[市況]
7月1日、NYDowとNASDAQは上昇しました。7月4日の日経平均先物は、前日比350円高で寄付くと、午前中は410円高から90円高の間で上下し、午後は180円高から340円高と上昇幅を拡げて、結局、350円高で取引を終了しました。日経平均の終値は218円高の26153円で、出来高は10.98億株と比較的高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態となりました。
また、空売り比率は、5日平均を4日ぶりに下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、弱まりました。
7月1日の米国市場では、長期金利が一時2.79%と1か月ぶりの水準に低下したことを受け、高PERのハイテク株の一角に買いが入りました。また、景気動向に業績が左右されにくいディフェンシブ株の上昇も目立ちました。3連休を前に、足元で売られていた景気敏感株の一角も買い直されました。主要3指数はそろって上昇しました。
7月4日の日本市場では、前週末の米株式市場でハイテク株を中心に買いが優勢となったことが投資家心理を上向かせ、高PERのグロース(成長)株のほか、自動車株や機械株など幅広い銘柄に買いが入りました。先週の急ピッチな株安の反動で、自律反発狙いの買いや売り方の買い戻しも入りやすかったようです。ただ、4日の米国市場が休場とあって市場参加者は少なく、上値追いの勢いは限定的でした。日経平均は4営業日ぶりに反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-11.6%と前週末よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-6.0%と前週末よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、25日線と200日線の下にありますが、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。中期トレンドには赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+13.8ポイントと前週末比横ばいで、日経平均が3610円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は、+3.3ポイントと前週末よりプラス幅を縮め、日経平均が860円ほど割高であることを示しています。
日経VIは23.52、VIXは26.70と、日米市場のボラティリティーは低下しました。VIXは、投資家の不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っていますが、低下傾向にあります。NYDowと比較して、日経平均は強い状態が続いていますが、前週末より強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.7、米国-3.1と日本が4.6ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.23ポイント(日経平均換算で18110円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP確定値は前期比年率1.6%減で、改定値の1.5%減を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、まちまちでした。
経済指標を見てみます。
5月の耐久財受注、5月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。一方、6月のISM製造業景況指数、6月のシカゴ購買部協会景気指数、6月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、6月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月の鉱工業生産指数、6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月の小売売上高、6月のニューヨーク連銀製造業景況指数、5月のISM非製造業景況指数、4月の製造業受注は市場予想を下回りました。経済指標は2勝10負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが速まらないという面では強気材料です。
米国の5月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比39.0万人増で、市場予想の31.8万人増を上回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%から横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
5月の中古住宅販売仮契約指、5月の新築住宅販売件数数、5月の中古住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、5月の住宅着工件数、6月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+21.2%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに5回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.25%利上げし、量的緩和策を終了させることを決定しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、6月29日 2.2771% → 6月30日 2.2851% → 7月1日 2.2928%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.68、PBRが1.14となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.3ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+0.2%で、こちらは3か月前より29.3ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.5%となり、日経平均の割安幅は740円から680円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-800円から-280円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.74ポイントから2.59ポイントに縮小しました。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には下降トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
7月4日の米国は独立記念日の祝日で、米国市場は休場です。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを80円ほど下回り、下値は想定ラインを360円ほど上回りました。目先は、25日線-300円(現在26600円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ-300円(現在25840円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を4日ぶりに下回り、信用の売り圧力は弱まりました。VIXは、投資家の不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っているものの、低下傾向にあります。きょうの日経平均は反発しましたが、戻りの勢いは弱く、下落傾向が止まったとは言い難い状況です。
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