[市況]
16日のNYDowは上昇し、NASDAQは下落しました。17日の日経平均先物は、前日比40円高で寄り付き、午前中は、40円高から40円安まで値を下げる動きでした。午後も一時100円安まで下げる場面がありましたが、最終的に70円安で取引を終わりました。日経平均は59円安で引け、出来高は19.4億株と低水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、150万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅が拡大しました。個別銘柄に関しては「売り」が有利な状況です。
16日の米国市場では、朝方発表された週間の新規失業保険申請件数が市場予想以上に減少したことや、5月の住宅着工件数が予想以上に増えたことで、値ごろ感からの買いが入り上昇しました。大きく下げていたユーロが上げに転じたことも好感されました。ただ、6月のフィラデルフィア連銀景気指数が市場予想に反して大幅に悪化したことから、NYDowは下げに転じる場面がありました。
17日の日本市場では、朝方はNYDowの反発を好感した買いで上げる場面がありましたが、週末とあって米中の景気減速やギリシャの債務問題の行方を懸念し、徐々に売りに押される展開となりました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線、9日線の下に在ります。短期トレンドは赤信号が点灯しています。総合乖離率は-10.2%とマイナス幅が拡がりました。200日線との乖離率は-4.9%とマイナス幅が拡がりました。日経平均は一目均衡表の雲の下に在ります。3つの要素がマイナスですので、中期的トレンドは赤信号赤信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線、25日線、9日線の下に在ります。
NYDowは、200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表では雲の下に在ります。
NASDAQは200日線、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表では雲の下に在ります。米国市場の短期トレンドは赤信号が点灯しています。中期トレンドは黄信号が点灯しています。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が3.7ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は 0.2ポイント拡がりました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、改定されたOECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差と予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 1.91ポイント割高となっています。
市場は現在、「震災の日本経済への影響」、「世界の景気と原油価格」、「米国の景気・雇用状況と住宅市況」、「欧州の財政赤字による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を実行中ですが、終了後も緩和的な政策は続きそうです。米国の1-3月期のGDPは年率で1.8%に減少しました。1-3月期の主要企業の決算発表は、好調な決算企業が勝り、支援材料となっています。経済指標では、5月の小売売上高、5月のISM非製造業指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、4月の消費者信頼感指数などは市場予想を上回りましたが、6月のNY連銀製造業景気指数は改善を見込んでいた市場予想に反して大幅に悪化し、6月のフィラデルフィア連銀景気指数、5月の鉱工業生産指数、5月の既存店売上高、5月のISM製造業景況感指数、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月のシカゴ購買部協会景気指数、4月の耐久財受注額、4月のシカゴ連銀景気指数は予想以下となりました。5月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が54,000人増と前月から大幅に悪化し、市場予想以下となりました。失業率も9.0%から9.1%と前月から悪化しました。一方、住宅関連では、5月の住宅着工件数、4月の新築住宅販売件数は予想以上でしたが、6月の住宅市場指数、4月の仮契約住宅指数、4月の中古住宅販売件数は予想以下となりました。3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は2009年4月に付けた金融危機後の最安値を更新し前年比で-3.61%と下落率も市場予想-3.40%を下回りました。昨年9月以降の景気関連の経済指標は改善傾向でしたが、今年4月以降、景気と雇用指標に陰りがでてきました。また、住宅関連の回復は鈍く金融緩和解除の足かせとなっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを初めとする欧州各国の財政赤字拡大が金融システム不安再燃の懸念を残しています。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、6月末で大幅なドル供給策は終了するものの、金利は据え置かれ、緩和的な政策は継続されるとのFRBによる方向が示されました。一方、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は06月14日 0.2452% → 06月15日 0.2450% → 06月16日 0.2465%となり低水準ですが上昇に転じました。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが14.2、PBRが1.04、ROEが7.3%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの下落に連動して下げました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.1となり、日経平均は100円の割高で、割高幅は縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+70円 ~ +400円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて強い動きが続いていますが、今日は強い動きが減速しました。
米国市場は、中期もみ合いで、短期は下降トレンドです。一方、日経平均は中期下降トレンドで、短期も下降トレンドとなりました。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルには割高です。
LIBORのドル3ヶ月物金利は低水準で、欧州財政問題が金融不安に発展する気配とは言えない水準ですが、上昇に転じた点は要注意です。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は1.82%と縮小し、為替はやや円高方向でした。日米金利差は中期的に縮小傾向が続いていますので、円高圧力は強そうです。一方、米国市場は好悪材料が出て、まちまちな動きでしたが、今夜の米国市場は6月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月の景気先行指数が注目されそうです。
日経平均は、ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。テクニカルには、9日線と25日線を下回り、一目均衡表の雲の下に在り、売られ安い状況です。ファンダメンタル面では、ギリシャ問題が欧州の銀行の経営に影響するか否か、米中の景気後退が企業業績に影響するか否かが次のテーマとなりそうです。日経平均は、下値を切り下げ、ボリンジャーバンドの-2σの9335円近辺まで下げました。目先は3月18日の窓埋めとなる9275円が次の下値目安と思われます。
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