[市況]
2月3日、NYDowとNASDAQは大幅下落しました。2月4日の日経平均先物は、前日比120円安で寄り付くと、午前中は120円高から140円安の間で上下し、午後は20円高から230円高と上昇幅を拡げて、結局210円高で取引を終えました。日経平均の終値は198円高の27439円で、出来高は13.58億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は5日平均を下回りました。個別銘柄への売り圧力は弱まりました。
2月3日の米国市場では、市場予想を下回る業績見通しを発表した銘柄が売られ、相場を押し下げました。わけても、2日夕に決算を発表したメタプラットフォームズは26%安となり、他のハイテク株へも売りが波及しました。長期金利が上昇し、高PER銘柄に割高感が出たことも逆風となりました。一方、医薬品や日用品など、ディフェンシブ銘柄は買われました。結局、NYDowとNASDAQは5営業日ぶりに反落しました。
2月4日の日本市場では、割安感のある銘柄への押し目買いと、利益確定の売りや戻り待ちの売りが交錯し、午前中は方向感を欠いた展開となりました。午後に入ると、香港の株式市場や米株価指数先物の上昇が投資家心理を上向かせ、値がさ株の一角に買いが入り、相場を押し上げました。日経平均は反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にありますが、9日線の上にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。
総合乖離率は-9.8%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-4.2%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドには赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。
NYDowは、9日線と200日線の上にありますが、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の下に抜けました。NASDAQは、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+1.8ポイントとプラスに転換し、日経平均が490円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が4.4ポイント(日経平均換算で1210円)割安となっています。
日経VIは22.84、VIXは24.35と、米国市場のほうがボラティリティーが高い状態です。NYDowに対する日経平均の弱さは改善されました。両指数とも20を上回っており、投資家の不安心理が完全に払拭されたとは言えません。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.2、米国-3.2と日本が4.0ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.90ポイント(日経平均換算で3810円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP速報値は前期比年率6.9%増で、市場予想を上回りました。また、10~12月期の米企業の決算は、今のところ好調な企業が目立ちます。
経済指標を見てみます。
1月のISM非製造業景況指数、1月のISM製造業景況指数、1月のシカゴ購買部協会景気指数、1月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。また、1月のニューヨーク連銀製造業景況指数、12月の消費者物価指数は市場予想と一致しました。一方、12月の製造業受注、12月の耐久財受注、1月のミシガン大学消費者信頼感指数、12月の鉱工業生産指数、12月の小売売上高は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です。
米国の12月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比19.9万人増で、市場予想の40万人増を下回りました。一方、失業率は3.9%で、先月の4.2%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ時期が遅くなるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
12月の新築住宅販売件数、12月の住宅着工件数は予想を上回りました。また、12月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想と一致しました。一方、12月の中古住宅販売件数、1月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。また、11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+18.3%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末まで1兆8500億ユーロ」に拡大しました。ただ、22年4月以降の資産購入額は現在の半分以下に減少する見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、1月31日 0.3088 → 2月1日 0.3027 → 2月2日 0.3105と上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.5、PBRが1.24となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+36.1%で、こちらは3か月前より0.8ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.6%となり、日経平均の割安幅は700円から160円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-700円から-160円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.59ポイントから1.65ポイントに拡大し、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化していますが、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年12月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している追加の債券購入を2022年3月で終了することを決定しました。
2月4日の米国市場では、1月の雇用統計が注目されるでしょう。引き続き、オミクロン感染状況や原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを130円ほど下回り、下値は想定ラインを100円ほど上回りました。目先は、25日線-100円(現在27790円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+100円(現在27170円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を下回り、売り圧力は弱まったものの、日米市場のボラティリティーは昨日より上昇しました。投資家の不安心理はまだ高い状態です。日経平均は、戻ったとしても25日線近辺までとなりそうです。
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