日経平均の予想: [2021/10/12]今後の日経平均の見通し

Monday, October 11, 2021

[2021/10/12]今後の日経平均の見通し

[市況]

1011日、NYDowNASDAQは下落しました。1012日の日経平均先物は、前日比140円安で寄り付くと、午前中は30円安から340円安と下落幅を拡げ、午後は160円安から410円安と下落幅を拡げて、結局410円安で取引を終えました。日経平均の終値は267円安の28230円で、出来高は11.35億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。

 

1011日の米国市場は、原油が約7年ぶりに1バレル82ドル台に乗せたことから、原油や素材関連銘柄に買いが先行しました。しかし、長期金利の先高観は根強く、午後に入ると消費関連銘柄などに持ち高調整の売りが膨らみました。今週に決算発表を控える大手金融に売りが出たことも相場全体の重石となりました。NYDowNASDAQは続落しました。

1012日の日本市場では、前日の米国市場が下落した流れが引き継がれ、売りが優勢となりました。原油高によるコスト増の懸念や、インフレ懸念を背景とした米長期金利の先高観が投資家心理の重石となりました。一方で、円安ドル高を背景に、自動車など輸出関連株の一部には買いが入り、相場全体を下支えしました。日経平均は4日ぶりに反落しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、25日線の下にあり、9日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。

総合乖離率は-7.0%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-1.7%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素のうち2つがマイナスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。

また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。

 

NYDowは、9日線と200日線の上にありますが、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の下に出ました。NASDAQは、200日線の上にありますが、25日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より0.3ポイント拡大して-4.8となり、中長期的には日経平均が1360円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が4.5ポイント(日経平均換算で1270円)割安となっています

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-7.1、米国-3.1と日本が4.0ポイント割安ですが、OECD2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.78ポイント(日経平均換算で3420円)割安となっています。

 

市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の46月期のGDP確定値は前期比年率6.7%増で、改定値の6.6%増から0.1ポイント上方修正されました。また、46月期の米企業の決算は、概ね好調です。

 

経済指標を見てみます。

9月のISM非製造業景況指数、9月のISM製造業景況指数、8月の製造業受注、8月の耐久財受注、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の小売売上高、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。また、8月の鉱工業生産指数は史上予想と一致しました。一方、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は83負で、景気面では強気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を強めるという面では弱気材料です。

 

米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比19.4万人増で、市場予想の50万人増を下回りました。一方、失業率は4.8%で、先月の5.2%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を弱めるという面では強気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

8月の中古住宅販売仮契約指数、8月の住宅着工件数、9月の住宅市場指数、7月の新築住宅販売件数、7月の中古住宅販売件数は予想を上回りました。一方、7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.9%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は51負で、景気面では強気材料ですが、金融緩和の早期縮小観測を強めるという面では弱気材料です

 

新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ただ、11月のFOMCでテーパリング実施を決定するようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「20223月末までに18500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、106 0.1240 107 0.1236 108 0.1211と小動きですが、上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、202199日の0.1141が直近の最低金利で、20181220日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER13.9PBR1.28なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE9.2%となり、これは3か月前より0.3ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+33.5%で、こちらは3か月前より4.7ポイント改善されています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-6.6%となり、日経平均の割安幅は1710円から1990円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-2300円から-1710円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、1.53ポイントから1.52ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、20219月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入の減額を決定しました。今後3か月間のペースを、これまでの2四半期より適度に低くするとしています。

 

1012日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。原油価格長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを410円ほど下回り、下値は想定ラインを190円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ+200円(現在28680円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ+500円(現在27980円近辺)が下値の目安になりそうです。



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