[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、金融引き締めが景気を冷やすとの警戒感は強いものの、好決算発表銘柄を中心に買戻しが入り、株価指数は上昇しました。
週間変動率 NYダウ:+1.05%, NASAQ:+2.38%, S&P500:+1.55%.
一方、中長期的には、エネルギー・コスト、生産・供給コスト上昇によるインフレ加速懸念と、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、サプライチェーン混乱などによる世界経済の減速懸念もあります。このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東、ウクライナの地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2023年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.06ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが20.1に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.5との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.06ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが15.7程度になるか、又は、日経平均が32000円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は4560円ほど割安です。
ファンダメンタルで見れば、日本市場は4560円分魅力に欠ける状態であるとも言えます。
日米の長期金利差が拡大し、日本市場の相対的な弱さが増しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大と一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+1.8%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。今週は、NYDowが25日線の上戻れるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.4%となりました。3ヶ月前に比べて0.1ポイント悪化しています。また、利益伸び率は+38.8%で3ヶ月前に比べて0.8ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利が上昇し、日米間の金利差は1.61から1.72と拡大したものの、ドル円は114円から115円の範囲でもみあいました。ドル・インデックスは週間で-1.79%%下落しました。
④ OECDの日米の2023年の名目GDP伸び率予測が公開されて、日本が+1.8%で、米国は+4.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が3.1ポイント劣ります。
⑤ 1月第4週は売り越しで、2月第1週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に0.3ポイント(日経平均に勘算すると80円程度)割高です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に4.3ポイント(日経平均に勘算する1180円程度)割安です。
週間では米国市場に対する日本市場の弱さが改善しました。米国市場と日本市場のボラティリティーは同水準で、ボラティリティー・インデックスは27から23まで低下しました。投資家の不安心理は、まだ高いものの、改善しています。
日経平均は、25日線の下にありますが、9日線の上にあります。短期トレンドには”黄信号”が点灯しています。
一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は-9.8%となり先週と比較してマイナス幅は縮小しました。200日移動平均線との乖離率は-4.2%で、マイナス幅は縮小しました。3つの要素がマイナスですので、中期トレンドには、"赤信号"が点灯しています。
米国市場ではNYDowは、25日線の下にありますが、9日線と200日線の上にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。NASDAQは、200日線と25日線の下にありますが、9日線の上にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。
短期的には”黄信号”で、中期的にも”黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、米国の利上げ、長期金利の上昇、原油相場の上昇、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東やウクライナ、東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き注意が必要です。2020年3月にも、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。
一方、好材料としては米国政府による大規模の経済対策があげられます。また、日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と無制限の国債と12兆円までのETF購入などの金融緩和措置に加え、日本政府による経済対策があります。さらに、EUによる92兆円のコロナ復興基金設立とECBによるマイナス金利の深堀と量的緩和の継続などが揚げられます。ただ、ECBとFRBは債券購入の減額を決め、利上げ時期を探っています。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期ももみあいです。日本市場は中期下降トレンドで、短期はもみあいです。
為替市場を分析すると、2020年は、ゆるやかに円高方向に動いていましたが、2021年に入り、円安方向に反転しています。今週は114円台から115台が想定されます。
今週は、米国の消費者物価指数で、インフレ率が40年ぶりの高水準となることが予想されます。また、英国では第4四半期のGDP成長率が発表され、インド、ロシア、インドネシア、タイ、メキシコの中央銀行が金融政策の決定を行う予定です。一方、FRBがよりタカ派的なスタンスになるとの見方が強まる中、市場のボラティリティーの高さは継続すると予想されます。
今週は、ボラティリティー・インデックスが20以下に低下しなければ、25日線を大きく上回る上昇は期待できないと思われます。
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