[市況]
7月26日、NYDowとNASDAQは大幅上昇しました。7月29日の日経平均先物は、前日比660円高で寄り付くと、午前中は530円高から1020円高の間で上下し、午後は710円高から970円高の間で上下して、結局、760円高で取引を終えました。日経平均の終値は801円高の38468円で、出来高は16.12億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態となりました。
空売り比率は、5日平均を3日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、弱まりました。
7月26日の米国市場では、6月の個人消費支出(PCE)物価指数がおおむね市場予想通りの内容だったことや、4~6月期のGDP速報値がインフレ鈍化を示す内容だったことなどを受け、FRBが9月にも利下げを開始するとの観測が強まり、足元で売られていたハイテク株や、出遅れ感のある景気敏感株などに買いが向かいました。NYDowは続伸し、NASDAQも4営業日ぶりに反発しました。
7月29日の日本市場では、前週末までの8日続落の反動で、幅広い銘柄に自律反発狙いの買いが入りました。前週末の米株式市場で主要3指数がそろって上昇したことや、注目度の高いハイテク関連銘柄で好決算が続いていることも投資家心理を上向かせました。ただ、30日から開かれる日銀の金融政策決定会合の結果を見極めたい投資家も多く、上値では利益確定売りも出ました。日経平均は9営業日ぶりに大幅反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-0.7%とマイナス幅を縮め、200日線との乖離率は+4.8%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中に入りました。3つの要素のうち1つがマイナスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。
NYDowは、25日線と200日線の上にあり、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上あります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-4.9ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が1880円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、-2.3ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が880円ほど割安であることを示しています。
日経VIは21.47と前日より低下し、VIXも16.39と前日より低下しました。日経VIは、変動率の高まりを示す20を上回っています。NYDowと比べて、日経平均は弱い状態ですが、前日比で弱さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-5.1、米国-0.3と日本が4.8ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.9、米国が+3.9)は1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.79ポイント(日経平均換算で61640円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率2.8%増で、市場予想の2.1%増を上回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
7月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の鉱工業生産指数、6月の小売売上高、6月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を上回りました。一方、6月の耐久財受注、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数、6月の消費者物価指数、6月のISM非製造業景況指数、5月の製造業受注、6月のISM製造業景況指数、6月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は5勝7負で、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の6月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比20.6万人増で、市場予想の20.0万人増をやや上回りました。一方、失業率は4.1%で、前月の4.0%から悪化しました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の住宅着工件数、5月の中古住宅販売件数は予想を上回りました。一方、6月の新築住宅販売件数、7月の住宅市場指数、5月の中古住宅販売仮契約指数は予想を下回りました。4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+7.2%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
市場は、FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性を意識していますが、利下げ開始時期は不透明です。ECBは、利下げを開始しましたが、追加の利下げには慎重な姿勢を示しています。一方、日銀は、2%のインフレ目標を維持しつつも、マイナス金利政策の解除と、ETFの買い入れ終了、YCC(長期金利の誘導)の終了、国債買い入れの減額を決定しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、7月22日 5.5449% → 7月23日 5.5462% → 7月24日 5.5408%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇していますが、直近ピークアウトしています。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが16.25、PBRが1.46となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+1.8%で、こちらは3か月前より10.6ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.9%となり、日経平均の割安幅は1310円から1130円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1310円から-590円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.19ポイントから3.16ポイントに縮小しました。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的にももみあいです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、景気が減速ぎみに推移しており、FRBが利下げに転換する時期を探る動きとなっています。対ドルで円安が進みにくい状況です。尚、ECBは利下げに踏み出しています。
7月29日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。マクドナルド、ロウズ、オン・セミコンダクターなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを500円ほど上回り、下値は想定ラインを590円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ(現在38880円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ+300円(現在38020円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは、変動率の高まりを示す20を上回っています。一方、信用の売り圧力は弱まりました。日経平均は大幅に反発しました。FOMCの結果公表までは、75日線へ向けてリバウンドの動きが続きそうです。
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