[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、FRBによる金融政策の正常化が早期に進むとの警戒感が続き、株価指数は下落しました。
週間変動率 NYダウ:-0.88%, NASAQ:-0.28%, S&P500:-0.30%
一方、中長期的には、エネルギー・コスト、生産・供給コスト上昇によるインフレ加速懸念と、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、サプライチェーン混乱などによる世界経済の減速懸念もあります。このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東、ウクライナの地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2023年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.01ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが21.1に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.9との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.01ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが16.2程度になるか、又は、日経平均が32690円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は4570円ほど割安です。
ファンダメンタルで見れば、日本市場は4570円分魅力に欠ける状態であるとも言えます。
日米金利差拡大にも関わらず、日本市場への売り圧力が強まりました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大と一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+1.8%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。今週は、NYDowが200日線の上を維持できるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.1%となりました。3ヶ月前に比べて0.1ポイント悪化しています。また、利益伸び率は+35.4%で3ヶ月前に比べて0.9ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利が上昇し、日米間の金利差は1.59から1.65と拡大したものの、ドル円は115円から113円の範囲で円高方向に動きました。ドル・インデックスは週間で-0.60%と下落しました。
④ OECDの日米の2023年の名目GDP伸び率予測が公開されて、日本が+1.8%で、米国は+4.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が3.1ポイント劣ります。
⑤ 1月第1週は買い越しで、1月第2週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に3.2ポイント(日経平均に勘算すると900円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に6.0ポイント(日経平均に勘算する1690円程度)割安です。
週間では米国市場に対する日本市場の弱さが増しました。日本市場では、売り圧力が強まり、米国市場に比べボラティリティーが高い状態です。さらに、日米市場ともボラティリティー・インデックスは20を超え、投資家の不安心理が高まっていることを示しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は-6.7%となり先週と比較してマイナス幅は拡大しました。200日移動平均線との乖離率は-2.3%で、マイナス幅は拡大しました。3つの要素がマイナスですので、中期トレンドには、"赤信号"が点灯しています。
日経平均は、25日線と9日線の下にあります。短期トレンドには、"赤信号"が点灯しています。
米国市場ではNYDowは、200日線の上にありますが、25日線と9日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQは、200日線の上にありますが、25日線と9日線の下にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。
短期的には”赤信号”で、中期的には”黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、米国の利上げ、長期金利の上昇、原油相場の上昇、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東やウクライナ、東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き注意が必要です。2020年3月にも、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。
一方、好材料としては米国政府による大規模の経済対策があげられます。また、日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と無制限の国債と12兆円までのETF購入などの金融緩和措置に加え、日本政府による経済対策があります。さらに、EUによる92兆円のコロナ復興基金設立とECBによるマイナス金利の深堀と量的緩和の継続などが揚げられます。ただ、ECBとFRBは債券購入の減額を決め、利上げ時期を探っています。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期は下降トレンドです。日本市場は中期下降トレンドで、短期も下降トレンドです。
為替市場を分析すると、2020年は、ゆるやかに円高方向に動いていましたが、2021年に入り、円安方向に反転しています。今週は114円台から116台が想定されます。
今週も、第4四半期の決算シーズンは続き、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、P&G、ネットフリックスなどの企業が決算を発表します。その他、日本、中国の中央銀行が金融政策を決定し、ECBは議事録を公表する予定です。また、米国の住宅着工件数と建築許可件数、カナダ、英国、日本のインフレデータ、中国の第4四半期GDP、ユーロ圏の消費者信頼感指数、オーストラリアの雇用統計などの重要なデータも控えています。
今週は、三角持ち合いの上限ラインに向けた動きとなりそうです。
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