[市況]
8月29日、NYDowとNASDAQは下落しました。8月30日の日経平均先物は、前日比140円高で寄付くと、午前中は30円高から270円高と上昇幅を拡げ、午後は220円高から310円高の間でもみあって、結局、290円高で取引を終了しました。日経平均の終値は316円高の28195円で、出来高は9.98億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態となりました。
また、空売り比率は、5日平均を2日連続で上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり強い状態です。
8月29日の米国市場では、引き続き金融引き締めの長期化観測が重石となり、景気の一段の悪化を懸念した売りが優勢となりました。ただ、原油先物相場の上昇が支えとなり、NYDowは小幅に上昇する場面もありました。長期金利の上昇を受け、相対的な割高感が意識されやすいハイテク株は売られました。NYDowとNASDAQは続落しました。
8月30日の日本市場では、前日の急落の反動で、短期的な戻りを期待した買いや売り方の買い戻しが優勢となりました。原油先物相場が上昇したことや、今後も円安が続くとの観測も支えとなりました。ただ、米金融政策への警戒感は根強く、上値では戻り待ちの売りが出ました。日経平均は反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は+5.4%と前日よりプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+2.5%と前日よりプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには赤信号が点灯しています。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+11.7ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が3300円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は、+7.2ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が2030円ほど割高であることを示しています。
日経VIは20.08、VIXは26.21となりました。日経VIは不安心理の高まりを示す20を上回っており、VIXは不安心理がかなり高まっているとされる25を上回っています。日米市場のボラティリティーの差は拡大し、NYDowと比較して、日経平均の強さは前日より拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.6、米国-2.4と日本が5.2ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.86ポイント(日経平均換算で27710円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP改定値は前期比年率0.6%減で、速報値の0.9%減から改善されました。また、4~6月期の米企業の決算は、下方修正が目立ちました。
経済指標を見てみます。
8月のミシガン大学消費者信頼感指数、8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の鉱工業生産指数、7月のISM非製造業景況指数、6月の製造業受注、7月のISM製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、7月の小売売上高、7月の耐久財受注、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数、7月の消費者物価指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面で中立材料です。
米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比52.8万人増で、市場予想の25万人増を上回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.6%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
7月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、7月の新築住宅販売件数数、7月の中古住宅販売件数、7月の新築住宅着工件数、8月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+20.5%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は1勝5負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.5%利上げし、マイナス金利と量的緩和策を終了しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、8月24日 3.0100% → 8月25日 3.0431% → 8月26日 3.0695%と、ここ5年の最高値を連日で更新しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年8月26日に記録した3.0695%がここ5年間の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.85、PBRが1.16となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+4.6%で、こちらは3か月前より4.4ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.1%となり、日経平均の割安幅は530円から20円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-530円から-20円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.89ポイントから2.86ポイントに縮小しました。ドル円相場はやや円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
8月30日の米国市場では、6月のS&Pコアロジック/ケース・シラー住宅価格指数や、8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数などが注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを30円ほど下回り、下値は想定ラインを350円ほど上回りました。目先は、25日線+200円(現在28470円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在27790円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を2日連続で上回りました。また、日経VIは、不安心理の高まりを示す20を上回っています。ただ、日米のボラティリティーの差は拡大し、日本市場の相対的な強さが目立ちました。目先、日本市場は、米国市場より強い動きが続きそうです。
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