[市況]
1月12日、NYDowとNASDAQは上昇しました。1月13日の日経平均先物は、前日比130円で安寄り付くと、午前中は100円安から280円安と下落幅を拡げ、午後は300円安から190円安の間でもみあって、結局190円安で取引を終えました。日経平均の終値は276円安の28489円で、出来高は11.64億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は5日平均を2日連続で下回り、個別銘柄への売り圧力は弱まっています。
1月12日の米国市場では、12月の消費者物価指数の上昇率が市場予想並みにとどまったことから、インフレ加速への警戒感がやや和らぎました。インフレ加速を見込んで上昇していた長期金利が低下し、相対的な割高感が薄れたハイテクなど高PER銘柄を中心に買いが優勢となりました。一方、ゴールドマン・サックスなど金融株は売られ、指数の重石となりました。NYDowは続伸し、NASDAQも3日続伸しました。
1月13日の日本市場では、前日の株高の反動で、利益確定の売りが優勢となりました。外国為替市場で円相場が円高ドル安方向に推移したことも逆風となりました。米長期金利上昇への警戒感や、国内景気の先行きに対する懸念も、引き続き投資家心理の重石となったようです。一方で、足元の資源高や米長期金利上昇を受け、総合商社株や素材株の一角は買われました。日経平均は反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の下にあり、25日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。
総合乖離率は-3.0%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-1.1%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下に戻りました。3つの要素すべてがマイナスとなり、中期トレンドも黄信号から赤信号に変わりました。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。
NYDowは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より1.2ポイント拡大して-4.1となり、中長期的には日経平均が1170円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が5.0ポイント(日経平均換算で1420円)割安となっています。
日経VIは19.69、VIXは17.62と、日本市場のほうがボラティリティーが高い状態で、日本市場はより弱い状態となりました。日経VIは20を下回っており、投資家の不安心理は和らぎつつあるようです。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.0、米国-3.0と日本が4.0ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.95ポイント(日経平均換算で4400円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP確報値は前期比年率2.3%増で、改定値の2.1%増から上方修正されました。また、7~9月期の米企業の決算は、概ね好調でした。
経済指標を見てみます。
11月の製造業受注、12月のミシガン大学消費者信頼感指数、11月の耐久財受注、12月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、12月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。また、12月の消費者物価指数は市場予想と一致しました。一方、12月のISM非製造業景況指数、12月のISM製造業景況指数、11月の鉱工業生産指数、11月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、11月の小売売上高、11月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面から見て中立材料です。
米国の12月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比19.9万人増で、市場予想の40万人増を下回りました。一方、失業率は3.9%で、先月の4.2%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ時期が遅くなるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
11月の住宅着工件数、12月の住宅市場指数は予想を上回りました。一方、11月の中古住宅販売仮契約指数、11月の新築住宅販売件数、11月の中古住宅販売件数は市場予想を下回りました。また、10月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+18.4%でしたが、伸び率は鈍化し、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ時期が遅くなるという面では強気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末まで1兆8500億ユーロ」に拡大しました。ただ、22年4月以降の資産購入額は現在の半分以下に減少する見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では1月7日 0.2361 → 1月10日 0.2382 → 1月11日 0.2444と上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが14.0、PBRが1.28となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。一方、今期予想利益の伸率は+35.1%で、こちらは3か月前より0.9ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.0%となり、日経平均の割安幅は300円から280円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-860円から-280円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.61ポイントから1.62ポイントに拡大しましたが、ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年12月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している追加の債券購入を2022年3月で終了することを決定しました。
1月13日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、12月の生産者物価指数のほか、デルタ航空などの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、オミクロン株の感染状況や、原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、ほぼ想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを420円ほど下回り、下値は想定ラインを30円ほど下回りました。目先は25日線+100円(現在28770円近辺)が上値の目安にボリンジャーバンド-1σ-200円(現在28160円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経平均は、三角持ち合いの中間にあります。ボラティリティーや空売り比率から見ると、売り圧力は高まっておらず、しばらくはもみあいそうな気配です。
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