[市況]
4月21日、NYDowとNADSAQは小幅上昇しました。4月24日の日経平均先物は、前日比70円高で寄り付くと、午前中は0円高から120円高の間でもみあい、午後は80円高から10円安と一時下落に転じて、結局、30円高で取引を終了しました。日経平均の終値は29円高の28593円で、出来高は8.27億株と比較的低水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
空売り比率は5日平均を下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱まりました。
4月21日の米国市場では、1~3月期決算で売上高が市場予想を上回ったP&Gが3%高となり、相場を支えました。一方、4月の製造業PMIが市場予想を上回ったことから、金融引き締めが長期化し景気が悪化するとの懸念が強まり、売りが優勢となる場面もありました。大手ハイテク企業の決算発表が来週に控えていることもあり、積極的に持ち高を傾ける動きは限定的でした。結局、NYDowは4日ぶりに小幅に反発し、NASDAQも小幅に反発しました。
4月24日の日本市場では、主要企業の決算発表や日銀の金融政策決定会合を前に様子見ムードが強まるなか、景気や金融政策の影響を受けにくいとされる医薬品株が買われました。大型連休を意識した空運、陸運株への買いも目立ちました。一方、海運株や半導体関連株は売られ、相場の重石となりました。結局、日経平均は小幅に反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+10.2%とプラス幅をやや縮め、200日線との乖離率は+4.0%と前週末比横ばいでした。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の上にあります。
NYDowは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上あります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドには青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は-1.3ポイントとマイナス幅をやや拡げ、日経平均が370円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は+0.4ポイントとややプラス幅を縮め、日経平均が110円ほど割高であることを示しています。
日経VIは16.35と上昇し、VIXは16.77と低下しました。両指数ともに、不安心理の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態ですが、前週末より強さはやや縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-6.9、米国-1.7と日本が5.2ポイント割安ですが、OECDの2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.5、米国が+3.5)は1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.08ポイント(日経平均換算で36190円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP確定値は前期比年率2.6%増で、改定値の2.7%増から下方修正されました。一方、10~12月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
4月のニューヨーク連銀製造業景況指数、3月の鉱工業生産指数、4月のミシガン大学消費者信頼感指数、3月のシカゴ購買部協会景気指数、3月のコンファレンスボード消費者信頼感指は市場予想を上回りました。一方、4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数数、3月の小売売上高、3月の消費者物価指数、3月のISM非製造業景況指数、2月の製造業受注、3月のISM製造業景況指数、2月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標は5勝7負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です。
米国の3月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比23.6万人増で、市場予想の23.0万人増をやや上回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.6%から改善されました。雇用は、景気面ではやや強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面ではやや弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
3月の住宅着工件数、4月の住宅市場指数、2月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、3月の中古住宅販売件数、2月の新築住宅販売件数数は予想を下回りました。1月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+2.5%で、市場予想と一致しました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2023年5月まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、3月の理事会で3回連続となる0.5%の利上げを決定しました。また、6月にかけて保有資産を150億ユーロ規模で削減する方針です。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、22年12月の金融政策決定会合で、長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.5%に拡大することを決めました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では4月19日 5.2614% → 4月20日 5.2727% → 4月21日 5.2551%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年4月20日に記録した5.2727%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.68、PBRが1.22となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+3.1%で、こちらは3か月前より2.3ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.6%となり、日経平均の割安幅は80円から190円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-360円から-80円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.06ポイントから3.09ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBは量的緩和政策を終了し、量的引き締めの検討を開始しています。
4月24日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。コカコーラなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを150円ほど下回り、下値は想定ラインを320円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ-100円(現在28840円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-200円(現在28250円近辺)が下値の目安になりそうです。
信用の売り圧力は、かなり弱まりました。また、日米市場の不安心理は後退しています。きょうの日経平均は小幅に反発しました。ここからは、主要企業の今期業績見通しに左右される相場となりそうです。
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