[市況]
2月16日、NYDowとNASDAQは小幅下落しました。2月17日の日経平均先物は、前日比40円高で寄り付くと、午前中は50円高から140円安の間で上下し、午後は50円高から370円安と下落に転じて、結局270円安で取引を終えました。日経平均の終値は227円安の27232円で、出来高は11.81億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は5日平均を2日連続で下回りました。個別銘柄への売り圧力は思いのほか強まりませんでした。
2月16日の米国市場では、ウクライナ情勢への警戒感から売りが先行しましたが、午後に1月開催のFOMCの議事要旨が公表されると、既に織り込み済みの内容であるとの受け止めから、金融引き締めへの過度な警戒感が和らぎ、買い直しの動きが広がって、指数は下げ渋りました。NYDowとNASDAQは反落しました。
2月17日の日本市場では、前日の株高の反動で、利益確定の売りや戻り待ちの売りが優勢となりました。午後、「ウクライナ軍が新ロシア派の支配地域を砲撃した」とロシアの通信社が報じると、急速にリスク回避の動きが広がりましたが、日経平均が下げ幅を300円超に拡げたあとは押し目買いが入って下げ渋りました。日経平均は反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にあり、9日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。
総合乖離率は-9.4%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-4.6%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-0.1ポイントとマイナスに転換しました。両指数はほぼ均衡しています。一方、NYDowとの比較では、日経平均が4.2ポイント(日経平均換算で1140円)割安となっています。
日経VIは26.11、VIXは24.29と、日本市場のボラティリティーのほうが高い状態となりました。NYDowに対する日経平均の弱さは、前日よりやや拡大しました。投資家の不安心理は依然として高い状態です。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.3、米国-3.0と日本が4.3ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.17ポイント(日経平均換算で5040円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP速報値は前期比年率6.9%増で、市場予想を上回りました。また、10~12月期の米企業の決算は、今のところ好調な企業が目立ちます。
経済指標を見てみます。
1月の鉱工業生産指数、1月の小売売上高、1月の消費者物価指数、1月のISM非製造業景況指数、1月のISM製造業景況指数、1月のシカゴ購買部協会景気指数、1月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、2月のニューヨーク連銀製造業景況指数、2月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値、12月の製造業受注、12月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標は8勝4負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面で弱気気材料です。
米国の1月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比46.7万人増で、市場予想の12.5万人増を大きく上回りました。一方、失業率は4.0%で、先月の3.9%から悪化しました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面で弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
12月の新築住宅販売件数、12月の住宅着工件数は予想を上回りました。また、12月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想と一致しました。一方、2月の住宅市場指数、12月の中古住宅販売件数は市場予想を下回りました。また、11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+18.3%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末まで1兆8500億ユーロ」に拡大しました。ただ、22年4月以降の資産購入額は現在の半分以下に減少する見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、2月11日 0.5064 → 2月14日 0.4585 → 2月15日 0.4687と上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.4、PBRが1.21となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前と同水準です。一方、今期予想利益の伸率は+26.9%で、こちらは3か月前より7.2ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.7%となり、日経平均の割安幅は110円から200円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-480円から-110円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.83ポイントから1.77ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に下降トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化していますが、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年12月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している追加の債券購入を2022年3月で終了することを決定しました。
2月17日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、1月の住宅着工件数、2月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数のほか、ウォルマートなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、ほぼ想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを290円ほど下回り、下値は想定ラインを30円ほど下回りました。目先は、25日線+200円(現在27610円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在26900円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を2日連続で下回り、売り圧力はさほど高まりませんでしたが、日本市場のボラティリティーは上昇し、投資家の不安心理は高まりました。日経平均は25日線で跳ね返された形となり、引き続き下落する可能性が高そうです。
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