[市況]
7月11日、NYDowとNASDAQは下落しました。7月12日の日経平均先物は、前日比20円安で寄付くと、午前中は30円高から390円安と下落幅を拡げ、午後は400円安から330円安の間でもみあって、結局、370円安で取引を終了しました。日経平均の終値は475円安の26336円で、出来高は10.61億株と比較的高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり強まりました。
7月11日の米国市場では、中国当局が防疫措置の名目で行動規制を強化していることや、ロシアがドイツへの天然ガスの供給を停止する観測が強まっていることなどを受け、世界景気の先行きに対する警戒感が高まり、幅広い銘柄に売りが膨らみました。OECDが11日に発表した6月の景気先行指数で、世界経済の減速が示されたことも投資家心理を冷やしました。NYDowは続落し、NASDAQは6営業日ぶりに反落しました。
7月12日の日本市場では、前日の米株式市場で主要3指数がそろって下落した流れが引き継がれ、幅広い銘柄にリスク回避の売りが膨らみました。香港市場でハンセンテック指数が大幅に下落したことも嫌気され、ハイテク関連株の売りにつながりました。日経平均は4営業日ぶりに反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線を下回りました。短期トレンドは青信号から赤信号に変わりました。
総合乖離率は-8.1%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-4.9%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。
NYDowは、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドには赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+12.6ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が3320円ほど割高であることを示しています。一方、NYDowとの差は、+3.9ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が1030円ほど割高であることを示しています。
日経VIは23.15、VIXは26.17と、日本市場のボラティリティーは上昇し、米国市場のボラティリティーは低下しました。VIXは、投資家の不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っています。NYDowと比較して、日経平均は強い状態が続いていますが、前日より強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.6、米国-3.0と日本が4.6ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.23ポイント(日経平均換算で18480円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP確定値は前期比年率1.6%減で、改定値の1.5%減を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、まちまちでした。
経済指標を見てみます。
6月のISM非製造業景況指数、5月の製造業受注、5月の耐久財受注、5月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。一方、6月のISM製造業景況指数、6月のシカゴ購買部協会景気指数、6月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、6月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月の鉱工業生産指数、6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月の小売売上高、6月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は4勝8負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが速まらないという面では強気材料です。
米国の6月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比37.2万人増で、市場予想の25万人増を上回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%から横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
5月の中古住宅販売仮契約指、5月の新築住宅販売件数数、5月の中古住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、5月の住宅着工件数、6月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+21.2%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに5回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.25%利上げし、量的緩和策を終了させることを決定しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、7月6日 2.3905% → 7月7日 2.4275% → 7月8日 2.4230%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.77、PBRが1.15となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.3ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+0.8%で、こちらは3か月前より28.8ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-3.0%となり、日経平均の割安幅は570円から830円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-830円から-330円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.83ポイントから2.73ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には上昇トレンドで、中期的には下降トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
7月12日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを430円ほど下回り、下値は想定ラインを140円ほど下回りました。目先は、25日線+100円(現在26720円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在25980円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を上回り、信用の売り圧力はかなり強まりました。VIXは、投資家の不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っています。日経平均は、本格的な上昇とはならず、大幅に反落しました。7月1日の安値(25842円)を下回るかどうかが、次の注目点です。
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