[市況]
10月12日、NYDowとNASDAQは下落しました。10月13日の日経平均先物は、前日比30円高で寄り付くと、午前中は100円安から290円高の間で上下し、午後は150円高から40円高の間でもみあって、結局50円高で取引を終えました。日経平均の終値は90円安の28140円で、出来高は11.12億株と比較的高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
10月12日の米国市場では、IMFが米国の経済成長率の予想を下方修正したことが嫌気され、景気敏感株を中心に売りが優勢となりました。資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱を背景としたコスト高やインフレ観測も、引き続き投資家心理の重石となりました。重要な経済指標の発表や主要企業の決算発表を間近に控え、積極的に持ち高を傾けにくい環境でもありました。主要3指数はそろって下落しました。
10月13日の日本市場では、前日の米株式市場で主要な株価指数が下落した流れが引き継がれ、リスク回避の動きがやや優勢となりました。景気敏感株を中心に売られ、日経平均は一時、節目の2万8000円を割り込みました。ただ、個人投資家などの押し目買い意欲も強く、一段と下値を探る展開とはなりませんでした。米中の9月の物価に関する統計が13~14日にかけて発表されることから、午後は様子見ムードが強まりました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-7.7%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-2.0%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中に入りました。3つの要素のうち2つがマイナスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より0.1ポイント拡大して-4.9となり、中長期的には日経平均が1380円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が4.4ポイント(日経平均換算で1240円)割安となっています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.1、米国-3.1と日本が4.0ポイント割安ですが、OECDの2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)は3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.75ポイント(日経平均換算で3270円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率6.7%増で、改定値の6.6%増から0.1ポイント上方修正されました。また、4~6月期の米企業の決算は、概ね好調です。
経済指標を見てみます。
9月のISM非製造業景況指数、9月のISM製造業景況指数、8月の製造業受注、8月の耐久財受注、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の小売売上高、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。また、8月の鉱工業生産指数は史上予想と一致しました。一方、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は8勝3負で、景気面では強気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を強めるという面では弱気材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比19.4万人増で、市場予想の50万人増を下回りました。一方、失業率は4.8%で、先月の5.2%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を弱めるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の中古住宅販売仮契約指数、8月の住宅着工件数、9月の住宅市場指数、7月の新築住宅販売件数、7月の中古住宅販売件数は予想を上回りました。一方、7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.9%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は5勝1負で、景気面では強気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を強めるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ただ、11月のFOMCでテーパリング実施を決定するようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末までに1兆8500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、10月7日 0.1236 → 10月8日 0.1211 → 10月11日 0.1217と小動きですが、上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.9、PBRが1.28なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.3ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+34.1%で、こちらは3か月前より5.1ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-6.0%となり、日経平均の割安幅は1990円から1800円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1990円から-1710円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.52ポイントから1.50ポイントに縮小しました。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年9月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入の減額を決定しました。今後3か月間のペースを、これまでの2四半期より適度に低くするとしています。
10月13日の米国市場では、9月の消費者物価指数や、FOMC議事録のほか、JPモルガン・チェースなどの四半期決算が注目されるでしょう。原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを220円ほど下回り、下値は想定ラインを140円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ+300円(現在28680円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ+500円(現在27860円近辺)が下値の目安になりそうです。
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