材料となっていました。ただ、先週の経済指標は改善傾向でした。その結果、米国市場はNYDow、NASDAQともに200線に接近してきましたが、日経平均は、200日線とは、まだ980円ぐらいのマイナス乖離があります。今週の米国市場は、地区連銀経済報告、7月の貿易収支、7月のOECD景気先行指数などが株価に影響を与えそうです。今週の米国市場は、急ピッチの上昇から利食いが出やすい環境ですが、上昇トレンドは続きそうです。日本市場は、政府や日銀の円高対応策が功を奏さず、円高推移が続きそうですので、米国市場よりは物足りない動きも予想されますが、少なくとも25日線(9260円近辺)を超えるレベルまでの上昇が期待できそうです。
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