[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、経済・雇用指標の悪化で、下落しました。一方、中長期的には、先進国の緊縮財政による消費や雇用の改善の遅れ、欧州の財政問題からの金融不安再燃による信用収縮懸念、資源高騰に伴う新興国の利上げによる景気後退懸念や中東の地政学的リスクが、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性が残されています。
2011年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差はOECDの予測値の改定により、日本市場は1.9ポイント割高となりました。その要因はS&P500のPERが14.0で、東証1部平均のPERの14.6との差と日米金利差によるものです。これは、今の日経平均の価格には、震災の影響で日本の2011年のGDP予想値が1.0%程度になることが織り込まれているとも解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2011年GDP予測値(現在+1.7%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となりました。今週は、原油価格など商品相場の行方ベージュブック、4月貿易収支、4月の卸売在庫の発表などが株式相場に影響しそうですが、弱含みで、軟調な相場が続きそうです。
② 日経225採用銘柄の今期予想増益率は+17.7%となり、今期ROE予想値は7.9%から7.4%へ悪化しています。
③ 日米とも長期金利は上昇傾向ですが、日米の金利差は1.94%~1.87%と縮小傾向で、為替は81円から79円台と円高方向の動きでした。今週は81から79円台で円高ぎみの動きが予想されます。
④ OECDによる日米の2011年の実質GDP伸び率は改定され日本が-0.9%で、米国は+2.6%と予想されていますので、この面では日本市場にとって3.5ポイント分の弱気材料です。
⑤ 5月4週は売り越しで6月1週も売り越しだった可能性が高く、今週も売り越しが予想されます。
5つのポイントのうち①②③④⑤が弱気材料でした。今週は、①③⑤と地震災害による②④が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、7.2ポイント割安となり、先週比2.4ポイント割安幅(弱い動き)が縮まりました。
日経平均は、一目均衡表の雲の中に在ります。200日移動平均線乖離率は-3.4%となり先週と比較してマイナス幅が拡大しました。総合乖離率は-8.8%となりマイナス幅が拡大しました。2つがマイナスですので中期トレンドは、”黄信号"が点灯しています。日経平均は9日線、25日線の下に在りますので、短期的には"赤信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下にあります。一目均衡表の雲の中に在ります。Nasdaqは、200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。短期的には赤信号"で中期的には"黄信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場は、EU財政問題、不動産市場の低迷、アフリカ・中東政情不安、資源高、新興国の利上げなどのリスクはやや後退しているものの景気・雇用指標の停滞が悪材料となっています。ただ、好材料としては、FRBによる金融緩和が継続する見通しの中、企業決算は概ね好調である点が挙げられます。テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみ合いで、短期は下降トレンドとなっています。日本市場は中期もみ合いで短期は下降トレンドです。
目先の状況を分析すると、EUの財政問題についてはLIBORのドル3ヶ月物金利は低水準横ばいで、まだギリシャ・ショック以前の水準です。今のところ欧州の金融不安には繋がっていません。一方、先週の日米金利差は縮小し、為替は円高方向となっています。
今週の日経平均も、米国市場や為替の動き、などを睨んだ動きとなりそうです。米国市場では景気・雇用指標の悪化で、目先は調整局面を迎えていますが、企業業績が好調なことや、QE3思惑が浮上していることから、深押しは考えにくい環境です。一方、日本市場では、3月期決算発表は終了し、欧米市場の動きが与える影響が、より大きくなりそうです。テクニカルな視点での日経平均は、200日線を下回る展開となり、短期も下降トレンドです。さらに、一目均衡表の雲を下回ると、一層弱気が勝りそうです。目先は一目均衡表の雲の上限の9560円近辺とボリンジャーバンド-2σ9370円近辺の間でのレンジ相場が想定されますが、9370円を下回った場合は3月22日に空けた窓の窓埋めとなる9275円近辺が次の抵抗ラインとなりそうです。
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