[市況]
6月30日、NYDowは上昇し、NASDAQは小幅下落しました。7月1日の日経平均先物は、前日比20円安で寄付くと、午前中は190円高まで上昇したのち300円安まで下落幅を拡げ、午後は250円安から500円安と下落幅を拡げて、結局、480円安で取引を終了しました。日経平均の終値は457円安の25935円で、出来高は13.50億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態となりました。
また、空売り比率は、5日平均を3日連続で上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり強まりました。
6月30日の米国市場では、5月の個人消費支出で消費の弱さが示されたことから、景気減速への懸念が強まり、景気敏感株を中心に売りが広がりました。一方、四半期末とあって、機関投資家の資産配分見直しに伴う資金が流入するとの期待は相場を下支えしました。結局、NYDowは反落し、NASDAQは4日続落しました。1~6月期のNYDowの下落率は60年ぶりの大きさとなっています。
7月1日の日本市場では、グロース(成長)株や内需株に買いが先行しましたが、買い一巡後は、世界的な景気減速への懸念から、自動車や半導体関連など景気敏感株を中心に売りが出て相場を押し下げました。取引時間中に米株価指数先物が下げ幅を拡げたことも投資家心理の重石となりました。日経平均は3日続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-14.2%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-6.8%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+13.8ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が3580円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差も、+3.5ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が910円ほど割高であることを示しています。
日経VIは24.34、VIXは28.71と、日米市場のボラティリティーは上昇しました。VIXは、投資家の不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っています。NYDowと比較して、日経平均は強い状態が続いていますが、前日より強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.8、米国-3.0と日本が4.8ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.48ポイント(日経平均換算で20070円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP確定値は前期比年率1.6%減で、改定値の1.5%減を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、まちまちでした。
経済指標を見てみます。
5月の耐久財受注、5月の消費者物価指数、5月のISM製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、6月のシカゴ購買部協会景気指数、6月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、6月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月の鉱工業生産指数、6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月の小売売上高、6月のニューヨーク連銀製造業景況指数、5月のISM非製造業景況指数、4月の製造業受注は市場予想を下回りました。経済指標は3勝9負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが速まらないという面では強気材料です。
米国の5月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比39.0万人増で、市場予想の31.8万人増を上回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%から横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
5月の中古住宅販売仮契約指、5月の新築住宅販売件数数、5月の中古住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、5月の住宅着工件数、6月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+21.2%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに5回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.25%利上げし、量的緩和策を終了させることを決定しました。日銀は、金融緩和政策を継続しています。2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、6月27日 2.2315% → 6月28日 2.2504% → 6月29日 2.2771%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.53、PBRが1.13となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.2ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+0.4%で、こちらは3か月前より28.9ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.7%となり、日経平均の割安幅は800円から740円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-800円から-280円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.86ポイントから2.74ポイントに縮小し、ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に下降トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
7月1日の米国市場では、6月のISM製造業景気指数などが注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを220円ほど下回り、下値は想定ラインを160円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ+200円(現在26400円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ+200円(現在25660円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を3日連続で上回り、信用の売り圧力は、かなり強まりました。VIXは、投資家の不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っています。日経平均は、大幅に続落しました。ボリンジャーバンド-2σまでの下落は想定しておく必要がありそうです。
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