[市況]
2月17日、NYDowとNASDAQは大幅下落しました。2月18日の日経平均先物は、前日比260円安で寄り付くと、午前中は380円安から20円安と下落幅を縮め、午後は50円高から100円安の間でもみあって、結局70円安で取引を終えました。日経平均の終値は110円安の27122円で、出来高は11.26億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態となりました。
また、空売り比率は5日平均を3日ぶりに上回りました。個別銘柄への売り圧力は強まりました。
2月17日の米国市場では、バイデン大統領が記者団に「ロシアがウクライナに侵攻する可能性は非常に高い」と述べたことから、ロシアと欧米の対立が激化するとの見方が強まり、景気敏感株からハイテク株まで幅広い銘柄にリスク回避の売りが膨らみました。NYDowとNASDAQは続落しました。NYDowは、下落額も下落率も今年最大でした。
2月18日の日本市場では、前日の米株式市場で主要3指数がそろって下落した流れが引き継がれ、運用リスク回避の動きが先行しました。しかし、米ロが近く外相会談を開くことで合意したと伝わると、ひとまずは事態の悪化が回避されるとの見方が強まり、日経平均は急速に下げ渋りました。もっとも、ウクライナ情勢はまだ不透明であり、持ち高を一方に傾ける動きは限定的でした。日経平均は続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-10.3%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-5.0%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+2.3ポイントとプラスに転換し、日経平均が620円ほど割高であることを示しています。一方、NYDowとの比較では、日経平均が2.8ポイント(日経平均換算で760円)割安となっています。
日経VIは25.38、VIXは28.11と、米国市場のボラティリティーのほうが高い状態となりました。NYDowに対する日経平均の弱さは、前日より改善されました。ただ、投資家の不安心理は依然として高い状態です。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.3、米国-3.0と日本が4.3ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.19ポイント(日経平均換算で5120円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP速報値は前期比年率6.9%増で、市場予想を上回りました。また、10~12月期の米企業の決算は、今のところ好調な企業が目立ちます。
経済指標を見てみます。
1月の鉱工業生産指数、1月の小売売上高、1月の消費者物価指数、1月のISM非製造業景況指数、1月のISM製造業景況指数、1月のシカゴ購買部協会景気指数、1月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、2月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、2月のニューヨーク連銀製造業景況指数、2月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値、12月の製造業受注、12月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面で弱気気材料です。
米国の1月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比46.7万人増で、市場予想の12.5万人増を大きく上回りました。一方、失業率は4.0%で、先月の3.9%から悪化しました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面で弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
12月の新築住宅販売件数は予想を上回りました。また、12月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想と一致しました。一方、1月の住宅着工件数、2月の住宅市場指数、12月の中古住宅販売件数は市場予想を下回りました。また、11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+18.3%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末まで1兆8500億ユーロ」に拡大しました。ただ、22年4月以降の資産購入額は現在の半分以下に減少する見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、2月14日 0.4585 → 2月15日 0.4687 → 2月16日 0.4881と上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.34、PBRが1.21となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前と同水準です。一方、今期予想利益の伸率は+27.2%で、こちらは3か月前より7.3ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.8%となり、日経平均は200円の割安から220円の割高に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-290円から+220円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.77ポイントから1.77ポイントと横ばいでした。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に下降トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化していますが、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年12月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している追加の債券購入を2022年3月で終了することを決定しました。
2月18日の米国市場では、1月の中古住宅販売件数などが注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを340円ほど下回り、下値は想定ラインを100円ほど下回りました。目先は、25日線+100円(現在27460円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ-100円(現在26790円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を3日ぶりに上回り、売り圧力は高まりました。日本市場のボラティリティーは低下しましたが、投資家の不安心理は依然として高い状態です。日経平均は、ボリンジャーバンド-2σまでは引き続き下落する可能性が高そうです。
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