[市況]
1月9日、NYDowは下落し、NASDAQは小幅上昇しました。1月10日の日経平均先物は、前日比130円高で寄り付くと、午前中は100円高から650円高と上昇幅を拡げ、午後は580円高から770円高と上昇幅を拡げて、結局、690円高で取引を終了しました。日経平均の終値は678円高の34441円で、出来高は15.62億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態ですが、買われ過ぎの水準です。
空売り比率は5日平均を4日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。
1月9日の米国市場では、足元の株高の反動で、景気敏感株や消費関連株に利益確定の売りが広がりました。米長期金利は昨年12月末におよそ5か月ぶりの低水準をつけたあと水準を切り上げており、株式の相対的な割安感が薄まっていることも投資家心理の重石となりました。一方、半導体のエヌビディアは連日で最高値を更新しました。結局、NYDowは4営業日ぶりに反落し、NASDAQは3日続伸しました。
1月10日の日本市場では、前日の米ハイテク株高や、為替の円安ドル高進行が好感され、運用リスクをとる動きが優勢となりました。新しいNISA経由の個人投資家の買いや、投資余力のある海外勢の株価指数先物への買いも、相場の押し上げ要因となりました。日経平均は大幅に3日続伸し、約33年11か月ぶりの高値で終えました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+18.4%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+8.8%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の上にあります。
NYDowは、25日線と200日線の上にありますが、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。中期トレンドには青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-1.2ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が410円ほど割安であることを示しています。一方、NYDowとの差は、+0.1ポイントとプラスに転換し、日経平均が30円ほど割高であることを示しています。
日経VIは19.62と前日より上昇し、VIXは12.76と前日より低下しました。両指数ともに、変動率の高まりを示す20をまだ下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態に転換しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-6.0、米国0.7と日本が5.3ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.4、米国が+3.9)は0.5ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.78ポイント(日経平均換算で94150円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP確定値は前期比年率4.9%増で、改訂値の5.2%増を下回りました。また、7~9月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
12月のISM製造業景況指数、11月の耐久財受注、12月のミシガン大学消費者信頼感指数、12月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、11月の小売売上高、11月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。一方、11月の製造業受注、12月のISM非製造業景況指数、12月のシカゴ購買部協会景気指数、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、12月のニューヨーク連銀製造業景況指数、11月の鉱工業生産指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面で中立です。
米国の12月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比21.6万人増で、市場予想の17.0万人増をやや上回りました。一方、失業率は3.7%で、前月の3.7%と横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
11月の中古住宅販売件数、11月の住宅着工件数、12月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、11月の中古住宅販売仮契約指数、11月の新築住宅販売件数は予想を下回りました。10月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+4.9%で、市場予想と一致しました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性は高いと市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、長期金利の許容変動幅は、0.5%に据え置きつつも、1%までは柔軟に対応するという政策に変更されました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、1月4日 5.5909% → 1月5日 5.5908% → 1月8日 5.5873%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが15.32、PBRが1.36となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より0.3ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+8.5%で、こちらは3か月前より2.2ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず大幅に上昇しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.9%となり、日経平均の割高幅は70円から630円に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-390円から+630円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.44ポイントから3.46ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
1月10日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、中東情勢や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを360円ほど上回り、下値は想定ラインを340円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+3σ(現在34510円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+2σ-100円(現在33980円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経平均は大幅に続伸しました。信用の売り圧力はかなり弱い状態ですが、日経VIは19.62まで上昇しています。日経平均の、米国市場と比べた割安感はほぼ解消されました。今後は、米国市場と同様、利益確定の売りが出やすくなりそうです。
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