[市況]
1月26日、NYDowは上昇し、NASDAQは下落しました。1月29日の日経平均先物は、前日比180円高で寄り付くと、午前中は90円高から470円高と上昇幅を拡げ、午後は500円高から260円高の間と上昇幅を縮めて、結局、360円高で取引を終了しました。日経平均の終値は275円高の36026円で、出来高は13.77億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
空売り比率は、5日平均を4日連続で上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、強い状態です。
1月26日の米国市場では、12月の個人消費支出(PCE)でコア指数が市場予想を下回ったことが、FRBが早期に利下げに動くとの観測を支え、株買いをさそいました。一方、市場予想を下回る売上高見通しを発表したインテルが大幅安となり、他のハイテク株にも売りが波及しました。NYDowは小幅に続伸し、連日で過去最高値を更新しました。NASDAQは7営業日ぶりに反落しました。
1月29日の日本市場では、米経済が軟着陸するとの観測や日本株の先高観が投資家心理を支え、買いが優勢となりました。円相場が円安ドル高方向に振れたことや、アジア株が堅調に推移したことも好感されました。ただ、日経平均が3万6000円を上回る局面では利益確定の売りが出やすく、相場の上値は限定的でした。日経平均は反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の上にあり、9日線を上回りました。短期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
総合乖離率は+24.2%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+12.0%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドにも青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-0.7ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が250円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+2.4ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均が860円ほど割高であることを示しています。
日経VIは19.81と前日より上昇し、VIXは13.26と前日より低下しました。両指数ともに、変動率の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態であり、前日比で強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-5.6、米国-0.4と日本が5.2ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.4、米国が+3.9)は0.5ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.71ポイント(日経平均換算で104420円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP速報値は前期比年率3.3%増で、市場予想の2.0%増を上回りました。また、10~12月期の米企業の決算は、おおむね好調です。
経済指標を見てみます。
1月のミシガン大学消費者信頼感指数、12月の鉱工業生産指数、12月の小売売上高、12月の消費者物価指数、12月のISM製造業景況指数、12月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、12月の耐久財受注、1月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、1月のニューヨーク連銀製造業景況指数、11月の製造業受注、12月のISM非製造業景況指数、12月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面で中立です。
米国の12月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比21.6万人増で、市場予想の17.0万人増を上回りました。また、失業率は3.7%で、前月の3.7%から横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利下げ次期が遅れるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
12月の新築住宅販売件数、12月の住宅着工件数、1月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、12月の中古住宅販売件数、11月の中古住宅販売仮契約指数は予想を下回りました。10月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+4.9%で、市場予想と一致しました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利下げ次期が遅れるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性は高いと市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、長期金利の許容変動幅は、0.5%に据え置きつつも、1%までは柔軟に対応するという政策に変更されました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、1月24日 5.5856% → 1月25日 5.5812% → 1月26日 5.5790%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが15.80、PBRが1.39となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.8%となり、これは3か月前より0.2ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+8.4%で、こちらは3か月前より2.5ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.5%となり、日経平均は10円の割安から180円の割高に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-10円から+990円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.38ポイントから3.42ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に上昇トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
1月27日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、地政学的リスクや長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、ほぼ想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインとほぼ一致し、下値は想定ラインを480円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+300円(現在36280円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-400円(現在35580円近辺)が下値の目安になりそうです。
信用の売り圧力は強まりました。また、日経VIは、変動率の高まりを示す20を下回っていますが、前日比で上昇しました。日経平均は反発し、ボリンジャーバンド+1σを上回りましたが、本格的な反転とみなすのは早計と思われます。
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