[市況]
10月14日、NYDowとNASDAQは大幅上昇しました。10月15日の日経平均先物は、前日比230円高で寄り付くと、午前中は160円高から390円高と上昇幅を拡げ、午後は360円高から580円高と上昇幅を拡げて、結局550円高で取引を終えました。日経平均の終値は517円高の29068円で、出来高は11.43億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
10月14日の米国市場では、主要企業が相次いで市場予想を上回る好決算を発表したことから、投資家心理が改善され、買いが優勢となりました。週間の新規失業保険申請件数が市場予想を下回ったことや、9月の生産者物価指数の伸びが市場予想を下回ったこと、長期金利が低下したことなども支援材料となりました。NYDowは5営業日ぶりに反発し、NASDAQは続伸しました。
10月15日の日本市場では、前日の米株式市場で主要3指数がそろって上昇した流れが引き継がれ、運用リスクをとる動きが優勢となりました。外国為替市場で円安ドル高が進んだことや、香港や上海の株価指数が上昇したことも、買い安心感につながりました。日経平均は大幅に続伸し、終値で節目の2万9000円を上回りました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の上にありますが、25日線の下にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。
総合乖離率は+2.2%とプラスに転換し、200日線との乖離率も+1.1%とプラスに転換しました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスとなり、中期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線の上にありますが、25日線と200日線の下にあります。
NYDowは、200日線の上にあり、9日線と25日線を上回りました。一目均衡表では雲の中に戻りました。NASDAQは、9日線と200日線の上にあり、25日線を上回りました。一目均衡表では雲の中に戻りました。米国市場の短期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は-4.2ポイントで、中長期的には日経平均が1220円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が2.7ポイント(日経平均換算で780円)割安となっています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.0、米国-3.1と日本が3.9ポイント割安ですが、OECDの2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)は3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.55ポイント(日経平均換算で2490円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率6.7%増で、改定値の6.6%増から0.1ポイント上方修正されました。また、4~6月期の米企業の決算は、概ね好調です。
経済指標を見てみます。
9月のISM非製造業景況指数、9月のISM製造業景況指数、8月の製造業受注、8月の耐久財受注、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の小売売上高、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。また、8月の鉱工業生産指数は史上予想と一致しました。一方、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は8勝3負で、景気面では強気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を強めるという面では弱気材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比19.4万人増で、市場予想の50万人増を下回りました。一方、失業率は4.8%で、先月の5.2%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を弱めるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の中古住宅販売仮契約指数、8月の住宅着工件数、9月の住宅市場指数、7月の新築住宅販売件数、7月の中古住宅販売件数は予想を上回りました。一方、7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.9%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は5勝1負で、景気面では強気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を強めるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ただ、11月のFOMCでテーパリング実施を決定するようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末までに1兆8500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、10月11日 0.1217 → 10月12日 0.1267 → 10月13日 0.1237と小動きですが、上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが14.2、PBRが1.31なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.3ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+33.9%で、こちらは3か月前より5.3ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-4.3%となり、日経平均の割安幅は1300円から1310円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1990円から-1300円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.48ポイントから1.46ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年9月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入の減額を決定しました。今後3か月間のペースを、これまでの2四半期より適度に低くするとしています。
10月15日の米国市場では、9月の小売売上高や、10月のニューヨーク連銀製造業景況指数のほか、ゴールドマン・サックスなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを180円ほど上回り、下値は想定ラインを540円ほど上回りました。目先は、25日線+200円(現在29510円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+400円(現在28690円近辺)が下値の目安になりそうです。
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