[市況]
13日のNYDowとNASDAQは小幅下落しました。14日の日経平均先物は、前日比10円安で寄り付き、午前中は、20円安から60円高までの間で徐々に値を上げる動きでした。午後は一時120円高まで上昇する場面もありましたが、最終的に80円高で取引を終わりました。日経平均は99円高で引け、出来高は19.4億株と低水準ながら増加しました。寄り付き前の外国人の売買注文は、610万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス転換しました。個別銘柄に関しては「買い」が有利な状況です。
13日の米国市場では、金融株などに割安感に着目した買いが入った。ことや、小売業などで大型M&Aの発表が相次いだことで、相場を下支えしました。ただ、原油相場が午後に下げ幅を広げると、エネルギー株が売られ、相場を押し下げました。
14日の日本市場では、米国市場安を受けて小安くはじまりましたが、前引け後に発表された中国の6月の消費者物価指数が市場予想通りだったことで、懸念材料がひとまず出尽くしたとしてアジア株が上昇し、日本市場でも買い安心感が広がり、日経平均の上げ幅は一時100円を超えました。午後に東電賠償スキームが閣議決定されたことも支援材料となりました。ただ、世界景気の減速懸念は根強く、上値は限定的でした。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線の下に在りますが、9日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。総合乖離率は-4.9%とマイナス幅が縮まりました。200日線との乖離率は-2.9%とマイナス幅が縮まりました。日経平均は一目均衡表の雲の中に在ります。2つの要素がマイナスですので、中期的トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線の下に在りますが25日線、9日線を上回りました。
NYDowは、200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表では雲の下に在ります。
NASDAQは、200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表では雲の下に在ります。米国市場の短期トレンドは赤信号が点灯しています。中期トレンドは黄信号が点灯しています。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が2.5ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は 1.3ポイント縮まりました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、改定されたOECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差と予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 2.04ポイント割高となっています。
市場は現在、「震災の日本経済への影響」、「世界の景気と原油価格」、「米国の景気・雇用状況と住宅市況」、「欧州の財政赤字による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を実行中ですが、終了後も緩和的な政策は続きそうです。米国の1-3月期のGDPは年率で1.8%に減少しました。1-3月期の主要企業の決算発表は、好調な決算企業が勝り、支援材料となっています。経済指標では、5月のISM非製造業指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、4月の消費者信頼感指数などは市場予想を上回りましたが、5月の既存店売上高、5月のISM製造業景況感指数、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月のシカゴ購買部協会景気指数、4月の耐久財受注額、4月のシカゴ連銀景気指数、5月のフィラデルフィア連銀景気指数、4月の鉱工業生産指数、5月のNY連銀景気指数、4月の小売売上高は予想以下となりました。5月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が54,000人増と前月から大幅に悪化し、市場予想以下となりました。失業率も9.0%から9.1%と前月から悪化しました。一方、住宅関連では、4月の新築住宅販売件数は予想以上でしたが、4月の仮契約住宅指数、4月の中古住宅販売件数、4月の住宅着工件数は予想以下となりました。3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は2009年4月に付けた金融危機後の最安値を更新し前年比で-3.61%と下落率も市場予想-3.40%を下回りました。昨年9月以降の景気関連の経済指標は改善傾向でしたが、今年4月以降、景気と雇用指標に陰りがでてきました。また、住宅関連の回復は鈍く金融緩和解除の足かせとなっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを初めとする欧州各国の財政赤字拡大が金融システム不安再燃の懸念を残しています。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、6月末で大幅なドル供給策は終了するものの、金利は据え置かれ、緩和的な政策は継続されるとのFRBによる方向が示されました。一方、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は06月09日 0.2495% → 06月10日 0.2485%→ 06月13日 0.2470%となり低水準で低下傾向です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが14.5、PBRが1.06、ROEが7.3%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの下落にも関わらず上げました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+3.9となり、日経平均は370円の割高で、割高幅は拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、+190円 ~ +400円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて強い動きが続いていますが、今日は強い動きが加速しました。
米国市場は、中期もみ合いで、短期は下降トレンドです。一方、日経平均は中期もみ合いで、短期ももみ合いとなりました。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルには割高です。
LIBORのドル3ヶ月物金利は低水準で、欧州財政問題が金融不安に発展する気配とは言えない水準です。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は1.84%と変化はないものの、為替はやや円安方向でした。ただ、日米金利差は縮小傾向が続いていますので、円高圧力は強そうです。一方、米国市場は景気後退懸念で下落が続いていますが、今夜の米国市場は5月の小売売上高、5月の生産者物価、4月の企業在庫が注目されそうです。
日経平均は、ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。テクニカルには、9日線を上回り、一目均衡表の雲の中に入りました。5月初旬以降上値は切り下がってきていますが、売られ安い状況はやや改善しました。ファンダメンタル面では、米国の雇用の停滞が確認されましたので、次なる景気対策の方向に関心が向かいそうですが、それまでは売り材料とされやすい状況です。今後のFRBの動きを注目する必要がありそうです。目先の日経平均は、ボリンジャーバンドの-2σの9325円近辺と25日線の9570円近辺までの範囲の動きが想定されますが、25日線を上回れば、一目均衡表の雲の上限の9720円近辺までの上昇も期待できそうです。
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