[市況]
31日のNYDowとNASDAQは上昇しました。1日の日経平均先物は、前日比20円高で寄り付き、午前中は、30円安から20円高までの間でもみ合う動きとなりました。午後も小動きながら一時40円高となるなど上昇基調は継続し、最終的に20円高で取引を終わりました。日経平均は25円高で引け、出来高は19.8億株と減少しました。寄り付き前の外国人の売買注文は、50万株の売り越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス転換しました。個別銘柄に関しては「買い」が有利な状況です。
31日の米国市場は、欧州の財政不安の後退などを背景に、このところ売り込まれた銘柄への買い戻しが優勢になりました。また、原油高を受けてエネルギー株などが上昇したことも相場の押し上げ要因でした。ただ、朝方発表の3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は2009年4月に付けた金融危機後の最安値を更新し、5月の消費者信頼感指数やシカゴ購買部協会景気指数も市場予想を大きく下回り、警戒感から一時は買いが鈍る場面がありました。
1日の日本市場では、米国市場高で投資心理がやや改善し、輸出関連の値がさ株の一部が買われました。ただ、米国市場に先んじて昨日上げた面があることや、政局動向の影響を見極めたいとの空気も強く、膠着した相場となりました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線、9日線の上に在ります。短期トレンドは赤信号から青信号に変わりました。総合乖離率は-2.2%とマイナス幅が縮まりました。200日線との乖離率は-1.1%とマイナス幅が縮まりました。日経平均は一目均衡表の雲の上に在ります。2つの要素がマイナスですので、中期的トレンドは黄信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線、25日線の下に在りますが、9日線の上に在ります。
NYDowは、200日線の上に在り、25日線の下に在りますが、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。
NASDAQは、200日線、9日線の上に在り、25日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。米国市場の短期トレンドは黄信号が点灯しています。中期トレンドは青信号が点灯しています。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が9.2ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は 0.9ポイント拡がりました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差と予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 0.91ポイント割安となっています。
市場は現在、「震災の日本経済への影響」、「世界の景気と原油価格」、「米国の景気・雇用状況と住宅市況」、「欧州の財政赤字による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を実行中ですが、終了後も緩和的な政策は続きそうです。米国の1-3月期のGDPは年率で1.8%に減少しました。1-3月期の主要企業の決算発表は、好調な決算企業が勝り、支援材料となっています。経済指標では、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、4月の消費者信頼感指数などは市場予想を上回りましたが、4月のISM製造業景況感指数は予想の範囲ながら前月より低下し、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月のシカゴ購買部協会景気指数、4月の耐久財受注額、4月のシカゴ連銀景気指数、5月のフィラデルフィア連銀景気指数、4月の鉱工業生産指数、5月のNY連銀景気指数、4月の小売売上高、4月のISM非製造業景況感指数は予想以下となりました。4月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が244,000人増と市場予想以上となりましたが、失業率は8.8%から9.0%と前月から悪化しました。一方、住宅関連では、4月の新築住宅販売件数は予想以上でしたが、4月の仮契約住宅指数、4月の中古住宅販売件数、4月の住宅着工件数は予想以下となりました。3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は2009年4月に付けた金融危機後の最安値を更新し前年比で-3.61%と下落率も市場予想-3.40%を下回りました。昨年9月以降の景気関連の経済指標は改善傾向でしたが、今年4月以降、景気と雇用指標に陰りがでてきました。また、住宅関連の回復は鈍く金融緩和解除の足かせとなっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを初めとする欧州各国の財政赤字拡大が金融システム不安再燃の懸念を残しています。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、6月末で大幅なドル供給策は終了するものの、金利は据え置かれ、緩和的な政策は継続されるとのFRBによる方向が示されました。一方、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は05月27日 0.2538% → 05月30日 0.2538% → 05月31日 0.2528%となり低水準で横ばい傾向です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが14.9、PBRが1.09、ROEが7.3%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの上昇率ほどは、上げませんでした。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.1となり、日経平均は20円の割安で、割安に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-150円 ~ +60円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて昨日強い動きに変わりましたが、今日は弱い動きに戻りました。
米国市場は、中期上昇トレンドで、短期はもみ合いです。一方、日経平均は中期もみ合いで、短期は上昇トレンドが維持されました。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルにも割安です。
LIBORのドル3ヶ月物金利は低水準で、欧州財政問題が金融不安に発展する気配とは言えない水準です。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は1.91%と変わらず、為替はもみ合いです。一方、米国市場は弱い景気指標には反応しなくなってきたようで、雇用指標に関心が向かっているようです。今夜の米国市場は5月のADP雇用統計、5月のISM製造業指数などが注目されそうです。
ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうですが、日経平均の二番底を探る動きは当面無くなったようです。テクニカルには、一目均衡表の雲や25日線を上に抜き強気に転換しました。ファンダメンタル面では、米国の雇用統計と原油などの商品市況の動きが注目点です。日本市場は3月期決算の内容を織り込んだようで、エネルギー関連を中心に震災後需要に注目が集まってきました。日経平均は25日線の9660円をキープしていますのでテクニカルには強気に転換したと考えてよさそうです。目先は、一目均衡表の雲の上限(9560円)を底に、米雇用統計次第では、上値を切り上げる展開が期待できそうです。
ブログランキング・アップに、ご協力をお願いします。
右のボタンをクリック!
世界の市場のリアルチャートはこちら=>世界の市場のリアルチャート
注目銘柄、日経平均チャートについてはYS総合研究所HPも参考にしてください。