[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、長期金利が一時2.99%と1カ月ぶりの水準に上昇したこともあり、7月中旬から上昇基調が続いていたため、短期的な利益確定売りが優勢になり、株価指数は週間で下落しました。
週間変動率 NYダウ:-0.16%, NASAQ:-2.62%, S&P500:-1.21%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、サプライチェーン混乱の長期化による世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、改定された2023年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が3.69ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが18.4に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.0との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに3.69ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが25.0程度になるか、又は、日経平均が55610円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は26680円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、26680円分魅力に欠けるとも言えます。日本市場の弱さはやや縮小しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+3.5%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、NYDowが25日線の上を維持できるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.0%となりました。3ヶ月前に比べて0.3ポイント改善しています。また、利益伸び率は+4.3%で3ヶ月前に比べて6.6%ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利は上昇し、日米間の金利差は2.69から2.78と拡大して、ドル円は132円から137円の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で+2.30%上昇しました。
④ OECDの日米の2023年の名目GDP伸び率は、日本が+3.54%で、米国は+4.88%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.34ポイント劣ります。
⑤ 8月2週は買い越しで、8月3週は買い越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、③が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に9.8ポイント(日経平均に勘算すると2840円程度)割高です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に6.4ポイント(日経平均に勘算する1850円程度)割高です。
週間では米国市場に対する日本市場の強さは拡大しました。米国市場のボラティリティーを示す、VIXは20.60と投資家の不安心理示す20を上回りました。
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには”青信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。総合乖離率は+15.0%となり先週と比較しプラス幅は拡大しました。 200日移動平均線との乖離率は+5.0%で、プラス幅は拡大しました。3つの要素がプラスですので、中期トレンドには、"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNYDowは、9日線と25日線の上にありますが、200日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQは、25日線の上にありますが、9日線と200日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。
短期的には”青信号”で、中期的には”黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、ウクライナ紛争、米国の利上げ、長期金利の上昇、原油相場の上昇、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き注意が必要です。2020年3月にも、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。
一方、好材料としては日銀による金融緩和政策の維持が挙げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期は上昇トレンドです。日本市場も中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。
為替市場を分析すると、2020年は、ゆるやかに円高方向に動いていましたが、2021年に入り、円安トレンドが続いています。今週は135円台から138円台が想定されます。
今週、投資家はジャクソンホール会合を注意深く見守るでしょう。FRBの利上げ計画の変更の有無を推測することになります。その他、米国、英国、オーストラリア、ドイツ、フランス、日本の8月のPMIが発表される予定です。また、中国人民銀行の金利決定、米国の7月の新築住宅販売、7月の耐久財受注も注目されるでしょう。
信用の売り圧力は弱いものの、ボラティリティーは上昇傾向に変わり、日経平均は上昇の勢いは無くなり下落しやすい地合いとなりそうです。
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