[市況]
8月25日、NYDowとNASDAQは上昇しました。8月26日の日経平均先物は、前日比150円高で寄付くと、午前中は130円高から280円高の間でもみあい、午後は220円高から90円高と上昇幅を縮めて、結局、100円高で取引を終了しました。日経平均の終値は162円高の28641円で、出来高は8.56億株と比較的低水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を2日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、弱い状態です。
8月25日の米国市場では、ジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長の講演を目前に控え、「先行きの金融政策を明確に示唆する発言は出ない」との見方から、買い戻しの動きが強まりました。足元で上昇基調にあった長期金利が低下したことも支えとなりました。NYDowとNASDAQは続伸しました。
8月26日の日本市場では、前日の米ハイテク株高を受け、半導体関連やハイテク関連株を中心に買いが優勢となりました。ただ、パウエルFRB議長の講演や7月の米個人所得・個人消費支出(PCE)の発表を前に様子見姿勢の市場参加者が多く、積極的な売買は手控えられました。日経平均は続伸しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の上にありますが、9日線の下にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。
総合乖離率は+10.4%と前日よりプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+4.0%と前日よりプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、25日線の上にありますが、9日線と200日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線と200日線の下にありますが、25日線を上回りました。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+8.8ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が2520円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は、+5.3ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が1520円ほど割高であることを示しています。
日経VIは18.73、VIXは21.78と、日米市場のボラティリティーは低下しました。VIXは、投資家の不安心理の高まりを示す20を上回っています。NYDowと比較して、日経平均は強い状態が続いていますが、強さは前日より縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.5、米国-2.4と日本が5.1ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.76ポイント(日経平均換算で27290円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP改定値は前期比年率0.6%減で、速報値の0.9%減を上回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、下方修正が目立ちました。
経済指標を見てみます。
8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の鉱工業生産指数、7月のISM非製造業景況指数、6月の製造業受注、7月のISM製造業景況指数、7月のミシガン大学消費者信頼感指数、6月の小売売上高は市場予想を上回りました。一方、7月の耐久財受注、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数、7月の消費者物価指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面ではやや強気材料ですが、利上げペースが上がるという面ではやや弱気気材料です。
米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比52.8万人増で、市場予想の25万人増を上回りました。また、失業率は3.5%で、先月の3.6%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
7月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、7月の新築住宅販売件数数、7月の中古住宅販売件数、7月の新築住宅着工件数、8月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+20.5%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は1勝5負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.5%利上げし、マイナス金利と量的緩和策を終了しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、8月22日 2.9797% → 8月23日 2.9968% → 8月24日 3.0100%と、ここ5年の最高値を連日で更新しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年8月24日に記録した3.0100%がここ5年間の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.99、PBRが1.18となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+4.5%で、こちらは3か月前より4.1ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.2%となり、日経平均の割安幅は130円から340円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-700円から-130円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.88ポイントから2.84ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
8月26日の米国市場では、パウエルFRB議長の講演や、7月の個人所得・個人消費支出(PCE)などが注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを40円ほど下回り、下値は想定ラインを460円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+200円(現在28930円近辺)が上値の目安に、25日線(現在28250円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を2日連続で下回りました。日経VIは、不安心理の高まりを示す20を下回っています。日米ともにボラティリティーは低下傾向にあり、信用の売り圧力も弱まっています。週初の日経平均は、需給環境からは、強含みの展開が継続しそうですが、パウエルFRB議長の発言次第という面もあります。
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