[市況]
7月28、NYDowとNASDAQは上昇しました。7月29日の日経平均先物は、前日比160円高で寄付くと、午前中は190円高から30円高の間でもみあい、午後は140円高から100円安と下落に転じて、結局、60円安で取引を終了しました。日経平均の終値は13円安の27801円で、出来高は12.94億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を5日ぶりに下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、弱まりました。
7月28日の米国市場では、朝方発表の2022年4~6月期の実質GDP速報値が2四半期連続のマイナス成長となったことから、景気悪化を受けてFRBが利上げペースを緩めるとの期待が強まり、幅広い銘柄に買いが向かいました。また、長期金利の低下を受け、相対的な割高感の薄れた高PERのハイテク株が買われました。NYDowとNASDAQは続伸しました。
7月29日の日本市場では、前日の米株高を手がかりに買いが先行しましたが、日経平均が心理的な節目の2万8000円に近付くと戻り待ちの売りや利益確定の売りが出て、相場の上値を抑えました。午後に入ると、外国為替市場で円相場が円高ドル安方向に推移したことが重石となり、日経平均はマイナスに転じました。ただ、グロース(成長)株には買いが入り、相場の下値は限定的でした。日経平均は3日ぶりに反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+7.5%と前日よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率は+0.9%と前日比で横ばいでした。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。
NYDowは、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。NASDAQは、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+11.3ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が3140円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は、+5.2ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が1450円ほど割高であることを示しています。
日経VIは18.93、VIXは21.89と、日米市場のボラティリティーは低下しました。日経VIは20を下回っており、投資家の不安心理はかなり後退しています。また、VIXは、投資家の不安心理がかなり高まっているとされる25を下回っています。NYDowと比較して、日経平均は強い状態が続いていますが、強さは前日より縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.6、米国-3.1と日本が4.5ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.09ポイント(日経平均換算で18450円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率0.9%減で、予想値の0.4%増を下回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
6月の耐久財受注、7月のミシガン大学消費者信頼感指数、6月の小売売上高、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数、6月の消費者物価指数、6月のISM非製造業景況指数、5月の製造業受注は市場予想を上回りました。一方、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の鉱工業生産指数、6月のISM製造業景況指数、6月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の6月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比37.2万人増で、市場予想の25万人増を上回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%から横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
一方、6月の中古住宅販売仮契約指、6月の新築住宅販売件数数、6月の中古住宅販売件数、6月の住宅着工件数、7月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+20.5%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は0勝6負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.5%利上げし、マイナス金利と量的緩和策を終了しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、7月25日 2.7692% → 7月26日 2.7928% → 7月27日 2.8058%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.92、PBRが1.19となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+2.9%で、こちらは3か月前より24.6ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+2.2%となり、日経平均の割高幅は420円から570円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、+210円から+570円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.59ポイントから2.53ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
7月29日の米国市場では、6月の個人所得・個人消費支出のほか、エクソン・モービルやP&Gなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを70円ほど下回り、下値は想定ラインを270円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ-200円(現在27980円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-100円(現在27460円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を5日ぶりに下回り、信用の売り圧力は弱まりました。ボラティリティーも低下傾向にあります。週明けの日経平均は、上昇する公算が高そうです。
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